リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

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第1章 リアル人狼ゲームへようこそ(1日目)

1ー16 脱出3

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 戻りかけたところに合流したシャンティにラームは当惑した。
 「1日目脱出権」部屋ではなくひとり出てくるのに躊躇して遅れたそうだ。
 歩きながら事態を説明しこの切り札は無効であることを教えたが彼女は納得しなかった。
「今さら戻れない」
 出ていく時に後ろで叫びが聞こえたしと口ごもる。
 そして自分は逃げたい。先に進んでみると主張した。
「駄目だよ!」
「殺されちゃうんだよ」
 女子も口々に止めるが譲らない。
「ドアから出たら殺される。なら違う方法を取れ」
 最後ラームは重く言った。
「ってどうすればいいの?」
「わからないならおれたちと一緒に戻れ。進みたいなら自分で考えろ」
 自分には方法がわからないからと素直に吐いた。

 結局シャンティは塀の方へ、ラームと女子三人は玄関へと分かれた。
 長机上のケースに次々とイヤホンを戻していると、
「!」
 まだ付けていたラームが耳を抑えた。振り返るタヒラに、
「警告が鳴ってる。許可なく外へ出てはいけませんってー」
 悔しげに唇を引き結ぶ。
「消えた」
 アナウンスが止まるのはその必要がなくなる時。
「だから言ったのに」
 サニタの非難も今は傷みに満ちていた。
「わからないよ。何か『方法』を見つけたのかもしれないだろ」
 それくらい思っておきたい。
「ここはそういう希望的観測が持てる場所じゃないと思う。わたしは」
 言い捨てるとサニタは玄関のキープレートにカードキーをかざすが、
「開かない」
 ランプが緑に変わらない。キランが変わっても同じだ。ドアを直接開けようとしても開かない。
「イヤホン!」
 ラームが怒鳴って机上を指しタヒラ、キラン、サニタと争って箱から拾ったイヤホンを付け直す。

『Warning! Warning! Out of rules!』
『時間外に外に出ていてはいけません』

 ラームはさっと手首を返しまだ外していなかったリストウォッチを見る。
 11時47分。
「まだ時間は過ぎてない」
 星が小さく瞬く空へ叫ぶ。顔を撫でる夜の風は冷たい。

『確認しましょう。中央窓の外側、テントの中に入ってください』

(何のつもりだ)
 ラームはいらついた。確かに今は時間前だがあと十分強。もたもたしていたらすぐ過ぎるーと中央窓と玄関の距離を推し計る。
(余裕を含め二分は必要)
 リストウォッチに目を落とす。

 テント四隅、赤みを帯びた電球が今は点いていた。シャッターが音を立てて巻き上がり、小さな四角に区切られた中央窓の上部アーチまで見えるようになれば、出てきた時とは違いシャンデリアも灯って明るい無人の広間がガラス越しで目に入る。
 丁度正面、振り子時計の長針は五分を指していた。つまり12時5分。
(そんな……)
 手元は11時48分。
「下がって!」
 ラームは肘を勢いよく後ろに振ると真っ直ぐ拳を窓ガラスに突っ込んだ。
 中央下から二番目の四角いガラスが割れ拳の上に血が流れる。
 その自分の手を彼はもう見ることはなかった。
 ばさり、と両手を投げ出しラームは土の上に倒れた。

『Warning! Warning! Out of rules!』
『建物・備品を壊してはなりません』

 サニタが窓枠を押すが開かない。
「キラン!」
「掛け金があったはず……」
 ラームが壊した場所からキランが腕を差し入れ手で探る。
 パリン。
 動いた腕がひびの入ったガラスの破片を落とす。とキランの腕はだらりと下がったが一度窓枠に手首がかかり、またするりと抜けて体はどしんと仰向けに倒れ込んだ。
 ラームもキランももう動くことはなかった。

『Warning! Warning! Out of rules!』
『建物・備品を壊してはなりません』

 ガラスが割れて落ちたら破壊行為。
 中に入らなくてもルール違反。

(十二時になったら魔法は解ける。まるでシンデレラだー)
 窓を見つめ硬直したタヒラが声もなく崩れ落ちる。
 イヤホンを投げ捨てていたサニタはテントから逃げ出した。
(月が見えない)
 新月でもない。雲もそう多くない。この時間はどの方角だったかー
 鈍くかすかな星の光が薄く静かに流れた雲の網に隠される。
 同時にサニタの命の光も世界から消えた。

 葉擦れのささやきのみの静けさが庭に戻る。
 広間の時計の針が逆方向に滑った。時刻は二十三時五十四分を指す。シャッターも元のように降り外と中を隔てた。
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