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父は車で通勤していた。だから、家にいるかどうかは車があるかでわかった。アパートの駐車場は、スペースもそう多くなく、建物に近づく間に見渡すことができた。父は休みの日も車でしかでかけなかった。私が遅く家に帰り、父の方が早く帰っていると、父はお風呂を洗って、そのままリビングで新聞を広げていることが多かった。私は冷蔵庫から夕飯の材料を取り出し、いつものようにありもので炒め物を作った。私が大学に入学して独り暮らしを始めたあと、父は料理を始めたらしい。幸い三日坊主にもならず、続いたようだ。父とはあまり連絡をとらなかったが、たまに帰ると、キッチンの汚れ具合から察することができた。私は数ヵ月に一度は実家に帰り、掃除をした。父はその間新聞をみていることが多く、少しやつれた顔をしていた。私は掃除を終えると、夕飯を作り食べずに帰った。私は大学にストレートで入学できたし、留年することもなかった。何事もなく進む人生。父と話すことはほとんどなかった。
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