リアル人狼ゲーム in India〈リターン&リベンジ!〉

大友有無那

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第7章 旅立ち

7ー9 人狼たちの時間5(5日目夜1)

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〈5日目夜〉

 目まぐるしく襲い来る良いことと悪いことに人狼は翻弄された。


『最初は「祝福」だ』


 PCでいつもの配役画面の次、昨夜「聖者」から「祝福」がかけられ今夜は2人まで殺害出来る、この後1日にひとりずつ、人狼の最大数を限度に殺害可能人数が増えると告げられた。
 現在の生存者は13人。うち人狼は3から5人。
 その調子で殺せて投票でも人狼が引っ掛からなければ早ければ明日の夜にも人狼の勝利だ! 算段しナラヤンは浮き足だっていた。
 バタン!
 あり得ない音が部屋に響く。
 ドアの開閉音だ。PC画面の時刻表示は23:07、もうパソコン前から離れても大丈夫だ。
 幕から頭を出し立ち上がって見回したがバーラムの姿はどこにもなかった。


「酷い! これで人狼は私たち2人になっちゃったってこと?!」
「朝の5時には、つまり数時間でまた人狼は増える。プラマイゼロだから」
 変成狼について指摘しナイナを慰める。
 人狼と村人の戦いは人数勝負、わかっていておそらく5日目脱出権を行使したバーラムにナラヤンも憤りを感じたがどうしようもない。

 祝福の事実を知るまで、ナラヤンは昨夜象を襲ってしまったと考えていた。
 対象として口にしていたのはラジューだ。彼が象だから5号室の扉は開かず、そこで人狼の仕事完了となり他の部屋のドアも開かなくなったのではないか。
 昼間アディティも人狼は象を襲ったとの仮説を話した。
 本物の武士が隠れていてラジューまたは5号室住人を守った可能性もあるが象説の方が現実的な気がした。

 アディティの推測を受けたイジャイは「人狼がずっと象を襲い続ければ殺さなくて済む」と提案してきた。頭の中で検討しすぐ却下した。
 ここまで殺してきたのにとてもやってられない。
 ナラヤンとナイナが広間でまず話したのは祝福のこと、次にイジャイの提案についてで後者に乗らないでことですぐ意見が一致した。


『これでわかると思う。ぼくの頭はもう「人殺し」の思考回路になっていた』


 この夜の標的探しにはまた面倒な条件が加わった。
「ラジューは駄目だよ」
「わかってるよ」

 ラジュー=象は夜の襲撃で殺せないなら投票で処刑するしかない。ダウドの復讐も兼ねてナラヤンは今日初めて「人狼」の占い結果を出した。
 対してラジューは一昨日1階シャワールームの通気口に隠したはずの「人狼衣装」を持ち出して対抗した。心臓が縮む思いがした。
 あらかじめアッバースも味方につけて反撃したがラジューはしぶとかった。


『当たり前だ。何も知らなかったぼくたちとは違いラジューは何十回とリアル人狼ゲームを見て、組み立ててきたんだ』


 どの程度工作があったのかは知らないがマリアもラジューの味方についた。
 女子で役なしの村人(と主張する)のがマリア以外ふたりだけと気づいたナイナの機転で、マリアはアイコンについて嘘を吐いている、人狼だ! と糾弾すればニルマラも即座に話を合わせた。

「上手くやったね」
「ニルマラ、一瞬ぽかんとした顔したけどすぐ『恐~い!』って感じの演技に切り替えてくれた。ついてこなかったらどうしようかと思った」
 だが占いで人狼を出したラジューより先にマリアが処刑されてしまった。
「まさかマリア本当に人狼だったんじゃ……」
 最後に潔白を主張しなかったのはマリアだけだ。
 それなら貴重な味方の数を減らしたことになるがー
「違うよ。あの子、いっつも自分の言いたいことをきちんと主張出来ないの」
 アディティやシャキーラ相手なら無理だったろうとナイナは返す。


 人狼と占ったラジューは襲えない。自分が偽占星術師だとばれてしまう。
 昨日は象への襲撃(でも武士の守り)でもなく祝福だとわかった今、余計な枷になってしまったが今更どうにも出来ない。

「今夜はルチアーノだ」
「ないって! 4号室は人狼部屋のスケープゴートでしょう?」
「上手くいけば明日の夜にもゲームを終えられる。それまでにあいつを殺しておきたい。スティーブンの友人としてだ」
 ナラヤンはナイナを押し切って4号室に向かった。

 キープレートのランプが緑に変わってまずほっとする。
 だがドアを開け中に電気が点いていないのがまず異例だった。
 今まで侵入した部屋は皆電気は点けっぱなしで警戒していたからだ。
 ドア横のスイッチを入れてナラヤンは絶句した。誰もいない。ルチアーノのベッドは上掛けがタオルで膨らませてあり奥のアッバースのベッドは布団そのものが寄せられ、後二つは平らだ。ベッドの下、クローゼット、カーテン向こうと右手にナイフを持ち神経を尖らせつつ捜索するが人の気配がない。
 あり得ない。そんなはずはない。
 動揺のままに廊下のナイナを招く。
「いない」
 再度隅々まで探し回る。結果は同じだった。
 それならもうここで時間の無駄使いはしない。
「行こう!」


『焦りもあってあの時ドアまで足を速めて進んだのはぼくも覚えている』


 ルチアーノは自問する。
(そこで俺が殺されていたら)
 その方が良かったのか?
 いや。それではあのリアル人狼ゲームの首謀者野郎、未だ海外に逃げているY・K・ミッタルを喜ばせてしまう。
(俺を殺せなくてざまあみろだ!)
 隣でアッバースがさりげなく自分の様子を気遣っているのに気付き、軽く首を傾けて笑んで見せた。



 ナラヤンたちが二番目のターゲットに決めていたスレーシュの5号室の中は明るく部屋がよく見渡せた。
 左手のヴィノードは足だけが結ばれていてその前に立つのがスレーシュ、だが奥に四肢捕縛されたラジューがー
(しめた!)
 ナラヤンは思った。
 自分が偽占星術師だと知っている彼はなるだけ早く始末しなくてはならない。
 象でなければ殺せるはずだ。「人狼」なのに殺された理由は後で考えよう!


『衝動的にぼくはラジューのベッドに向かった。スレーシュが上から全身で庇ったのを見てすぐぼくは卒倒した。重みに気付くとスレーシュはぼくの上に乗っていて手が面に延びるのが見えた。ここで顔がバレたら……。一瞬のうちに処刑されたマリア、シュルティ、会議で人狼に向ける皆の目などが頭に浮かんで流れた。見上げるとスレーシュの首がいやに白く光って見えてどこが急所かがはっきりわかった。スレーシュは面を取ることを優先してぼくの手を押さえていなかったから、右ポケットからのナイフで簡単に彼の耳下から首を切り裂くことが出来た。全て神様が導いてくださったと思っていた』


 撹乱のため、ナイナには別の面を着けてドアから一瞬顔を覗かせてくれと頼んであった。ナラヤンの希望で振り回した彼女だがきちんとそれもやってくれた。
 一度広間に戻り水場でナイフを洗う。
「ニルマラをやろう。これは私に任せて」
 ナイナの提案に最初は躊躇した。
「ニルマラは偽物だったのか?」
「ううん。本物」
 PC画面を固定して5分過ぎに「漂泊者」の配役ページを見せてくれたと説明する。
「でもどうでもいい」
 捨て鉢な言い方に眉を顰める。
「考えてみたらどちらでも同じだったんだもの」
 ナイナは静かに説いた。
「漂泊者は人狼から利益を得る。逆はない」
「……」
 人狼が勝利した時に漂泊者も勝ちとなる。よって漂泊者は人狼に依存する。
 だが人狼の勝利には関係ない。漂泊者は村人カウントとなるのでむしろ妨げになる。夜外に出られず人狼の「仕事」も手伝えない。
「この後ひとりも襲われたことのない部屋が疑われるでしょ。4号室のことは何だか不気味だけど、今夜は手をつけなくてよかったと思う。後はアディティとシャキーラの10号室」
 ナイナの7号室はコマラがヤトヴィックの後を追い、ミナは3日目脱出権で行方をくらましたまま誰も襲われてはない。「人狼部屋」だからだ。
「君には『村人』だって占い結果は出してある」
「それはありがたかったけど念には念を入れておきたいの」
「殺された人間がいないのはうちの部屋も同じだ……」
 気が落ち込むが、
「あなたは『占星術師』としての信用が揺らがなければ大丈夫」
 ナイナは明るい調子で力づけ、ニルマラは自分が殺すと再度主張した。
「出来るの?」
「隙をつけば大丈夫!」


『これは止めなければならかった。女の人にそんなことをさせてはいけない。
空っぽの4号室、スレーシュに顔がばらされる寸前だったこと、流れた血に気持ちが混乱かつ興奮してまともに考えることを止めてしまっていた。少しは楽が出来ると思ったのも正直なところだ』
 言葉を止めてからナラヤンは悲痛な目で繰り返す。
『最悪の選択だった』
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