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第4章 いつまで耐えねばならないのか(4日目)
幕間 業(カルマ)(2025年 ムンバイ)
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マノルマー妻が涙を流すのが耐え難かった。
拭うことすら許されないのは胸が張り裂けそうだった。
不倫の疑いをかけられているとは思いもよらなかった。
村の仕事だと家を空けるが、郷里の村には帰っていないと実家から伝わったのが曲解された。
「村の仕事」に間違いない。彼は堂々と義家族や自分の両親たちへと主張した。
高給の仕事に受かったものの無惨な姿で戻ってきた少女の死の真相を調べたー言えば今度は彼女との関係を追及された。
後から知ったことだが、自分たちの村では歳の近い男女が縁付くことが多かった(妻も同い年だ)が、彼女の一族では十近く離れた夫婦も珍しくないという差がここに繋がった。
恋愛の範疇に入る年の差ではない。思っていたから言った、
「妹のよう」
とは男女の関係を隠す常套句だ、と後から責められたが知る由もなかった。
彼が恋をしたのは見合い結婚した妻だけで、また道を外れた行いをする人間など回りにいなかった。
調べ物はどうなったのか、との問いに彼はジャーナリストの名刺を渡した。
素人の自分には限界が来た。信頼出来るこの人に後は任せたので聞きたければ彼に聞いてくれ、自分の身内だとわかれば教えてもらえるだろう、と。
翌日、義父から凄まじい剣幕で電話がかかってきた。
「この間死んだそうだぞ!」
死んだ人間を持ち出せば嘘が吐けると思っているのか。
「何がおかしい?」
思わず漏らした笑いを電話が拾ってしまった。臆することなく静かに告げる。
「うれしいんです。マノルマやお義父さんには危険はない。次に殺されるのは私です」
妻子は実家から戻ってこない。
日々の虚しさに彼はしばしば郷里の村を、その畑と森と、境界のない空を悠然と渡る鳥たちを思った。
木陰の涼やかさを、雨季の始まりに木々の枝や葉からしたたり落ちるシャワーの心地よさを、そしてそれら全てを失った少女を思った。
いざという時青い箱を友人たちに託したことが良かったのか繰り返し考えた。
危ないことに巻き込みたくはない。
ただ、命の最後の叫びを絞り出して手紙に隠した少女の思いは誰かが世界に戻すべきだ。自分が今回この世に生まれ落ちた理由は、この小さな慈悲を形にする業のためではなかっただろうか。
彼が撃たれたのは、ジャーナリスト殺害の1ヶ月後だった。
ーーーーー
「ラクシュミ。逃げなさい」
彼女はここで父の底力を知ることになった。
拭うことすら許されないのは胸が張り裂けそうだった。
不倫の疑いをかけられているとは思いもよらなかった。
村の仕事だと家を空けるが、郷里の村には帰っていないと実家から伝わったのが曲解された。
「村の仕事」に間違いない。彼は堂々と義家族や自分の両親たちへと主張した。
高給の仕事に受かったものの無惨な姿で戻ってきた少女の死の真相を調べたー言えば今度は彼女との関係を追及された。
後から知ったことだが、自分たちの村では歳の近い男女が縁付くことが多かった(妻も同い年だ)が、彼女の一族では十近く離れた夫婦も珍しくないという差がここに繋がった。
恋愛の範疇に入る年の差ではない。思っていたから言った、
「妹のよう」
とは男女の関係を隠す常套句だ、と後から責められたが知る由もなかった。
彼が恋をしたのは見合い結婚した妻だけで、また道を外れた行いをする人間など回りにいなかった。
調べ物はどうなったのか、との問いに彼はジャーナリストの名刺を渡した。
素人の自分には限界が来た。信頼出来るこの人に後は任せたので聞きたければ彼に聞いてくれ、自分の身内だとわかれば教えてもらえるだろう、と。
翌日、義父から凄まじい剣幕で電話がかかってきた。
「この間死んだそうだぞ!」
死んだ人間を持ち出せば嘘が吐けると思っているのか。
「何がおかしい?」
思わず漏らした笑いを電話が拾ってしまった。臆することなく静かに告げる。
「うれしいんです。マノルマやお義父さんには危険はない。次に殺されるのは私です」
妻子は実家から戻ってこない。
日々の虚しさに彼はしばしば郷里の村を、その畑と森と、境界のない空を悠然と渡る鳥たちを思った。
木陰の涼やかさを、雨季の始まりに木々の枝や葉からしたたり落ちるシャワーの心地よさを、そしてそれら全てを失った少女を思った。
いざという時青い箱を友人たちに託したことが良かったのか繰り返し考えた。
危ないことに巻き込みたくはない。
ただ、命の最後の叫びを絞り出して手紙に隠した少女の思いは誰かが世界に戻すべきだ。自分が今回この世に生まれ落ちた理由は、この小さな慈悲を形にする業のためではなかっただろうか。
彼が撃たれたのは、ジャーナリスト殺害の1ヶ月後だった。
ーーーーー
「ラクシュミ。逃げなさい」
彼女はここで父の底力を知ることになった。
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