誰の目にも輝きを

ヨージー

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 彼女は私を見て「見つけた」と言ったように見えた。図書室には今、彼女と私しか居ない。私は他に誰か居ないか周囲を見回してしまう。彼女は私に向かって歩き出していた。彼女に再び視線を戻したときに予想より近づいてきていて、思わず後ずさってしまう。けれど、彼女の方が早く近づいてきていて目の前のとても近いところまできていた。
「あなたが噂の図書室の幽霊ね」
 幽霊、その言葉の意味を捉えることに時間を要した。そうか、私は「図書室の幽霊」そう噂されていたのか、そう思われても仕方ない、だって私は。その瞬間彼女が私の前髪を片手で持ち上げた。
「幽霊っていうか、あなたもったいない」
 彼女は私から離れて思案顔を浮かべている。私は前髪をもとに戻そうと手をかけながら、状況が分からず頭を悩ませた。今彼女はなんといったのだろうか。
「あなた、幽霊ではなくて、うちの学生でいいのよね?」
私は考えのまとまらないまま彼女を見つめ返した。
「口が聞けないの?」
「え、あ。話せる」
「なんだ、やっぱり幽霊じゃないじゃない」
「幽霊?」
「私は芦屋恭子、よろしく」
「南洞弥伊子です」
「クラスで幽霊の噂があって調べに来ていたの。でも、もうそんなことはどうでもいいわ」
「え、はあ」
「弥伊子、これから時間ある?」
いきなり呼び捨てにされてまた困惑で頭が回らない。芦屋恭子はそんな私に気を使わずに私の腕をつかんだ。
「これから私と出掛けましょう」

 私は言葉を返せないまま芦屋恭子に手を引かれ、学校を離れた。確か図書室は三階だったはずだが、いつの間にか校門まで連れてこられていた。
「おっと、弥伊子って自転車?」
「えっと電車」
「オッケー」
そう言うと芦屋恭子は再び、私の手を引いた。
「ちょ、ちょっと待って」
私は芦屋恭子の手を振り払った。
「どこに行くの?」
「私の家」
「え、なんで。どこにあるの?」
「二駅くらいのものよ。寄るだけだしそんなに変わらないんじゃない?」
「何が変わらないの?」
「帰宅時間」
「え、と。なんで?」
「うちの方が道具が揃ってるからよくできるのよ」
「なにが?」
「あなた鏡見たことある?」
「なにを」
流石に酷いものの言い様に弥伊子は腹が立った。私だって、それなりに女子なんだ。
「私があなたを幽霊なんて言われなくしてあげる」
「なんの話をしているの」
「察しが悪いなあ」
芦屋恭子は少し思案したあと視線を上げた。
「まぁ、今日はいいわ」
弥伊子はやっと解放されると思い、ふっと安心して息を漏らした。その隙をつかれた。また芦屋恭子が私の腕をつかんで歩き始めた。今度は学校の中に向かって歩き始めた。
 私は引きずり込まれるようにして教室に入った。私のクラスではない。彼女のクラスだろうか。芦屋恭子が私を席のひとつに座らせると彼女の鞄を机に置いた。芦屋恭子の鞄からはあれよあれよと様々な道具がでてきた。彼女の鞄は道具が出尽くすとぺしゃんこになってしまった。教科書はどうしているのだろうか。
「これが私の商売道具。普段は有料だけど、初回だし無料にしてあげる」
そう言うと芦屋恭子は道具箱のふたを開けた。蓋の裏側には小さいながら鏡がついており、私の普段の顔がうつりこんでいた。
「あなたのその前髪はなんなの?」
「なにって言われても」
「本当なら切ってやりたいところだけど、知らない教室で髪の毛散らすわけにもいかないし、今日は諦める」
「切ってやりたい」と言ったタイミングでハサミを持ち上げた芦屋恭子の様を見て弥伊子はヒヤリとした。
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