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山小屋


私を保護してくれた女剣士は、クレアベルという名前らしい。

クレアベルは、どうやら旅の途中のようだった。

私を連れて、馬車に乗り……

森を越え、

山を越え、

草原を越え

峠を越え……

宿での宿泊、あるいは野宿を繰り返し……

やがて彼女の実家とおぼしき山小屋やまごやへと到着した。

一階建ての小さな家である。

「―――――。――――――、―――――(ここが私の家だ。狭いかもしれないが、心地ごこちは悪くないぞ)」

山小屋やまごやの右側には井戸と畑がある。

山小屋やまごやの左側には果実のなった樹木。

そして山小屋やまごやの裏には半径50メートルぐらいの巨大なグラウンドがあった。

山小屋やまごやの周囲は森と山に囲まれている。





クレアベルが玄関扉げんかんとびらに手をかける。

玄関を開けたら、いきなりリビングだ。

リビングの右の壁には個室に続く扉が2つ。

リビングの左の壁にはトイレに続く扉が1つ。

リビングの正面の壁には窓が二つと、扉があり、その扉を開ければ、山小屋の裏に出られるようになっている。

リビングの内装としては、四人がけの木製のテーブルがある。

テーブルには四つの椅子が配置されていた。

暖炉だんろはないが、部屋のすみにはまきなどの資材が置かれている。

あとキッチンもリビングの中にあり、フライパンや包丁などが揃っていた。



リビングには、いろいろな匂いがした。

木の匂い。石の匂い。

使い古された家具や、キッチンの匂い。

あたたかく、陽気な春の匂い。

どれもこれも、優しい匂いであった。




さて、個室について。

先述の通り、個室は2つあるが、どちらも寝室のようだ。

しかし使われているのは一つだけである。

大した内装ではなく、ベッドとサイドテーブルがあるだけだ。

「―――、―――――――(そうだ。お前の名前を決めてやらないとな)」

寝室のベッドに私を寝かせたクレアベルは、そう言った。

「――――、セレナ(お前は、セレナだ)」

どうしてだろうか。

言葉はわからないのに……

それが、私の新しい名前であると、理解できた。

「―――――、セレナ(よろしくな、セレナ)」

私の名前は、セレナ。

苗字はない。

ただのセレナである。

うん、悪くないかも。

セレナというのがどういう意味なのかは知らない。意味などないかもしれない。

しかし、私はこの名前が、無性に気に入った。






春が過ぎて……

夏が来た。

山小屋で、クレアベルと二人暮らしの生活。

クレアベルと私は、本当の親子ではないが……

今のところクレアベルは、私のことをとても大事に育ててくれている。




で。

山小屋で暮らしはじめてから、私がしていたことといえば。

チートスキルとおぼしき【チョコレート魔法】の操作ぐらいだった。

――――私は暇を見つけては、【チョコレート魔法】の練習をした。

練習の中で、わかったことがいくつかある。

まず、魔法は進化するということだ。

魔法というのは使えば使うほど、成長する。

まるでレベルアップするかのように。

進化すれば、より巧みな操作が可能になる。

たとえば私の【チョコレート魔法】で出したチョコレートを、

変形して、花の形にするだとか……

ツルのような形にしたうえで、遠くにある食べ物を掴んで取ってくるとか……

チョコレートで作ったボールで遊ぶとか……

いろんな使い方が可能である。






他に魔法についてわかったことといえば。

己の魔法は、使うほどに理解が深まるということ。

たとえば、私は【チョコレート魔法】で出したチョコレートが、魔力で出来たかたまりである……ということを知っている。

だから人が食べても大丈夫だということも、わかっている。

このことは誰に教わったわけではない。

なんとなくそうだ、とわかるのだ。

おかげで、チョコレート魔法への理解は、スムーズに進んだ。






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