すみっこ屋敷の魔法使い

うめこ

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第八章:星が降る夜に、祈りを

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 ちちち、と窓の外で鳥の鳴く声がする。

 カーテンの隙間からするりと光が差し込んできて、光がモアのまぶたを撫でる。ちかっとまぶたの裏が明るくなって、モアは目を覚ました。ころんと向きを変えてみれば、まだイリスは眠っている。


「……」


 じ、とイリスの顔を見つめる。

 眠っている彼は、どこかあどけなくて可愛らしい。ずっと見ていたいな、と思いたくなるような、眠っている彼。

 ……昨日は、一緒に彼と踊った。きらきらと光る夢のなか、彼とともに。

 思い出すだけで、顔がポッと熱くなる。嬉しくて嬉しくて、口元がゆるむ。この表情を万が一彼に見られたら恥ずかしいと思って、モアは手で口元を覆い隠す。


「ん、んん……」


 イリスが起きそうだ。

 こんなにだらしのない顔を見られたくない。そう思って、再びモアはころんと寝返りを打った。彼に背を向けて、そっとベッドから這い出ようとすると、ぐ、とお腹のあたりに圧がかかる。


「もあ……? ん、……だめ、いっちゃだめ……」

「ふェッ!?」


 イリスは寝ぼけているのか起きているのか。モアのお腹に腕を回して、ずるずる~っとモアを引き寄せて抱きしめる。そして、ぱふ、とモアの頭に顔を埋めてしまった。

 モアはガチガチに固まって、口元をぎゅっと手で押える。変な声が漏れてしまうかもしれない。大声をあげてしまえば、彼は起きてしまう。

 イリスの手がもぞもぞと動いた。手はゆるゆるとモアのお腹のもとを何かを探しているように動く。やがて手はモアの手を見つけると、ぎゅ、と優しく掴んで指を絡めてきた。


「あ……」


 どきどきする。すごくどきどきする。

 モアは顔を真っ赤にしながら、ぐっと動かないようにこらえていた。

 ずっと、このままでいたい。彼の温かさを全身で感じられて、すごく、幸せだ。


「んん~……あれ?」


 目覚めを手探りしているような彼の声が、ぱ、と意識を取り戻す。


「あっ……モア。えっと、ごめん……苦しくなかった?」

「……いえ。大丈夫です……」

「あはは……おはよう、モア」

「おはようございます……」


 イリスは、顔を真っ赤に染めたモアを見て申し訳なさそうに頭をかく。

 ほんのり、イリスも顔を赤くしていて。モアは恥ずかしくなって、ぱっと彼から目を逸らした。
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