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31二人のお茶会
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「シオリ!」
「あ、エフィー」
王宮内で与えられた貴賓室で寛いでいると、エフィーが訪ねてきた。
より一層きらびやかになっていて、ちょっと眩しい。
「どうしたの?」
「お茶会のお誘いよ。勿論、エルメダもよ。別に堅苦しくしなくていいから来てくれない?暇なのよ」
「暇だからお茶会に誘うというのは頭になかったな~」
普通にゴロゴロしたり、ボードゲームでもするんだと思ってた。
「わかった。ちょっと待ってて。すぐ用意するから」
「わかったわ。先に戻って準備しておくわね」
「了解ー」
エフィーが出ていくと、流石に着物系はだめかなと思い、今着ている『戦姫の着物』を見下ろす。
しばらく悩んだ末、皇服を着ていくことにした。
というか、着物系以外のものって動きにくいし、重いしでどうもわたしに合わない。
今度、動きやすいドレスでも発注しようかな。
「とりあえず、様にはなるかな。黒髪のままだったらあんまりしっくりこなさそう」
白髪に紅眼になってるし、ドレスで似合う色も違ってるだろうし。わたしの今までの感覚だと、絶対に方向性間違っちゃう。
取り敢えず手土産を作って持って指定された中庭に行くと、既に準備は終わっていたらしく、エフィーが座っていた。
「いらっしゃいシオリ」
「ちょっと遅くなったみたいね。はいこれ。茶請けね」
「なにこれ」
袋の中を覗き込んだエフィーが一つつまむとクエスチョンマークを浮かべる。
まあ、見たことないだろうしね。
「それはカステラ焼きよ」
「かすてら焼き?ふわふわでケーキのスポンジみたいね」
「美味しいよ、それ。子供にも大人にも人気あるからね。うちの国ではブームができてるぐらいだし」
「そんなに?」
元々これは、わたしが城の厨房でおやつとしてコッソリ作ったものだった。そこを料理長に見つかり、アルマに見つかり、レシピを教えてほしいと言われたので教えたら、まさかの一大ブームになっていた。今では大通り沿いの屋台の定番になっている。
「ーー美味しいわ。素朴なのに、この絶妙な甘さが紅茶にとてもマッチしてる」
「それは良かった。焼いてきたかいがあったね」
これはそんなに手がかからないし美味しいから家でも結構作ってたんだよね~。妹にも何回も作ってと強請られたものだし。
わたしも皿に盛られる前のカステラ焼きを一つつまむ。
ーーーーうん。我ながらうまい。腕は落ちていないみたい。
メイドさんたちが、セッティングを終えて退出していく。
「護衛とかどうしたの?」
「必要ないでしょ」
「え?」
いや、一応いるでしょ。暗殺とかされたらどうするつもりなんだろうか。
「いや、シオリがいたら十分でしょう?魔竜王を倒せる人間を殺せる者なんていないでしょう」
「人を人外扱いするのやめてもらえる?まあ、わたしがいるうちは指一本触れさせないけどさぁ」
そのへんの騎士程度の実力なら片手間でも倒せる。ゴブリンに古龍が殺せないのと同じでそもそもの実力が違いすぎる。何なら一国と戦ってもわたし一人で勝利することも可能だ。
魔力総量からしてわたしは桁違いだしね。
「ならいいでしょう。あなたもつけていないのだし」
「う~んなんか違うような気がするんだけど·····まあいいや」
もうなんか指摘するのも面倒。わたしにも護衛って形式上のものでしかないし、わたしひとりのほうが強いから、殆どそばにつけてないし。わたしも人のこと言えないからね。
そこをつかれるとちょっと痛い。
「この紅茶も美味しいね。どこのやつなの?」
「これはモルドール領産のね。結構貴族に人気が高いのよ」
「へえ。何処で買えるの?」
「殆どはモルドール商会ね。一部は他でも扱っていると聞いたけれど、あそこで買うのが一番いいと思うわ。少なくとも、偽物は掴まされないでしょうし」
「ああ、やっぱりそうゆうのあるんだ·····」
偽物って結構バレやすいと思うんだけどな。大概はその辺の普通の茶葉にすり替えているんだろうし、本物の香りと味を知っていたら、一発でバレるでしょ。
もしくはそんなに味覚がおかしいやつが多いのか。
「しかし、二人でのお茶会っていうのもいいものだねぇ」
「そうね。うるさいやつも、飛び交う嫌味の応酬もないしね」
嫌味の応酬ってもう地獄じゃない?
自分の開いたお茶会でそんな事になったら即逃げる。何が悲しくてそんな真っ黒なところにいなければならない?
「足の引っ張り合いも、好きでもない話題で盛り上がるふりをすることもしなくていい·····」
わああああ!?
ちょ、まずいって!?
なんかエフィーの目が死んできたんだけど?黒々としたオーラまで見えるんですけど!
ハインメル伯爵のときと違って、めっちゃどんよりしてる。
「エフィー。エフィー?お願いだから帰ってきて~~!!」
闇落ちとかやめてね?一体どんな経験をしたらこんなことになるぐらいまで追い詰められるの?
王宮って魔境とか言う意味だったかしら?
顔の前で手を振っても反応がなかったので、肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
「ーーーーはっ。あのお茶会は、悪魔たちは何処へ·····?」
「あ、悪魔って·····」
一体どんな事があったんだろうか。というか悪魔たちって一体どれほどヤバい奴らなのか。
知りたいような知りたくないような·····。
やっぱりやめておこう。知ったらろくなことにならなそうだし。
「大丈夫?」
「····ええ、大丈夫よ」
まだちょっと大丈夫そうには見えないけど、本人が大丈夫って言ってるならいいかな····?
「ヴィルフリートとエルメダのことなんだけど、国王様と王妃様からお墨付きをもらったよ。全面協力してくれるって」
「え?本当なの?」
「うん。わたしが推薦したらあの子なら信用できるって」
「もう完全に包囲網が引けたわね·····。後はエルメダがヴィルフリートを落とせれば完璧ね。逃げ道すらないわ」
ベルトラム王とローゼマリー王妃がいきなり裏切ることがなければ、ほぼ確実に二人の婚約は既定路線。あ、いや、ヴィルフリートの意思もあったんだった。
「順調なことはいいことでしょ。少なくともうまく行ってないよりはマシだし」
「それはそうね。今度エルメダにあったら話してあげましょう」
聞かせてあげたら、喜ぶより腰を抜かすんじゃないかなぁ。エルメダって見た目と違って結構繊細だし、あんまり打たれ強くないからね。そのギャップがいいんだけど。
「私の方はお兄様が好む料理や紅茶、女性の性格や性癖、最近の行動パターン、色、好む服装まるっと調べてきたわ。メイドたちに聞き込みをしたらこれでもかというほどこと細やかに出てきたの。びっくりしたわね」
メイドの情報収集能力こっわ!?
迂闊に行動できないじゃん。好む服装、料理や紅茶とかはいいとしても行動パターンとか好みの女性の性格や自分の性癖がバレてるとかはヤバ過ぎる。メイドって一流の諜報員とか忍者とかそういうたぐいのなの?なんでそんなのが普通に流出してるのよ。
「好みの女性の性格は、普段はきっちりしているけど、二人のときは甘えてくれる可愛い人だって」
「·····普通にエルメダどストライクでは?」
もういっそのこと今のままヴィルフリートに突撃をかませばいけるんじゃ?小細工なしのほうが手っ取り早く確実のような気がする。
「私もそう思ったけれど、確実を期すためにはお兄様の弱点を抑えておいたほうがいいわ。万が一失敗になるなんて事になったら目も当てられないもの」
「確かにそうね。万全を期して挑みましょう。これは負けは許されないわ」
エルメダとヴィルフリートの(?)幸せがかかっているのだ。ここで全力を出さずしていつ出すと言う?
なんとしても二人のためにやりきらないと!
「そういえば、シオリは地球というのに帰らなくていいの?」
「大丈夫かな。お祖父様が作った学校だし、テストさえ受ければ問題ないって」
皇国の政務卿グラセフ、財務卿フォネア、魔法卿リグルス、軍務卿ウルガ、皇宮侍女長アルマ、専属侍女リリア、近衛騎士団長アメリアの七人以外で唯一地球のことを知っているのがエフィーだった。
教えたというよりは感づかれたというべきで、たまたま水晶の間に帰ってきたところを見られたわけ。最初は誤魔化そうとしたけど簡単に見破られた挙げ句、みんなにバラすと脅迫されて口を割られた。
「学園の特待生みたいなものね」
「へえ、こっちにはそんなのがあるんだ。日本じゃ殆どそういうのはないし、そういう部分では羨ましいなぁ」
「その代わり、難易度は途轍もなく高いわ。入学時点で3年レベルのことができないと認められないの」
「とんでもないわね。そんなのは一人もいないときもありそう」
「ええ、でも多いときには十人近く在籍していたこともあるみたい。300年も前のことらしいけれど」
「何その怪物の時代」
天才が集まりすぎでしょ。そんなに集まるって何があったのか。
そう思っていたら、その時代、邪神が現れて暴れていたらしい。一般的に知られている邪神戦争というもの。その時集った者のうち8人が八大英雄として邪神を外の世界と呼ばれる世界の狭間に封印したらしい。そういうわけで、規格外の存在が多いほど、世界の危機が訪れる可能性が高いと思われているみたい。
倒されていない時点であまりいい予感がしないんだけど。
今更、出てくるってことはないよね?わたし自体がイレギュラーなわけだし怖いんだけど。
「まあ、シオリなら余裕で入れると思うけどね。実技だけでもいけそう」
「脳筋ってバカにしてる?」
あら、被害妄想が激しいわね、っと青筋を立てるわたしをするりとあしらうとエフィーが笑う。
「まあ、でも一度あっちに戻るよ。同盟打診の答えを聞いて、締結できたならしばらくは向こうが中心になるね。今はこっちにかかりきりになってるから、向こうの様子も見ておかないと。顔だけは出してたけど二ヶ月ぐらい放置していたし」
それにいい加減ちゃんと向こうでも過ごさないとお祖父様に怒られそう。
殆どお母さんもお父さんにも会ってないし、ちゃんと会いに行かないと。
·····フォルニアの方に殆ど生活基盤ができてしまってるよね。もうこっちも家みたいな感じがする。
二つの世界にそれぞれ家があるなんて不思議な感じ。
「そうなの。あなたがいないと寂しくなるわね」
エフィーがちょっとだけしょんぼりしたようにいう。
「わたしがいないときはエルメダのことは任せるわね。あなたしか頼れるの、いないんだから」
「そこは任せて。悪魔たちから守ってみせるわ」
「悪魔は大げさじゃ····?」
むん、と意気込むエフィーに苦笑する。まあ、エフィーがついてくれるならひとまずエルメダは安全だと思う。
その後今後の計画を伝えて、しばらく雑談をしてからお茶会は解散になった。
「あ、エフィー」
王宮内で与えられた貴賓室で寛いでいると、エフィーが訪ねてきた。
より一層きらびやかになっていて、ちょっと眩しい。
「どうしたの?」
「お茶会のお誘いよ。勿論、エルメダもよ。別に堅苦しくしなくていいから来てくれない?暇なのよ」
「暇だからお茶会に誘うというのは頭になかったな~」
普通にゴロゴロしたり、ボードゲームでもするんだと思ってた。
「わかった。ちょっと待ってて。すぐ用意するから」
「わかったわ。先に戻って準備しておくわね」
「了解ー」
エフィーが出ていくと、流石に着物系はだめかなと思い、今着ている『戦姫の着物』を見下ろす。
しばらく悩んだ末、皇服を着ていくことにした。
というか、着物系以外のものって動きにくいし、重いしでどうもわたしに合わない。
今度、動きやすいドレスでも発注しようかな。
「とりあえず、様にはなるかな。黒髪のままだったらあんまりしっくりこなさそう」
白髪に紅眼になってるし、ドレスで似合う色も違ってるだろうし。わたしの今までの感覚だと、絶対に方向性間違っちゃう。
取り敢えず手土産を作って持って指定された中庭に行くと、既に準備は終わっていたらしく、エフィーが座っていた。
「いらっしゃいシオリ」
「ちょっと遅くなったみたいね。はいこれ。茶請けね」
「なにこれ」
袋の中を覗き込んだエフィーが一つつまむとクエスチョンマークを浮かべる。
まあ、見たことないだろうしね。
「それはカステラ焼きよ」
「かすてら焼き?ふわふわでケーキのスポンジみたいね」
「美味しいよ、それ。子供にも大人にも人気あるからね。うちの国ではブームができてるぐらいだし」
「そんなに?」
元々これは、わたしが城の厨房でおやつとしてコッソリ作ったものだった。そこを料理長に見つかり、アルマに見つかり、レシピを教えてほしいと言われたので教えたら、まさかの一大ブームになっていた。今では大通り沿いの屋台の定番になっている。
「ーー美味しいわ。素朴なのに、この絶妙な甘さが紅茶にとてもマッチしてる」
「それは良かった。焼いてきたかいがあったね」
これはそんなに手がかからないし美味しいから家でも結構作ってたんだよね~。妹にも何回も作ってと強請られたものだし。
わたしも皿に盛られる前のカステラ焼きを一つつまむ。
ーーーーうん。我ながらうまい。腕は落ちていないみたい。
メイドさんたちが、セッティングを終えて退出していく。
「護衛とかどうしたの?」
「必要ないでしょ」
「え?」
いや、一応いるでしょ。暗殺とかされたらどうするつもりなんだろうか。
「いや、シオリがいたら十分でしょう?魔竜王を倒せる人間を殺せる者なんていないでしょう」
「人を人外扱いするのやめてもらえる?まあ、わたしがいるうちは指一本触れさせないけどさぁ」
そのへんの騎士程度の実力なら片手間でも倒せる。ゴブリンに古龍が殺せないのと同じでそもそもの実力が違いすぎる。何なら一国と戦ってもわたし一人で勝利することも可能だ。
魔力総量からしてわたしは桁違いだしね。
「ならいいでしょう。あなたもつけていないのだし」
「う~んなんか違うような気がするんだけど·····まあいいや」
もうなんか指摘するのも面倒。わたしにも護衛って形式上のものでしかないし、わたしひとりのほうが強いから、殆どそばにつけてないし。わたしも人のこと言えないからね。
そこをつかれるとちょっと痛い。
「この紅茶も美味しいね。どこのやつなの?」
「これはモルドール領産のね。結構貴族に人気が高いのよ」
「へえ。何処で買えるの?」
「殆どはモルドール商会ね。一部は他でも扱っていると聞いたけれど、あそこで買うのが一番いいと思うわ。少なくとも、偽物は掴まされないでしょうし」
「ああ、やっぱりそうゆうのあるんだ·····」
偽物って結構バレやすいと思うんだけどな。大概はその辺の普通の茶葉にすり替えているんだろうし、本物の香りと味を知っていたら、一発でバレるでしょ。
もしくはそんなに味覚がおかしいやつが多いのか。
「しかし、二人でのお茶会っていうのもいいものだねぇ」
「そうね。うるさいやつも、飛び交う嫌味の応酬もないしね」
嫌味の応酬ってもう地獄じゃない?
自分の開いたお茶会でそんな事になったら即逃げる。何が悲しくてそんな真っ黒なところにいなければならない?
「足の引っ張り合いも、好きでもない話題で盛り上がるふりをすることもしなくていい·····」
わああああ!?
ちょ、まずいって!?
なんかエフィーの目が死んできたんだけど?黒々としたオーラまで見えるんですけど!
ハインメル伯爵のときと違って、めっちゃどんよりしてる。
「エフィー。エフィー?お願いだから帰ってきて~~!!」
闇落ちとかやめてね?一体どんな経験をしたらこんなことになるぐらいまで追い詰められるの?
王宮って魔境とか言う意味だったかしら?
顔の前で手を振っても反応がなかったので、肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
「ーーーーはっ。あのお茶会は、悪魔たちは何処へ·····?」
「あ、悪魔って·····」
一体どんな事があったんだろうか。というか悪魔たちって一体どれほどヤバい奴らなのか。
知りたいような知りたくないような·····。
やっぱりやめておこう。知ったらろくなことにならなそうだし。
「大丈夫?」
「····ええ、大丈夫よ」
まだちょっと大丈夫そうには見えないけど、本人が大丈夫って言ってるならいいかな····?
「ヴィルフリートとエルメダのことなんだけど、国王様と王妃様からお墨付きをもらったよ。全面協力してくれるって」
「え?本当なの?」
「うん。わたしが推薦したらあの子なら信用できるって」
「もう完全に包囲網が引けたわね·····。後はエルメダがヴィルフリートを落とせれば完璧ね。逃げ道すらないわ」
ベルトラム王とローゼマリー王妃がいきなり裏切ることがなければ、ほぼ確実に二人の婚約は既定路線。あ、いや、ヴィルフリートの意思もあったんだった。
「順調なことはいいことでしょ。少なくともうまく行ってないよりはマシだし」
「それはそうね。今度エルメダにあったら話してあげましょう」
聞かせてあげたら、喜ぶより腰を抜かすんじゃないかなぁ。エルメダって見た目と違って結構繊細だし、あんまり打たれ強くないからね。そのギャップがいいんだけど。
「私の方はお兄様が好む料理や紅茶、女性の性格や性癖、最近の行動パターン、色、好む服装まるっと調べてきたわ。メイドたちに聞き込みをしたらこれでもかというほどこと細やかに出てきたの。びっくりしたわね」
メイドの情報収集能力こっわ!?
迂闊に行動できないじゃん。好む服装、料理や紅茶とかはいいとしても行動パターンとか好みの女性の性格や自分の性癖がバレてるとかはヤバ過ぎる。メイドって一流の諜報員とか忍者とかそういうたぐいのなの?なんでそんなのが普通に流出してるのよ。
「好みの女性の性格は、普段はきっちりしているけど、二人のときは甘えてくれる可愛い人だって」
「·····普通にエルメダどストライクでは?」
もういっそのこと今のままヴィルフリートに突撃をかませばいけるんじゃ?小細工なしのほうが手っ取り早く確実のような気がする。
「私もそう思ったけれど、確実を期すためにはお兄様の弱点を抑えておいたほうがいいわ。万が一失敗になるなんて事になったら目も当てられないもの」
「確かにそうね。万全を期して挑みましょう。これは負けは許されないわ」
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なんとしても二人のためにやりきらないと!
「そういえば、シオリは地球というのに帰らなくていいの?」
「大丈夫かな。お祖父様が作った学校だし、テストさえ受ければ問題ないって」
皇国の政務卿グラセフ、財務卿フォネア、魔法卿リグルス、軍務卿ウルガ、皇宮侍女長アルマ、専属侍女リリア、近衛騎士団長アメリアの七人以外で唯一地球のことを知っているのがエフィーだった。
教えたというよりは感づかれたというべきで、たまたま水晶の間に帰ってきたところを見られたわけ。最初は誤魔化そうとしたけど簡単に見破られた挙げ句、みんなにバラすと脅迫されて口を割られた。
「学園の特待生みたいなものね」
「へえ、こっちにはそんなのがあるんだ。日本じゃ殆どそういうのはないし、そういう部分では羨ましいなぁ」
「その代わり、難易度は途轍もなく高いわ。入学時点で3年レベルのことができないと認められないの」
「とんでもないわね。そんなのは一人もいないときもありそう」
「ええ、でも多いときには十人近く在籍していたこともあるみたい。300年も前のことらしいけれど」
「何その怪物の時代」
天才が集まりすぎでしょ。そんなに集まるって何があったのか。
そう思っていたら、その時代、邪神が現れて暴れていたらしい。一般的に知られている邪神戦争というもの。その時集った者のうち8人が八大英雄として邪神を外の世界と呼ばれる世界の狭間に封印したらしい。そういうわけで、規格外の存在が多いほど、世界の危機が訪れる可能性が高いと思われているみたい。
倒されていない時点であまりいい予感がしないんだけど。
今更、出てくるってことはないよね?わたし自体がイレギュラーなわけだし怖いんだけど。
「まあ、シオリなら余裕で入れると思うけどね。実技だけでもいけそう」
「脳筋ってバカにしてる?」
あら、被害妄想が激しいわね、っと青筋を立てるわたしをするりとあしらうとエフィーが笑う。
「まあ、でも一度あっちに戻るよ。同盟打診の答えを聞いて、締結できたならしばらくは向こうが中心になるね。今はこっちにかかりきりになってるから、向こうの様子も見ておかないと。顔だけは出してたけど二ヶ月ぐらい放置していたし」
それにいい加減ちゃんと向こうでも過ごさないとお祖父様に怒られそう。
殆どお母さんもお父さんにも会ってないし、ちゃんと会いに行かないと。
·····フォルニアの方に殆ど生活基盤ができてしまってるよね。もうこっちも家みたいな感じがする。
二つの世界にそれぞれ家があるなんて不思議な感じ。
「そうなの。あなたがいないと寂しくなるわね」
エフィーがちょっとだけしょんぼりしたようにいう。
「わたしがいないときはエルメダのことは任せるわね。あなたしか頼れるの、いないんだから」
「そこは任せて。悪魔たちから守ってみせるわ」
「悪魔は大げさじゃ····?」
むん、と意気込むエフィーに苦笑する。まあ、エフィーがついてくれるならひとまずエルメダは安全だと思う。
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