リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

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第6章 狼はすぐそこに(6日目)

6ー28 光

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「名前、両親の名、住所を言いなさい」
「ルチアーノ、両親はいません。孤児です。身元引受はー」
 修道会経営の福祉施設の名と住所を述べる。そういえばひとりこの境遇の生徒がいたとラクシュミは思い出した。
 ひとりずつ他の生徒から離れた壁際へ寄せ、尋問する。
「もう『リアル人狼ゲーム』は終わった。これは警察の取り調べだから正直に答えなさい。君のゲーム内での役職は?」
 ルチアーノは何か考えを廻らせ口を開かない。
「隠さずに答えなさい。村人、人狼、象、その他の陣営はあった? 君はどこ?」
「陣営はその三つで、俺は村人です」
「ただの村人? それとも何か役職があった?」
「占星術師です」
 清涼感漂うハーブにわずかに苦味が混じるシャンプーの香りを思い出した。
 ゲーム会場となった館内に備え付けられていたアーユルヴェーダのヘアケア商品。皆同じものを使い同じ香りをさせていたのに、なぜかあの眼鏡の日本帰りが思い出された。
 この少年はあの時のクリスティーナと同じ役職だ。危険度の高い役だが、
(よく生きていた)
 だがこちらも訊かなければならない。
「ここにいる間に君は誰かに手をかけて殺した?」
 人狼でなければ夜中には殺さないだろうが、会議後の処刑で手をかけたかということだ。
「それは票を入れてということですか。それとも、直接殺したのかということでしょうか」
「直接殺したか。法が裁くのはそちらだ」
 票を投じたカルマは自ら受け止めるしかない。
 クリスティーナをカルマをラクシュミは受け続けている。
「そういう殺しはしていません」


・ナラヤン
「役は、『人狼』です」
(殺人を犯したのかと確認されて)
「はい。殺しました」

・スディープ
「『子象』という役でした」
「殺していません」
 ぶるぶると首を横に振った。

・イジャイ
「『兄弟』です」
「殺しませんでした」

・アッバース
「ええと、今朝までは『村人』で朝5時の時点で『人狼』にされたんですが、どう説明したらいいのか……」
(「変成狼」かと聞かれ)
「そうです。よくご存知なんですね」
「いっさい殺していません」

・ヴィノード
「『村人』です」
「してません、殺人なんて」

・ナイナ
「『村人』でした」
「殺してないです」

・アディティ(極度の緊張からと思われる失神から脱して首に手当てを受けながら)
「陣営は『村人』、私の配役は『兄弟』です。パートナはチャンダでした」
「殺していません」

 ラジューはこれらに答えなかった。

 嘘を言った生徒は、後ほど他の生徒の証言と押収データから事実が暴露されると捜査官から強い叱責を受けた。

ーーーーー

「アッバース君が少しだけ伝えたいことがあるとのことだ」
 応じるか、と車の中で警官に言われ頷く。
 ナラヤンの座る後部の窓の外に警官にともなわれたアッバースがやってきた。顔を見るなり小さく笑う。警官たちの車のライトだけが照らす闇の下では作った笑顔なのかよくわからない。
「俺、変成狼だったんだ。最後は余裕がなくて俺とお前が生き残ることだけしか考えられなかった。成功したみたいだな! 褒めてくれ」
 親指を立てると、
「元気でな」
 もういいです、とすぐ背を向けて去る姿をナラヤンはオレンジの光の中に見送った。久しぶりの木々と土の匂いが窓から流れ込む。
(……)
 友人はとっくに知っていた。自分とアッバースの歩む道が別れてしまっていたことを。
 手錠が手首に重い。その上かけられた荒縄に自分のこれからの扱いを悟る。
 頬に涙が落ちたのは車が走り始めてからだった。


 「人狼」の監視、女子棟見回りと忙しく、料理の関係からもベジとノンベジは別に行動することが多かった。
 自分はスティーブンの真似をしている道化じゃないかー
 話しかけた時、これが友人としての最後の会話になるかもしれないとアッバースは覚悟していた。
 ナラヤンは人狼めいたことを言葉にも表情にも出さなかった。寂しかった。
 ーもうこいつは俺の方に戻って来ない
 さらりとアディティの提案を耳元で知らせた。

 出来る限りのクラスメートを助けるーアッラーに誓ったのだから真実だ。
 人狼にされようが変わらない。だが優先したのは自分とナラヤンの生き残りだ。数のことだけならナラヤンを処刑しろと自分が主張すれば票は効率的に集められただろう。
 出来なかった。
(小さな声だって、足音だってわかるんだぜ)
 友達だろ?

ーーーーー

「意外だったのは、ライフルの弾がかすった時よりナイフが擦った方が痛いということですね」
「わたしはライフルには撃たれたことがないので」
「私だって警察に入ってからはありませんよ」
 クリシュナンに軽口を叩いてから自分の車に戻る。
 乗せているのはナイナ。某海運会社社長息子の婚約者で自身も社長令嬢という最重要生徒だ。
「これから全員、病院でご家族と合流して診察を受けてもらいます」

 夜の幹線道路を走りつつラクシュミは思った。
 この後は、警察官という地位も弁護士の娘という立場も邪魔になるー
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