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Mille feuille〜たくさんのものが、重なり合って〜
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「――ごちそうさま!」
結局智駿さんは「美味い」とか「美味しい」とか、その類の言葉以外を発さず最後まで食べてしまった。いつもならゆっくりおしゃべりしながら食べるところだけど……相当お腹がすいていたのか、美味しいって思ってもらえたのか。ぺかっと笑っているところを見ると、後者なのかもしれない。ともかく嬉しくて、俺は照れてしまって「おそまつさまです……」ともそもそと言うことしかできなかった。
「梓乃くん、すっごく唐揚げ上手なんだね! 本当に美味しかった!」
「ありがとうございます、なんだかすごく嬉しいです」
「うん、本当に美味しい。最高」
「そ、そんなにですか? ふふ、じゃあまた今度作ってあげますね」
疲れているのかきらきらしているのかわからない目でまっすぐに見つめられて「美味しい」を連呼されて、さすがに恥ずかしくなった俺は、食器を片付けるという言い訳のもと智駿さんの前から逃げた。千切りキャベツの一本も残さず完食された皿を見て、思わずにやけてしまう。
「ちょっと休んだらお風呂に入ってくださいね。お湯もちゃんと溜めておいたので」
「溜めておいてくれたの? わあー……嬉しいなあ。今日はシャワーだけじゃ疲れがとれなそうで……」
いつもなら一緒に片づけをしてくれる智駿さんだけど、今日はその気力がないのかぽふんとまた寝転がってしまった。そうしているとそこで寝ちゃいますよ!といっそお風呂に引っ張っていこうと思ったけれど、食べてすぐのお風呂もあまりよくないかなと、思いとどまる。
皿を洗いながら、考える。こういうのっていいなあ……と。主夫になりたいというわけではなく、疲れているときに恋人が家にいて、思いっきり甘えることができる。そして俺はそんな恋人を思いっきり甘やかす。そんな関係が、いいなあと思ったのだ。
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