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清美の母は茜という。なんだか茜よりも名前が古風につけられたな、と親戚のおじさんにいわれたことがあったが、母は自分になかった厳かなところを名前から授けたかったと応えていた。母は若い頃にわたしを授かっていて、内心どこか、それを後ろめたく思っている縁があった。母はそのせいか一昔前の母親像を演じたがるところがあって、家事を手広く手掛けていた。清美は自分が独り暮らしをはじめてから、母がいかに、様々なことに取り組んでいたかに驚かされた。とても自分では真似できない、と感じるものが多かった。たぶん、だからこそ母はいつも手荒れしていた。わたしが覚えている母の姿はいつも背中向きで、いつも水仕事をしていた。母の記憶には水の流れる音が連なって思い出される。ときには台所で、ときには浴室で、ときにはベランダで、母は様々なことを行っていた。清美の記憶に祖母はいない。物心ついたころには亡くなっていた。といっても父方の祖母は存命だ。ただ、遠方であまり記憶にない。この場合の祖母は母方の祖母を指している。つまりは茜の母だ。母は高校生のころ、交通事故にあっている。母の母、茜の両親は二人ともその事故でなくなっている。茜はその後、入院した病院で清美の父とであっている。
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