真訳・アレンシアの魔女 下巻 石碑巡りたち

かずさ ともひろ

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プロローグ

おわりに

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 私の名はセレニウス・ノートリアス。
 この本の著者である。

 紅の魔女と呼ばれたマールは、これまで長く記してきた通り、偉大な人物だ。
 こうしてマールの足跡を残せたことを、私は誇りに思う。

 諸君は、マールの偉大さを知らねばならない。

 たった一人でいくつもの呪いを抱え、それでもくじけず、雨の中を歩き、雪をかきわけ、山道を登り、川を渡った。

 私は幸運にも、そんなマールと唯一、旅をともにできたものだ。
 故にマールの偉業を伝えるのは、私の使命である。

 マールはいずれ、アレンシアの神となるだろう。
 諸君らが今、当たり前のように使っている“魔法”という術は全て、たった一人の、人間の女性から広まったのだ。

 しかもマールは陽種族ロウレイスである人間、フォレストエルフ、ドワーフ、ハーフエルフ。闇種族エヴイレイスであるダークエルフ、ログナカン、トロル、フリーレンに至るまで、わけ隔てなく伝えていった。

 これほど尊いおこないを一体、誰が真似まねできるのか。
 呪われていたとはいえ、マールをさげすむことができるのか。

 そんなマールを神と呼ばずして、誰をアレンシアの神と呼ぶのか。

 これを読み終わった諸君も、私と同じおもいを抱いているだろう。
 だから私はこうして、本人からいた話や、実際に私の目の前で起きた旅の体験を一冊の本とした。

 マールは魔女などではない。
 マールは災厄の娘などではない。

 今、このアレンシアに住む我々は、マールの心安らかなる眠りを祈るべきなのだ。

 私は……もうすぐマールのもとへと旅立つ。
 その時に「アレンシアはあなたの力で豊かになりましたよ」と伝えたい。

 私が諸君とマールの架け橋になろう。
 故に、ともに祈って欲しい。
 そしてその御力おちからを授かって欲しい。

 私が望みは、ただそれだけである。

 おわりに。
 この書を作るにあたり、全面的に協力してくれた弟、アレックスに感謝を。

 そしてアレンシアと、あなたに。
 マールのご加護がありますように。

           双月暦五三六年 セレニウス・ノートリアス
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