上 下
1 / 2

プロローグ

しおりを挟む
 浅見 愛アサミ カナは有名な進学校に通う高校2年生で、近所で評判の”優等生"。まじめで優しい良い子だと、みんなが口を揃える。そんな浅見 愛が”わたし”だ。友人たちはこれらの人物評価にプラスして、純粋で少し天然だと言う。

______________今日も私は、理想の”わたし”を演じている。






「ただいま、三月ヤヨイさん。」
「あら、愛ちゃん。おかえりなさい。」

三月さんは、私が暮らすマンションの向かい側に住むおばあちゃんである。たしか、私と同い年の孫がいると言っていた。まだ会ったことは無いが、三月さんの話を聞く限り相当のお祖母ちゃんっ子のようだ。

「そういえば、今日、愛ちゃんの住んでいるマンションに男の子が引っ越してきてたわよ。夢月ムツキや愛ちゃんと同い年くらいに見えたけど、不良のようだったから一応気を付けるのよ。不良でも、夢月みたいにへたれだったら安心なんだけどねぇ……。
やっぱり、女の子の一人暮らしは心配だわ。何かあったらいつでも家に来て頂戴ね。」

夢月というのは、三月さん孫のことである。不良なのだが、
へたれなのだそうだ。
お祖母ちゃんっ子のようであるし、心優しい少年なのだろう。……なぜ不良になったのか甚だ疑問である。へたれなのに。
そんなことより、引っ越してきた人がいるとはどういうことだろうか?現在、マンションの部屋は全て埋まっているはずである。どこかの部屋に居候するということだろうか。まあ、私には関係のないことなのだが。

「ありがとうございます、三月さん。
このマンションはセキュリティがしっかりしてるから大丈夫だと思うんだけど……。
何かあったら相談しますね!」

そういえば、父と母が一人暮らしを許可したのは、このセキュリティの存在があったからだったか。

「ええ、いつでも相談してちょうだい。」
「はい!」
「ふふふ。あら、もうこんな時間。長々と引き留めてしまってごめんなさいね。」
「全然大丈夫ですよ。」
「愛ちゃんはこんなおばあちゃんの話に付き合ってくれて嬉しいわ。」
「わたしも、三月さんと話ができてうれしいです。」

……このような時、会話をきりあげるタイミングが未だにつかめないな。今日は、あと何分ほど話すだろうか。私は問題ないのだが、三月さんは夕飯の準備はいいのだろうか?





_____________________時計を見ると、18:30だった。お腹すいた。
しおりを挟む

処理中です...