リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ！〉

第１章 リアル人狼ゲームへようこそ（１日目）

幕間２ 嘘（2024年 ムンバイ）

「私が吐いた嘘は一つだけです」
　ラクシュミは父と、もう一人担当と成った女性弁護士の前で言った。
「東京の翻訳会社にサイトの英訳を頼んだ時に、仕事の取引先に成るかもしれないので下調べに、と理由を付けました」
　だが支払いは職場付けかと尋ねられた時には、まだ個人的な調査の段階だからとポケットマネーで払った。
「ですから、公金横領というのは事実無根です」

　立場を利用し仕事とは何の関係もない企業の調査を業務として行なった、との理由でラクシュミは解雇された。
　仮に事実であってもその程度であれば何人も首になりかねない職場から、だ。
　会社サイトは自国語の方が英語版より詳しい。
　株式会社macojinの公式サイトを自動翻訳で一通り読んだが、正確な情報を掴みたく東京出張中にー勿論勤務後の自由時間だー新橋にある翻訳会社を直接訪ね、ビジネスクオリティでの翻訳を依頼した。

　その価値はあった。
　macojin創始者は仏教の信仰心、中でも真言宗（マントラ派という意味らしい）への帰依が厚く会長へ引退後は僧籍を取得した。
　元々の会社名は「まことのじんせい」社。当時の英語名は「True life」

『私は愛よりも命が大切だと思う』
　クリスティーナの遺言。
　映画『バンバン！』は自分も見てみた。カトリーナ・カイフ演じるヒロインが使ったマッチングサイトの名は「True  love.com」
　愛を命に変えればTrue lifeだ。
　日本出張からの帰国後にサイトを漁りまくったところ、macojinに社名変更になったのはかなり前だが、長年親しまれた家電メーカーゆえに日本では今も「まことのじんせい」社で通用しているそうだ。クリスティーナも日本留学中旧社名に親しんだのだろうか。
　そして火葬室がこの会社製であることに気付いた。

（自動翻訳だとPure lifeになっていてわからなかった）
　プロの手は使うものだ。
　このレベルの大企業との取引となれば業界に情報がない訳はない。
　あの時「リアル人狼ゲーム」から逃亡したサバイバーの中でビジネスと政治絡みなら一番の情報通と思われるーそれもクリスティーナが指摘していたーロハンに、その父親を通して連絡を取った。

　だから解雇された時、ラクシュミはすぐロハンに警告の連絡を入れた。