3 / 94
3.
しおりを挟む
一方の女子軍勢はというと、「あの銀髪の子!マジでカッコよくなかった!?」だとか「声かけられたらどうしよぅー!」なんて歓声を上げていた。
憎たらしいぐらいキャッキャウフフしているではないか!
俺は椅子にまたがり、背後の美少年を睨みつけた。
「まぁまぁ…」
鈴木壱琉は申し訳なさそうにしつつも笑顔を絶やさない。
こういう所を見ても、根がいいやつだということが分かる。
試しにカマをかけてみることにした。
「俺…夜崎辰巳(やざきたつみ)は他の人からどう見られているのかな…?」
「…え?」
銀髪の美少年は酷く困惑したようであった。無理もないが。
「その…だから…俺ってどう思われてんのかなぁって…」
言い終えて、何だか恥ずかしくなってきた。
「親しみやすいんじゃないかな…他の人はどうか分からないけど…」
視線を逸らしつつ、無茶な問いにも真摯に向き合う壱琉少年。
「正直すぎる…」
結論、俺の容姿は可もなく不可もない。異論は認めない。そういうことにしておく。
今度は女子の一人が声を掛けてきた。
「もしかして…君達、初めましてどうし?あの…私もこのクラスだから…友達よろしくできないかな?」
案の定、壱琉は「もちろん!宜しくね!」と気前よく満面の笑みで挨拶を交わしていたが、誰もがそういった対応をするとは限らない。
つまり、俺のことだ。
「あー…すみません笑。"左の方"も三年間よろしくお願いします」
声のトーン。並びに、ついで扱いを指し示すどこか感情がない表情。別にこの分析に意味はない。肝心な問題は"そのまま友達"という事だ。
「あー、申し訳ないけどよろしくできないかも」
"左の方"が発した陰湿でやる気のない声が意外だったのか、女子は困惑した後、
「えっ…。あ、はい。そうですか…それでは」
友達になれなくとも不利益が発生しないのか、シラっとして直ぐに女子グループへと戻っていった。
「酷いなあ夜崎くん。あんなに可愛い子が勇気を出して友達になりませんか?ってお願いしてきたのに、あっさり断るなんて」
断るのが酷いものか。
余程酷いのは相手側だ。
相手をよく見てみろ。あの打算的な目を。今頃はこの小さすぎる出来事を理由に陰口を叩いていることだろう。
俺は会ってからまだ数時間と経っていない彼に本質を伝えた。
「いいか、あれは友達という概念をはき違えた、フォロワー稼ぎの連中と同じ分類の人間なんだよ」
「ええと…つまりどういう事?」
俺の性格を悪く視たのか、少し距離感が遠く感じる壱琉くんであったが、ここは正しい事を伝えてやらないとこの子の為にもならない。
「…つまり、友達っていうのはいつの間にかなっているものなんだ。なろうといってなるものじゃない。現に俺とお前はいつの間にか親しんでいるだろう?」
壱琉は少し困惑していたが直ぐに理解したようだ。
「夜崎君の言い分にも確かに一理あるね。でも友達になるくらい気軽でいいと思うけど…」
「いや、ダメだ。俺は絶対に受け入れない」
俺は固く意思を貫いていた。
これまでも。そして、これからも。
美少年はというと「やれやれ…」といった感じで半分飽きれ、半分理解といった具合である。
時計の針を見やると、間もなく入場開始時刻である九時半を指し示していた。
「入学式まで時間がないな。すまん。トイレ行ってくるわ」
「あ、ちょっと待って」
こんな美少年でもツレションというワードがあるのかしらと馬鹿な事を考えていると、
「明日も学校に来るといいよ。きっといいことがあるから」
奇妙なことを言い出した壱琉。
「いい事?明日は学校休みのはずじゃ…」
「いいから。絶対だよ」
先ほどの柔らかな笑みとはまるで違う、生真面目な声音。
休みの学校などに行って何をするというのだろう?
部活の見学か?言っておくが俺は帰宅部志望だぞ。
そんなことを考えながら小走りでトイレに向かう。
それ以降この日、壱琉と話すことはなかった。
憎たらしいぐらいキャッキャウフフしているではないか!
俺は椅子にまたがり、背後の美少年を睨みつけた。
「まぁまぁ…」
鈴木壱琉は申し訳なさそうにしつつも笑顔を絶やさない。
こういう所を見ても、根がいいやつだということが分かる。
試しにカマをかけてみることにした。
「俺…夜崎辰巳(やざきたつみ)は他の人からどう見られているのかな…?」
「…え?」
銀髪の美少年は酷く困惑したようであった。無理もないが。
「その…だから…俺ってどう思われてんのかなぁって…」
言い終えて、何だか恥ずかしくなってきた。
「親しみやすいんじゃないかな…他の人はどうか分からないけど…」
視線を逸らしつつ、無茶な問いにも真摯に向き合う壱琉少年。
「正直すぎる…」
結論、俺の容姿は可もなく不可もない。異論は認めない。そういうことにしておく。
今度は女子の一人が声を掛けてきた。
「もしかして…君達、初めましてどうし?あの…私もこのクラスだから…友達よろしくできないかな?」
案の定、壱琉は「もちろん!宜しくね!」と気前よく満面の笑みで挨拶を交わしていたが、誰もがそういった対応をするとは限らない。
つまり、俺のことだ。
「あー…すみません笑。"左の方"も三年間よろしくお願いします」
声のトーン。並びに、ついで扱いを指し示すどこか感情がない表情。別にこの分析に意味はない。肝心な問題は"そのまま友達"という事だ。
「あー、申し訳ないけどよろしくできないかも」
"左の方"が発した陰湿でやる気のない声が意外だったのか、女子は困惑した後、
「えっ…。あ、はい。そうですか…それでは」
友達になれなくとも不利益が発生しないのか、シラっとして直ぐに女子グループへと戻っていった。
「酷いなあ夜崎くん。あんなに可愛い子が勇気を出して友達になりませんか?ってお願いしてきたのに、あっさり断るなんて」
断るのが酷いものか。
余程酷いのは相手側だ。
相手をよく見てみろ。あの打算的な目を。今頃はこの小さすぎる出来事を理由に陰口を叩いていることだろう。
俺は会ってからまだ数時間と経っていない彼に本質を伝えた。
「いいか、あれは友達という概念をはき違えた、フォロワー稼ぎの連中と同じ分類の人間なんだよ」
「ええと…つまりどういう事?」
俺の性格を悪く視たのか、少し距離感が遠く感じる壱琉くんであったが、ここは正しい事を伝えてやらないとこの子の為にもならない。
「…つまり、友達っていうのはいつの間にかなっているものなんだ。なろうといってなるものじゃない。現に俺とお前はいつの間にか親しんでいるだろう?」
壱琉は少し困惑していたが直ぐに理解したようだ。
「夜崎君の言い分にも確かに一理あるね。でも友達になるくらい気軽でいいと思うけど…」
「いや、ダメだ。俺は絶対に受け入れない」
俺は固く意思を貫いていた。
これまでも。そして、これからも。
美少年はというと「やれやれ…」といった感じで半分飽きれ、半分理解といった具合である。
時計の針を見やると、間もなく入場開始時刻である九時半を指し示していた。
「入学式まで時間がないな。すまん。トイレ行ってくるわ」
「あ、ちょっと待って」
こんな美少年でもツレションというワードがあるのかしらと馬鹿な事を考えていると、
「明日も学校に来るといいよ。きっといいことがあるから」
奇妙なことを言い出した壱琉。
「いい事?明日は学校休みのはずじゃ…」
「いいから。絶対だよ」
先ほどの柔らかな笑みとはまるで違う、生真面目な声音。
休みの学校などに行って何をするというのだろう?
部活の見学か?言っておくが俺は帰宅部志望だぞ。
そんなことを考えながら小走りでトイレに向かう。
それ以降この日、壱琉と話すことはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
蒼き樹海の案内人
蒼月よる
ファンタジー
辺境の森で育った少年ユーリには、不思議な目がある。魔素の流れが光の粒として見えるのだ。
蒼の樹海——人を喰らう巨大な森に足を踏み入れた彼は、遺跡屋の青年カイと出会い、冒険者として歩み始める。樹海の奥に眠る遺跡、港街の裏に潜む陰謀、灰に覆われた滅びの国、そして首都に隠された世界の秘密。
仲間と共に世界を巡るうちに、ユーリは気づいていく。この世界の「魔法」も「神」も、すべてが何かの残骸なのではないか——と。
冒険・バトル・素材経済・食文化を軸に、ファンタジーの裏に潜むSF的真実へと辿り着く、全4巻の冒険ファンタジー。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
ネットワーカーな私は異世界でも不労所得で生きたい 悪役令嬢として婚約破棄を狙ったら、王家全員に謙虚な聖女と勘違いされて外堀を埋められました
来栖とむ
ファンタジー
「私の目標は、十七歳での完全リタイア。――それ以外はすべて『ノイズ』ですわ」
ブラックIT企業のネットワークエンジニア兼、ガチ投資家だった前世を持つ公爵令嬢リゼット。 彼女が転生したのは、十七歳の誕生日に「断罪」が待ち受ける乙女ゲームの世界だった。
「婚約破棄? 結構です。むしろ退職金(慰謝料)をいただけます?」
死を回避し、優雅な不労所得生活(FIRE)を手に入れるため、リゼットは前世の知識をフル稼働させる。
魔法を「論理回路」としてハックし、物理法則をデバッグ。
投資理論で王国の経済を掌握し、政治的リスクを徹底的にヘッジ。
……はずだったのに。 面倒を避けるために効率化した魔法は「神業」と称えられ、 資産を守るために回避した戦争は「救国の奇跡」と呼ばれ、 気づけば「沈黙の賢者」として全国民から崇拝されるハメに!?
さらには、攻略対象の王子からは「重すぎる信仰」を向けられ、 ライバルのはずのヒロインは「狂信的な弟子」へとジョブチェンジ。
世界という名のバックエンドをデバッグした結果、リゼットは「世界の管理者(創造主代行)」として、永遠のメンテナンス業務に強制就職(王妃確定)させられそうになっていて――!?
「勘弁して。私の有給休暇(隠居生活)はどこにあるのよ!!」
投資家令嬢リゼットによる、勘違いと爆速の隠居(できない)生活、ここに開幕!
俺様御曹司に飼われました
馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!?
「俺に飼われてみる?」
自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。
しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……
「美少女157人も召喚できるだと!?」社畜の俺、尖ったトラウマを全部『まあるく』収めて大賢者になる。── やっぱりせかいはまあるいほうがいい
あとりえむ
ファンタジー
『ヒロイン全員 挿絵付き』の異世界セラピーファンタジー。あなたの推しのヒロインは誰ですか?
「やはり、世界は丸いほうがいい……」
過労死した元データアナリスト参 一肆(まいる かずし)が女神様から授かったのは、アホみたいな数式から導き出された究極のハーレム召喚だった。
157人のヒロインたちに埋もれて、尖った世界を『まあるく』浄化しくしていく……
Dカップの村娘からIカップの竜の姫君まで、あらゆる属性のヒロイン達と一緒に、襲い来る「社畜のトラウマ」に立ち向かう。
全人類の半分の夢が詰め込まれた、極上のスキンシップの冒険譚が今開幕する!
余談:
なお、作者は本作のキャラで恋愛シミュレーション的なwebアプリを作成中だそうです……現在、ようやく一人目が完成したけど大変すぎて早くも心が折れました……と思ったら、何故かもう一本追加で作ったそうです。
ただいま個人サイトにて見切り発車で公開中!
詳細は近況ボードでご確認ください。
https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/306787
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる