リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

文字の大きさ
96 / 170
第6章 狼はすぐそこに(6日目)

6ー2 嘘吐きは人狼の始まり

しおりを挟む
 9人のうちナイナは調子が悪いと朝から部屋にこもり広間には出てきていない。
「チャイをお持ちしました」
 中央窓前にたたずむ7人。ナラヤン、スディープ、イジャイ、ルチアーノ、アッバース、ヴィノード、アディティ。ラジューが彼らに声をかける。
「人狼が入れたものなんて飲めるか。ダウドみたいに殺されたくはない!」
 ナラヤンが強く言って手を振る。奥のテーブルに置いておくと移動する彼を追うように七人もソファー回りに動く。
 椅子を引っ張ってきて少し離して座るアディティ。
 時計側、奥のソファーにヴィノード。テーブルを挟んだ窓側にアッバースとイジャイ。その背中側にスディープとルチアーノが立つ。
 アッバースの向こうに椅子を置いてナラヤンが座る。
 見事に部屋ごとに分かれている。アディティは思った。
 それはそうだろう。「真実」を共有するのは同室者だけだ。

 5号室ではスレーシュ、7号室ではニルマラが殺された。
 全員が残る唯一の部屋4号室と、脱出権を行使されひとり部屋となったナラヤンの3号室、アディティの10号室の3部屋が何もなかった、夜中に部屋を抜け出た人間もいなかったと証言している。
 全ての話が本当ならば誰も犠牲者は出ない。
 誰かが、どこかの部屋が嘘を吐いている。

「ぼく貰う」
 スディープが回ってテーブルに手を伸ばし、ガラスコップのチャイをぐびぐびと飲んだ。
「おいしい」
 言えばラジューが小さく微笑む。続いてアッバースが声をかけたルチアーノにコップを渡し自分も手にしてそれぞれに飲む。

「あの、食事の支度についてですがー」
「それは少しだけ待って。ラジューもここにいてくれる?」
 アディティもテーブルからチャイを持ち上げた。彼はその場で頷く。
「ナラヤン。昨日の占いの結果を教えて欲しい」
 ソファー向こうの彼に声を響かせる。
「それは会議の時に。言えるのは……昨日はリクエスト通り4号室から占った。で人狼だった」
 暗い声。
「それだけだ」
「誰を占った。今言ってくれ」
 アッバースが隣に顔を向ける。
 少しの後にナラヤンが言った。
「それ意味ないだろう? 人狼部屋がどこかはわかった。誰をなんてもうどうでもいい」
「オイ!」
 アッバースは怒鳴る。がすぐに落ち着いて、
「教えてもらわねえと困る。俺は人狼じゃない。うちの部屋に人狼がいるってなら身を守る必要があるんだ」
 項垂れたナラヤンが小さく首を横に振るのが見えた。
「俺も人狼じゃない」
 ルチアーノが言えば、
「俺だって違う」
「ぼくも違うよ」
 イジャイとスディープもそれぞれに主張する。

 ナラヤンは4号室が人狼部屋だと暗に言っている。ルチアーノ・イジャイ・スディープに加え親友のアッバースもだと口にしたくないのだろう。
 ここにいるのはナラヤンを除けばその4号室の人間と、占いで人狼と出たラジュー、人狼陣営のヴィノードだけだ。
 ならば自分が指摘するしかない。
「ナラヤン。私もアッバースのために教えてあげてほしい。4号室は全員が人狼じゃない」
「どうしてそうなる?」
 痛みを含んだ声がアッバースとイジャイの頭上を越えアディティに届く。
「ルールから。今朝少しアッバースと話したんだけど今ここにいる人狼は3人か4人だよ」
「だからその4人が、って言わせるな」
「占いでラジューが人狼だと見つけ出したのはあなたでしょ。4号室全員が人狼だったら全部で5人になってしまう。あり得ない」
「!」
 ヴィノードが、
「なんでだよ」
 と唸る。対してアッバースが、
「このルールを見てくれ」
 とテーブルからラミネート紙を掴んでかざした。

「人狼の最大人数と最小人数を考える。まず今残っているのは9人。人狼の方が多かったら『ゲーム』は終わるはずだから5人ってことはない。最大は4人。この場合残りの5人全員が村人ってことになる」
 アッバースらしい明るい調子だが場には緊張が走る。
 この中の誰が? との疑惑。人狼であることを隠している側の露見の恐怖。
「一方、昨日は人狼にふたりが殺された。ならシャキーラは嘘を言っていたことが明らかだ。あいつはおととい『祝福』をかけて昨日逃げて行った」
 5日目脱出権を行使する気なら前夜の4日目に「祝福」で身の安全を計る気持ちもわかる。アディティには責められない。人狼が象を襲ったという自分の推測は場違いだったのだ。
 祝福後は人狼が殺害出来る人数が増える。だから昨夜ニルマラとスレーシュが殺された。

「祝福後は1日につきひとりずつ人狼の殺害可能人数が増えるが、その時いる人狼の数が上限だ」
 アッバースはルールの書かれた紙を叩く。
「だから昨夜の時点での人狼はふたり。実際ヴィノードたちもナイナもふたりの『人狼』を見ているしな」
「……」
「それから今日は『変成狼』でひとり人狼が増えている」
「……っっ……」
 誰かが声を漏らした。
「だから人狼の最低人数は3人。この場合は、」

・人狼3 村人6
・人狼3 象1 村人5
・人狼3 象2 村人4

「の3パターンになる。これに、」

・人狼4 村人5

「を加えた四つの可能性しかここにはない。ラジューが人狼である以上、」
 本人は首を横に振るが、
「俺たちの部屋全員が人狼ということはない。ナラヤン、どこか間違ってたら教えてくれ」
 彼は時折指を折って少し考えていたが、
「その通りだ。そうか、君は本当に人狼じゃないんだ」
 良かったとナラヤンの頬が緩む。

「なら言うよ。人狼はスディープだ」
 いっせいに視線が彼に注がれた。当惑の目で彼は首を横に振る。
 アッバースは腕を組んで黙り込んだ。
「それなら残りの人狼はイジャイってことになる」
 指摘したアディティに、
「なんでだよ! 俺も人狼じゃねえよ。俺たちの部屋からは昨日誰も外になんて出なかったて言っただろっ!」
 唾が飛ぶ勢いでイジャイがわめき散らした。
 4号室の証言によればアッバースは12時50分に時計を見た時までは起きていた。ルチアーノは自信があるのは12時半まで。イジャイとスディープは寝たり起きたりで何時とは言えないが部屋への出入りには気づかなかったとしている。

「消去法。悪いけど、体型から。ルチアーノだったら背でわかると思う」
 独立系で殺戮に手をかけていない人狼がラジューなら、虎面と猿面の人狼は4号室だ。180越えのアッバース、自称160(だが少し足りないとアディティは見ている)のルチアーノなら体格が目立ち過ぎる。残りのイジャイとスディープは男子として平均的な身長だ。
「ぼくも人狼じゃない。本当だよ」
 スディープが泣き出しそうな声で訴える。
「アッバース。君を信じる。なら部屋のどこかに人狼だけが出入り出来る別の通路がある。その他に何か可能性は?」
 前に言ったのと同じことをナラヤンが訴える。
 同室の人間に気づかれないというなら、例えば、
「壁やクローゼットの中、ベッドの下に抜け道があるのかもしれない。上下は確かめられないけど壁二方向は外から調べられる」
 アディティは言った。
「ナラヤン。それとヴィノードも立ち合ってもらえるか」
 アッバースの求めにそれぞれ了承する。
 寝室は奥に窓、外壁に面するのが一面。後の二面は廊下と隣り合う。
 隠し扉の類があったなら同室者が気づかなくても仕方がない。アディティがこの仮説に納得出来るのは今も不明なスティーブンの死の原因だ。彼は早いうちにこの手の通路に気付き、どれかで外に出てしまい戻れなくなったのではないか。


 沈黙が落ちた広間でアディティは言った。
「後は朝ご飯の後でもいいんじゃない? ただ、そのご飯のことで私とナイナから知らせておくことがある」
 聞いた男子はここまでとは別に、ある意味「命に関わる」問題に直面した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...