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初夏。

私たちは、背中にかごを背負い、3人で森に入った。

狩猟しゅりょう漁労ぎょろう採集さいしゅうなどを学ぶためだ。

山小屋周辺に広がる、森。

広大で……

穏やかな森だ。

草や土などの匂いが立ちこめる。

辺りは自然の香りに包まれている。

みずみずしい若緑わかみどりの草木が、陽光に照らされて、エメラルド色の光を拡散させていた。

森林浴でもしたくなるような森だ。

とても澄んだ景色であり、心が洗われるような感覚がする。

気温は涼しげである。

小鳥の鳴く声や、獣が茂みを駆け抜ける姿が見受けられる。

クレアベルは先頭を歩く。

私たちは籠だけを背負っているが、クレアベルは籠とともに竹竿たけざおも背負っている。

漁労をするので、おそらく釣りのためだろう。

「山小屋近くの森には魔物はいない。だが森の奥に踏み入れば、魔物も出てくるようになる。……このあたりはまだ、魔物はいないから平和だな」

3人で、のんびり散歩気分である。






森の中を5分ほど歩く。

途中でクレアベルは、イモを採取した。

パタパタイモと呼ばれる、さつまいもみたいなサイズのイモだ。

よく食卓に上がってくる。

私たちの炭水化物の主役をになうイモである。






さらに進む。

森のゆくてに小川があった。

幅は4メートルほど。

しとしと、と優しい音を立てて流れる清流。

ほとんど深さがない。

透明度が高くて、川底の石や砂利の姿が透けてみえている。

空は葉に覆われて、やや暗がりになっている場所だが……

枝葉の隙間から降り注ぐ陽射しが、小川の水面をきらきらと照らす。

その光景は、本当に美しくて、感嘆してしまうほどだった。

「この小川は清らかなので、飲める。……が、川の水を生で飲むのはオススメしない。飲むときは必ず、火で熱してからだ」

と、クレアベルが注意をした。

さらに小川をまたいで奥に進む。





しばらく森をゆくと今度は、幅15メートルほどの川に辿り着いた。

天が開けており、陽光が燦々さんさんと降り注いでいる。

この川も、とても透明感が高くて、美しい。

川の途中には、水に半分浸かった岩石が点在していた。

手前は浅いが、川の中央あたりはそこそこ深そうな雰囲気だ。

「ここには魚がいる。釣りができるぞ。うちの食卓に並ぶのも、ここで採れた魚だ」

クレアベルは背負っていた籠と竹竿をおろした。

私たちもクレアベルにならって、籠を地面におろす。

クレアベルは説明した。

「この竹竿で釣るんだ。竹竿の作り方は今度教えるとして……実際に何匹か、魚を釣ってみようか」

釣りか……

私は、ふと思ったことがあり、口にしてみた。

「あの、お母さん。試したいことがあるのですが」

「ん? なんだ?」

クレアベルが首をかしげる。

口で説明するより、やってみたほうが早いと思ったので、私は実演することにした。

川の正面に立って、両手を前に伸ばす。

十本の指先からシュバッとチョコレートの糸が飛び出した。

その糸をぐんぐん伸ばし、絡め、あみを作る。

そう、魚をる網だ。

サイズは川の向こう岸に届くぐらいの大きなサイズ。

私はその網を、川の中に浸けて、深くもぐらせ……。

次の瞬間、ガバッと囲い込むように網を丸めてから、水面へと引き上げた。

丸く閉じられた網。

その網の中に、大量の魚が入っていた。

(うん、大漁だ……!)

これぞ【チョコレートりょう】である。

狙い通りの結果になって、私は満足する。

「どうでしょう、お母さん? これなら一発でたくさん魚を獲れますが」

と言いながら、私はクレアベルを振り返る。

しかし、

「……」

クレアベルは、あんぐりと口を開けて固まっていた。

「お姉ちゃん、すごーい!」

と、アイリスが無邪気にはしゃいだ。

ややあってからクレアベルは我に返り、言ってきた。

「セレナ。お前は……なんというか、メチャクチャだな」

「そ、そうですか?」

「ああ……いろいろと有り得ないだろ、お前の魔法」

チョコレートの網で、大漁にすくいあげられた魚たちを見つめながら、クレアベルはそう感想をこぼした。







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