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8 神前決闘と配下
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「わかりました。でも始める前になぜ帰る場所がないのか教えてくれますか?」
なんとなく引っかかっていた疑問を尋ねるとグラセフさんは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに得心した風になった。
「なぜそれを····いやあの子が教えたのか。」
「言いたくなければ別に構わないけど」
私がそう言うとグラセフさんは自嘲気味に軽く笑いながら首を振った。
「いや、大して隠すようなのもでもない。ただ我々が他の氏族との争いに破れて追い出されたというだけだ」
「ああ、そういうのなんだ。族長も大変だね?」
「ははっ。たしかにそうだがそれが族長だからな。最後の最後まで率いていかねばならない」
「そう。でもわたしは手加減しませんよ?」
「それこそ、望むところだ」
「それでは『神に誓って』」
「『神に誓って』」
簡単な言葉のように感じるがこの誓いが破られることはほぼあり得ないらしい。破ると神罰が下り、ひどいときには死んでしまうと本には書かれていた。
わたしが〈天祇〉を抜くと、グラセフさんは腰に下げていた長剣を構えた。
その立ち姿にはほとんどブレがなく、かなり強い剣気が放たれている。
茂みからたくさんの人たちが出てきた。
彼らがいわゆる、見届け人ということになる。
「〈身体強化〉」
ーーやはり〈身体強化〉は使えるのか。
万が一にも負けるわけには行かない。
だから最初から本気を出そう。
「〈解放〉」
瞬間、わたしの身体が雷の魔力を纏い、髪は純白に変わり、凄まじい力の奔流が、わたしの身体と周囲に駆けめぐった。
「「「「ーーーッッッ!?!?」」」」
そのとんでもない圧力に幾人かはその場に倒れ伏した。
グラセフさんはさすがにに族長というだけあって、顔色を悪くし、気圧される程度で済んでいたけれど。
「·····なるほど。かの魔竜王を殺したというのは伊達ではないというわけか」
まあ、この力がなければ死んでただろうし、ヤツと殺り合うにはこれぐらいないと。
「じゃあ、〈身体強化〉〈雷速〉·····いつでもいいよ」
「では、お言葉に甘えてーーーハアアアアアッ!!」
先ほどまで気圧されていたとは思えないような鋭い剣筋と堂々たる強い踏み込み。
それに対してわたしはーーー動かずそのまま受けた。
「ーーなっ!?」
グラセフさんが驚愕の声をあげるが、それは、わたしがあっさりとやられたからではない。
その刃がわたしに触れずに止められたからだ。
首筋の皮膚に触れそうなギリギリで刃を止めているのは白い光。
「まさか····魔力か!!」
「そう。〈極魔〉というただの技」
そうこれは魔法じゃない。魔力操作により魔力を一点に集中させただけ。
これは、魔竜王と戦っていた時に高密度の魔力が草や木を揺らしたりしていたのを見て、試行錯誤を繰り返し作り上げたもの。
まあ、ただの技と言っても、多大な魔力を必要とするし、普通なら不可能なほどの精密な魔力操作能力を要求される、使用者を選ぶタイプのだけれど。
「く、おおおおお!!」
グラセフさんはすぐに剣を引くと、一撃必殺ではなく連撃に切り替え、凄まじい勢いで振るい始めた。
一目見てこの技には多大な魔力が必要ということを見抜き、魔力切れを狙ったのだろうけど、わたしの魔力量からすれば〈極魔〉に使う魔力は全体から見て微々たるもの。
考え方は悪くなかったけれどわたしがーーー相手が悪い。
「くっ!」
グラセフさんがさがる。特に追撃せずに見ると はあ、はあ、と息を切らしていた。
アレだけのスピードで剣を振るい続けたのだ。体力もすぐに尽きるだろう。
「こないの?····じゃあ、わたしがいくね?」
踏み込むと同時に間合いを制圧し刀を横に振った。
グラセフさんは寸前で剣を刀の前に割り込ませた。
ガアンッ、と剣と刀が打ち合ったとは思えないような音と共にグラセフさんな体が吹き飛ぶ。
「あっ!」という声が周りから上がった。
幸いか、どうやら受け身を取ったらしく、大した怪我はなかったらしい。
むくり、と立ち上がると、再び剣を向けてきた。
「今のを受けられるとは思ってなかった。すごいね」
正直、今ので決まったと思っていたんだけれど。わたしが思っていたよりもグラセフさんは強かったようだ。
「·····お褒め預かり光栄だ、雷の巫女様。といっても、今のでもうボロボロだがね」
それでも戦意は衰えないようでむしろ増しているように見える。
「もうそっちは限界が近いみたいだし·····もし、次のわたしの一撃を受けきれたらあなたの勝ちでいいよ」
「む、それではわたしが少し有利ではないか?」
グラセフさんが若干困惑しながら聞いてくる。
まあ、自分から有利を手放そうとしているように見えるし、その困惑は分かるけれどーーーーわたしは勝てる確信があるから言っているのだ。
「大丈夫。その程度じゃわたしの勝ちは揺るがないから」
「····そうか。ならば来い」
〈天祇〉の刀身に雷が収束する。
放つのはもちろん、魔竜王を殺した技。
「魔剣技ーー〈雷閃〉」
発動と決着はほぼ同時に。
切断された剣が地面につきたち、グラセフの首筋には刀が添えられていた。
「わたしの勝ち、ね」
「····ああ、私の負けだ。誓ったとうり貴女の配下になろう」
跪いたグラセフから視線を移すとその場の全員が跪いていた。
女の子に関してはなぜか拝み倒している。
「じゃ、これからよろしくね」
こうしてわたしは、初めて配下を手に入れたのだった。
なんとなく引っかかっていた疑問を尋ねるとグラセフさんは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに得心した風になった。
「なぜそれを····いやあの子が教えたのか。」
「言いたくなければ別に構わないけど」
私がそう言うとグラセフさんは自嘲気味に軽く笑いながら首を振った。
「いや、大して隠すようなのもでもない。ただ我々が他の氏族との争いに破れて追い出されたというだけだ」
「ああ、そういうのなんだ。族長も大変だね?」
「ははっ。たしかにそうだがそれが族長だからな。最後の最後まで率いていかねばならない」
「そう。でもわたしは手加減しませんよ?」
「それこそ、望むところだ」
「それでは『神に誓って』」
「『神に誓って』」
簡単な言葉のように感じるがこの誓いが破られることはほぼあり得ないらしい。破ると神罰が下り、ひどいときには死んでしまうと本には書かれていた。
わたしが〈天祇〉を抜くと、グラセフさんは腰に下げていた長剣を構えた。
その立ち姿にはほとんどブレがなく、かなり強い剣気が放たれている。
茂みからたくさんの人たちが出てきた。
彼らがいわゆる、見届け人ということになる。
「〈身体強化〉」
ーーやはり〈身体強化〉は使えるのか。
万が一にも負けるわけには行かない。
だから最初から本気を出そう。
「〈解放〉」
瞬間、わたしの身体が雷の魔力を纏い、髪は純白に変わり、凄まじい力の奔流が、わたしの身体と周囲に駆けめぐった。
「「「「ーーーッッッ!?!?」」」」
そのとんでもない圧力に幾人かはその場に倒れ伏した。
グラセフさんはさすがにに族長というだけあって、顔色を悪くし、気圧される程度で済んでいたけれど。
「·····なるほど。かの魔竜王を殺したというのは伊達ではないというわけか」
まあ、この力がなければ死んでただろうし、ヤツと殺り合うにはこれぐらいないと。
「じゃあ、〈身体強化〉〈雷速〉·····いつでもいいよ」
「では、お言葉に甘えてーーーハアアアアアッ!!」
先ほどまで気圧されていたとは思えないような鋭い剣筋と堂々たる強い踏み込み。
それに対してわたしはーーー動かずそのまま受けた。
「ーーなっ!?」
グラセフさんが驚愕の声をあげるが、それは、わたしがあっさりとやられたからではない。
その刃がわたしに触れずに止められたからだ。
首筋の皮膚に触れそうなギリギリで刃を止めているのは白い光。
「まさか····魔力か!!」
「そう。〈極魔〉というただの技」
そうこれは魔法じゃない。魔力操作により魔力を一点に集中させただけ。
これは、魔竜王と戦っていた時に高密度の魔力が草や木を揺らしたりしていたのを見て、試行錯誤を繰り返し作り上げたもの。
まあ、ただの技と言っても、多大な魔力を必要とするし、普通なら不可能なほどの精密な魔力操作能力を要求される、使用者を選ぶタイプのだけれど。
「く、おおおおお!!」
グラセフさんはすぐに剣を引くと、一撃必殺ではなく連撃に切り替え、凄まじい勢いで振るい始めた。
一目見てこの技には多大な魔力が必要ということを見抜き、魔力切れを狙ったのだろうけど、わたしの魔力量からすれば〈極魔〉に使う魔力は全体から見て微々たるもの。
考え方は悪くなかったけれどわたしがーーー相手が悪い。
「くっ!」
グラセフさんがさがる。特に追撃せずに見ると はあ、はあ、と息を切らしていた。
アレだけのスピードで剣を振るい続けたのだ。体力もすぐに尽きるだろう。
「こないの?····じゃあ、わたしがいくね?」
踏み込むと同時に間合いを制圧し刀を横に振った。
グラセフさんは寸前で剣を刀の前に割り込ませた。
ガアンッ、と剣と刀が打ち合ったとは思えないような音と共にグラセフさんな体が吹き飛ぶ。
「あっ!」という声が周りから上がった。
幸いか、どうやら受け身を取ったらしく、大した怪我はなかったらしい。
むくり、と立ち上がると、再び剣を向けてきた。
「今のを受けられるとは思ってなかった。すごいね」
正直、今ので決まったと思っていたんだけれど。わたしが思っていたよりもグラセフさんは強かったようだ。
「·····お褒め預かり光栄だ、雷の巫女様。といっても、今のでもうボロボロだがね」
それでも戦意は衰えないようでむしろ増しているように見える。
「もうそっちは限界が近いみたいだし·····もし、次のわたしの一撃を受けきれたらあなたの勝ちでいいよ」
「む、それではわたしが少し有利ではないか?」
グラセフさんが若干困惑しながら聞いてくる。
まあ、自分から有利を手放そうとしているように見えるし、その困惑は分かるけれどーーーーわたしは勝てる確信があるから言っているのだ。
「大丈夫。その程度じゃわたしの勝ちは揺るがないから」
「····そうか。ならば来い」
〈天祇〉の刀身に雷が収束する。
放つのはもちろん、魔竜王を殺した技。
「魔剣技ーー〈雷閃〉」
発動と決着はほぼ同時に。
切断された剣が地面につきたち、グラセフの首筋には刀が添えられていた。
「わたしの勝ち、ね」
「····ああ、私の負けだ。誓ったとうり貴女の配下になろう」
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