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「ツルギ、聞こえるか?」
「問題無し」
「ターゲットが予定とは違う場所に向かった」
「場所は?」
「ズーテンだ」
「予定とは真反対の方向だけど」
「急遽変わったんだ。臨機応変に対応してくれ」
「了解。ちょっと待って」
ツルギはスナイパーのスコープで建物を覗き入り口に立っている見張りの人間の頭を撃ち抜いた。撃ち抜かれた人間は膝から崩れ落ちて地面に伏した。
サイレンサーのおかげで敵にバレることなく1人を始末した。そして、続け様にもう一人の頭も撃ち抜く。同様に膝から崩れ落ちて地面に伏した。
「任務に戻る」
「あぁ、頼むぞ。ターゲットがズーテンへ辿り着く前に始末してくれ」
「了解」
ツルギは無線を切るとスナイパーを慣れた手付きで片付け乗ってきた車の後部座席に乗せる。そして車に乗り込みエンジンをかけると車を発進させた。建物を横切ったが見張りを倒しておいたおかげで敵に、バレることなく目的地に向かえた。
ツルギたちは国内で不穏な行動を見せているテロ組織を監視していた。今日、そのテロ組織のトップが会合のために動くと情報が入りこの機会にトップを暗殺しようと企てた。だが、この交渉の場所が急遽変わり足止めを喰らった。ここを逃せば次にしっぽを出すのはいつか分からない。全ての顛末はツルギに託された。
「こちらツルギ。ターゲットを確認」
「おいおい。マジか、早すぎだろ。あれから20分しか経ってねぇぞ」
「……許可は?」
「お前のタイミングで撃て。許可なんていつも取ってねぇだろ」
「了解」
ツルギは法定速度を無視したスピードで車を走らせた。それも道ではなく舗装されていない道なき道を突っ走ってきた。ドライブテクニックはもちろんのことだが、目的地点から少し離れたところで停車したため間に合うことが出来た。ツルギの判断力によって事なきを得た。
交渉地点から2キロ離れた場所でスナイパーを覗く。スコープにはターゲットと交渉相手が捉えられていた。
ツルギは風や距離を全て計算して引き金を引く。銃口から発射された銃弾はツルギの予想通りの軌道でターゲットの頭を撃ち抜いた。
「ターゲットの死亡を確認」
「よし、よくやった。気を付けて帰ってこい」
「交渉相手は?」
「そいつは末端もいいところだ。始末したところで何も変わらない」
「了解」
ツルギたちのことをチェスロバ国民は知らない。彼らの存在は公にはされず極秘とされている。組織に名前は無いが、知る者からは秩序の番人という意味を込めてタルロスと呼ばれている。ある者からは闇そのものだとも言われる。ツルギたちは呼称などどうでもいいこと。任務を完璧に遂行する、それしか頭に無い。国防の最先端を担い、未然に有事やテロを防ぐ彼らの頭の中は国を守るということしか頭に無いのだ。
完璧に遂行する組織が故に泥沼に引きずり込まれることとなる。
――――――――――――――――――
「今回の任務は?」
「まだ無い。そんなに任務ばかり話さなくてもいいだろ」
「日が空くと感覚が鈍る」
「たまには休め。お前ここ最近任務ばっかだったろ、ほら飲め」
「酒は飲めない」
「気にすんなよ。今更法律なんてどうでもいいだろ、散々破ったんだから」
「そういう問題じゃない。酒はホントに飲めない」
「嘘つけよ。任務失敗した時ヤケ酒してたくせに」
「あれ以来酒は飲んでない」
洒落たバーにツルギと無線で話していた男が隣合って座っている。このバーこそがタルロスのアジトだ。ツルギの隣に座っている男は右目に眼帯を付けており特徴的な見た目をしている。
ただのバーであるため気付きようがない。それに客が入ることも滅多に無い。
「なんだよ。でも、たまにはゆっくりしろよ。倒れても知らねぇぞ」
「分かってる。ちょっと寝てくる」
「おう、休め。ステラ、同じのもう一杯」
「はい。ゼパムさん今日はよく飲みますね」
ツルギはバーの2階にある休憩室で仮眠を取りに向かった。
ゼパムはグラスの酒を飲み干すとマスターの女性に同じ注文をした。
「そりゃそうだ。いつテロを始めてもおかしくなかった組織のトップを殺ったんだ。しばらくは身動きがとれねぇだろうな。これでしばらくは落ち着けるわけだ」
「トップを殺しただけで変わりますかね?」
「あの組織はトップが全てを掌握していた。指揮官がいなくなった軍隊は統率が取れない、それと一緒だ。あいつが掴んだ情報だから間違いは無いさ」
「それなら多少は落ち着きますね」
「あぁ、多少はな。この国はテロリストが多いからな。いつどこでテロが起きたって不思議じゃない」
「大変な仕事ですよね」
「それはお前もだろ。進んでんのか?例の組織の諜報」
「御心配なく。問題無いです」
マスターのステラもツルギ、ゼパム同様タルロスの構成員。だが、二人の違うのは武力行使をあまりしないこと。
ゼパムやツルギは武力行使の任務が主だが、ステラは諜報に長けた構成員。やむを得ない場合だけ武力行使をする。
任務が無いときはバーのマスターとして過ごしている。
「おう、コバン。久しぶりだな」
「ゼパムはん。いらしてはったんですか」
「お前のおかげでなんとか完遂出来た。ありがとな」
「それが仕事ですから、任せて下さい」
関西弁のような訛り口調で入ってきたのはコバン。こちらも同様にタルロスの構成員。タルロスの構成員はツルギ、ゼパム、ステラ、コバンの4人だけで構成された組織。極少数ながら精鋭揃い。普段は滅多に揃うことない4人だが奇遇にもアジトに居合わせた。
先ほどの任務ではコバンが内部に潜入して会合の情報を掴んでいた。
「ツルギ君はまた任務でっか?」
「あいつは上で寝てる。ここ最近まともに休んでねぇからな」
「そうですか。ツルギ君無茶し過ぎる時ありますからね」
「最近のあいつは度を越してる。5日も寝ないで任務をこなしてした時もあった」
「疲労で立てないゆうのに匍匐前進で任務行こうとしてましたもんね。そんな状態でも任務を完璧にこなしてくるんですもん。あの時は人ちゃうんか思いましたわ」
「まぁ、あいつは俺らとは違うからな。そういうのもあんだろ」
「ですかね」
コバンはゼパムの隣に座りゼパムと同じ酒を注文する。乾杯するとツルギの話をし始めた。
ツルギはそんなことも知らずに2階で仮眠を取っていた。
「もう1年前か。ツルギが初めて任務をミスってから」
「ですね。あれ以来ツルギ君は任務しか考えなくなりましたもんね」
「あぁ。あの失敗は、仕方ないことではあったんだがあいつは未だに引きずってる。過去を忘れるように任務をこなしてる」
「今のツルギ君見てると任務を失敗するのは後にも先にもあれだけやろなって思います」
「同感だ。あいつは任務の失敗なんて2度としないだろうな」
「心配ですよ。最近の彼見てるといつかぶっ倒れるんちゃうかって」
「常人ならもう倒れてる。でもさすがのあいつでも体のSOSは見過ごさないだろ。倒れたら元も子もないってわかってるはずだ」
ツルギは1年前任務を始めて失敗した。それ以来取りつかれたように任務に没頭し、完璧に遂行する。まるで機械のようになった。
そんなツルギをみんなは心配しているのだが、ツルギは心配を跳ねのけるように任務をこなす。人間を辞めているツルギにどう対応すればいいのか分からなくなっている。
「あれ以来酒も飲んでないですもんね」
「あの時の酒の飲み方は何かを忘れようとしてる人間がやることだった。なんでもいいから忘れたかったんだろ」
「で、飲み過ぎて次の日しょっちゅう吐いてましたね。吐きすぎて任務どころじゃなかったって」
「さすがのあいつも酒の飲みすぎには勝てなかったわけだ」
「あの子にも意外な弱点ってのはあるんですね」
二人の晩酌は朝まで続いた。朝日が差し込むとコバンは2階で仮眠を取りに向かった。
コバンと入れ違いでツルギが降りてきてステラと一緒に店の片づけを手伝う。
ゼパムは酔いを覚ますため外に出ていた。外に出る際はフードで口元を隠す。タルロスの原則だ。
「……騒がしいな。何が起こる?」
外に出たゼパムは静寂な街を歩いて違和感を感じ取った。素人には静かな街にしか見えない。
だがゼパムは何か不吉な事が起きると確信していた。状況を伝えようとバーに戻ろうと引き返す。
「リクー!!」
「ビンゴか。恐ろしいな」
静寂な街に女性の悲鳴が響き渡った。ゼパムは自分の勘が当たったことにため息をつくと声のした方向にすぐさま向かった。
――――――――――――――
~AM5:00~
「嫌だ!離して!」
「おいおい、朝から活発だな」
ゼパムが声のした方向に向かうとそこは何も無い空き地だった。そこで男二人が女性を連れ去ろうとしていた。男二人の指には指輪がついていた。
足音を立てずに男の背中まで忍び寄り声をかける。
「誰だ!てめぇ!」
「何やって……ん?」
「邪魔すんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」
「威勢はいいな。だが、その徽章をつけてんなら手加減はしねぇ」
男たちの胸にはバッジがついていた。そのバッジはタルロスが追っていた組織のものであった。
いきり立つ男たちはゼパムに殴り掛かる。ゼパムは簡単に拳を交わすとがら空きの胴に蹴りを入れる。
蹴りを喰らった男は数メートル先まで吹っ飛ばされた。ゼパムの蹴りにより男の内蔵に大きなダメージが加わり立つことは出来なくなった。
その様を見ていたもう1人の男は目を丸くした。よそ見した瞬間を見逃さなかったゼパムは蹴りを右側頭部に喰らわす。
男の首が衝撃で完全に折れ即死、数メートル先の壁に衝突し完全に動かなくなった。
「怪我は?」
「大丈夫です。それよりも弟を!!」
「弟?さっき叫んでた名前の人か?」
「はい。リクって言ってまだ8歳なんです」
「こいつらの心当たりは?」
「全く無いです」
「……一般人を無差別に狙うような奴らじゃなかった。こいつらじゃなくても街中でいくら朝とはいえいきなり拉致なんてしない」
「本当に無いんです!」
ゼパムの目には女性が嘘をついているようには見えなかった。この女性の弟が組織にとって価値のある人間というわけではない。なのに街中でいきなり拉致をした。不可解過ぎる。ゼパムの耳に近づいてくる足音が入ってきた。ここも危険になると感じ女性と共にバーに向かう。
「ついてきてくれるか?」
「弟を探さないと」
「それは俺たちが探す。今はついてきてくれ。あんたまで攫われるぞ」
「わかりました。あなたは誰ですか?」
「俺たちはタルロスだ」
「え?」
「ほら行くぞ」
ゼパムの予想通り街中に敵組織の包囲網が作られていた。バーは一番安心であるため身を隠すのにはうってつけである。敵に見つからないように細心の注意を払いバーに向かった。バーにはツルギしかおらず、ステラとコバンは見当たらなかった。
ツルギは見知らぬ女性のことを警戒し腰に携えている銃を取ろうとする。ゼパムが手で制止し、ツルギは渋々銃から手を離した。
「どうした?何があった」
「やつらだ。”輝く道”」
「あいつらか。でも、どうして急に?」
「待ってください!”輝く道”って何ですか?」
「”輝く道”ってのはルミノソっていうテロ組織のことだ」
「じゃあ弟はテロ組織に攫われたんですか!?」
「張本人連れてきたのか」
ツルギはやれやれと言った表情でため息をついた。ゼパムはそんなツルギを見てニッコリと笑った。
女性はバーを視線を目まぐるしく移動させながら眺めていた。
「みんな呼んでくれ。作戦会議だ」
「了解」
ツルギはそういうと2階に向かった。2階でステラとコバンは仮眠をとっていたようだった。
ゼパムは地面のカーペットをめくる。隠し扉を開くと女性と共に地下に入っていった。
「問題無し」
「ターゲットが予定とは違う場所に向かった」
「場所は?」
「ズーテンだ」
「予定とは真反対の方向だけど」
「急遽変わったんだ。臨機応変に対応してくれ」
「了解。ちょっと待って」
ツルギはスナイパーのスコープで建物を覗き入り口に立っている見張りの人間の頭を撃ち抜いた。撃ち抜かれた人間は膝から崩れ落ちて地面に伏した。
サイレンサーのおかげで敵にバレることなく1人を始末した。そして、続け様にもう一人の頭も撃ち抜く。同様に膝から崩れ落ちて地面に伏した。
「任務に戻る」
「あぁ、頼むぞ。ターゲットがズーテンへ辿り着く前に始末してくれ」
「了解」
ツルギは無線を切るとスナイパーを慣れた手付きで片付け乗ってきた車の後部座席に乗せる。そして車に乗り込みエンジンをかけると車を発進させた。建物を横切ったが見張りを倒しておいたおかげで敵に、バレることなく目的地に向かえた。
ツルギたちは国内で不穏な行動を見せているテロ組織を監視していた。今日、そのテロ組織のトップが会合のために動くと情報が入りこの機会にトップを暗殺しようと企てた。だが、この交渉の場所が急遽変わり足止めを喰らった。ここを逃せば次にしっぽを出すのはいつか分からない。全ての顛末はツルギに託された。
「こちらツルギ。ターゲットを確認」
「おいおい。マジか、早すぎだろ。あれから20分しか経ってねぇぞ」
「……許可は?」
「お前のタイミングで撃て。許可なんていつも取ってねぇだろ」
「了解」
ツルギは法定速度を無視したスピードで車を走らせた。それも道ではなく舗装されていない道なき道を突っ走ってきた。ドライブテクニックはもちろんのことだが、目的地点から少し離れたところで停車したため間に合うことが出来た。ツルギの判断力によって事なきを得た。
交渉地点から2キロ離れた場所でスナイパーを覗く。スコープにはターゲットと交渉相手が捉えられていた。
ツルギは風や距離を全て計算して引き金を引く。銃口から発射された銃弾はツルギの予想通りの軌道でターゲットの頭を撃ち抜いた。
「ターゲットの死亡を確認」
「よし、よくやった。気を付けて帰ってこい」
「交渉相手は?」
「そいつは末端もいいところだ。始末したところで何も変わらない」
「了解」
ツルギたちのことをチェスロバ国民は知らない。彼らの存在は公にはされず極秘とされている。組織に名前は無いが、知る者からは秩序の番人という意味を込めてタルロスと呼ばれている。ある者からは闇そのものだとも言われる。ツルギたちは呼称などどうでもいいこと。任務を完璧に遂行する、それしか頭に無い。国防の最先端を担い、未然に有事やテロを防ぐ彼らの頭の中は国を守るということしか頭に無いのだ。
完璧に遂行する組織が故に泥沼に引きずり込まれることとなる。
――――――――――――――――――
「今回の任務は?」
「まだ無い。そんなに任務ばかり話さなくてもいいだろ」
「日が空くと感覚が鈍る」
「たまには休め。お前ここ最近任務ばっかだったろ、ほら飲め」
「酒は飲めない」
「気にすんなよ。今更法律なんてどうでもいいだろ、散々破ったんだから」
「そういう問題じゃない。酒はホントに飲めない」
「嘘つけよ。任務失敗した時ヤケ酒してたくせに」
「あれ以来酒は飲んでない」
洒落たバーにツルギと無線で話していた男が隣合って座っている。このバーこそがタルロスのアジトだ。ツルギの隣に座っている男は右目に眼帯を付けており特徴的な見た目をしている。
ただのバーであるため気付きようがない。それに客が入ることも滅多に無い。
「なんだよ。でも、たまにはゆっくりしろよ。倒れても知らねぇぞ」
「分かってる。ちょっと寝てくる」
「おう、休め。ステラ、同じのもう一杯」
「はい。ゼパムさん今日はよく飲みますね」
ツルギはバーの2階にある休憩室で仮眠を取りに向かった。
ゼパムはグラスの酒を飲み干すとマスターの女性に同じ注文をした。
「そりゃそうだ。いつテロを始めてもおかしくなかった組織のトップを殺ったんだ。しばらくは身動きがとれねぇだろうな。これでしばらくは落ち着けるわけだ」
「トップを殺しただけで変わりますかね?」
「あの組織はトップが全てを掌握していた。指揮官がいなくなった軍隊は統率が取れない、それと一緒だ。あいつが掴んだ情報だから間違いは無いさ」
「それなら多少は落ち着きますね」
「あぁ、多少はな。この国はテロリストが多いからな。いつどこでテロが起きたって不思議じゃない」
「大変な仕事ですよね」
「それはお前もだろ。進んでんのか?例の組織の諜報」
「御心配なく。問題無いです」
マスターのステラもツルギ、ゼパム同様タルロスの構成員。だが、二人の違うのは武力行使をあまりしないこと。
ゼパムやツルギは武力行使の任務が主だが、ステラは諜報に長けた構成員。やむを得ない場合だけ武力行使をする。
任務が無いときはバーのマスターとして過ごしている。
「おう、コバン。久しぶりだな」
「ゼパムはん。いらしてはったんですか」
「お前のおかげでなんとか完遂出来た。ありがとな」
「それが仕事ですから、任せて下さい」
関西弁のような訛り口調で入ってきたのはコバン。こちらも同様にタルロスの構成員。タルロスの構成員はツルギ、ゼパム、ステラ、コバンの4人だけで構成された組織。極少数ながら精鋭揃い。普段は滅多に揃うことない4人だが奇遇にもアジトに居合わせた。
先ほどの任務ではコバンが内部に潜入して会合の情報を掴んでいた。
「ツルギ君はまた任務でっか?」
「あいつは上で寝てる。ここ最近まともに休んでねぇからな」
「そうですか。ツルギ君無茶し過ぎる時ありますからね」
「最近のあいつは度を越してる。5日も寝ないで任務をこなしてした時もあった」
「疲労で立てないゆうのに匍匐前進で任務行こうとしてましたもんね。そんな状態でも任務を完璧にこなしてくるんですもん。あの時は人ちゃうんか思いましたわ」
「まぁ、あいつは俺らとは違うからな。そういうのもあんだろ」
「ですかね」
コバンはゼパムの隣に座りゼパムと同じ酒を注文する。乾杯するとツルギの話をし始めた。
ツルギはそんなことも知らずに2階で仮眠を取っていた。
「もう1年前か。ツルギが初めて任務をミスってから」
「ですね。あれ以来ツルギ君は任務しか考えなくなりましたもんね」
「あぁ。あの失敗は、仕方ないことではあったんだがあいつは未だに引きずってる。過去を忘れるように任務をこなしてる」
「今のツルギ君見てると任務を失敗するのは後にも先にもあれだけやろなって思います」
「同感だ。あいつは任務の失敗なんて2度としないだろうな」
「心配ですよ。最近の彼見てるといつかぶっ倒れるんちゃうかって」
「常人ならもう倒れてる。でもさすがのあいつでも体のSOSは見過ごさないだろ。倒れたら元も子もないってわかってるはずだ」
ツルギは1年前任務を始めて失敗した。それ以来取りつかれたように任務に没頭し、完璧に遂行する。まるで機械のようになった。
そんなツルギをみんなは心配しているのだが、ツルギは心配を跳ねのけるように任務をこなす。人間を辞めているツルギにどう対応すればいいのか分からなくなっている。
「あれ以来酒も飲んでないですもんね」
「あの時の酒の飲み方は何かを忘れようとしてる人間がやることだった。なんでもいいから忘れたかったんだろ」
「で、飲み過ぎて次の日しょっちゅう吐いてましたね。吐きすぎて任務どころじゃなかったって」
「さすがのあいつも酒の飲みすぎには勝てなかったわけだ」
「あの子にも意外な弱点ってのはあるんですね」
二人の晩酌は朝まで続いた。朝日が差し込むとコバンは2階で仮眠を取りに向かった。
コバンと入れ違いでツルギが降りてきてステラと一緒に店の片づけを手伝う。
ゼパムは酔いを覚ますため外に出ていた。外に出る際はフードで口元を隠す。タルロスの原則だ。
「……騒がしいな。何が起こる?」
外に出たゼパムは静寂な街を歩いて違和感を感じ取った。素人には静かな街にしか見えない。
だがゼパムは何か不吉な事が起きると確信していた。状況を伝えようとバーに戻ろうと引き返す。
「リクー!!」
「ビンゴか。恐ろしいな」
静寂な街に女性の悲鳴が響き渡った。ゼパムは自分の勘が当たったことにため息をつくと声のした方向にすぐさま向かった。
――――――――――――――
~AM5:00~
「嫌だ!離して!」
「おいおい、朝から活発だな」
ゼパムが声のした方向に向かうとそこは何も無い空き地だった。そこで男二人が女性を連れ去ろうとしていた。男二人の指には指輪がついていた。
足音を立てずに男の背中まで忍び寄り声をかける。
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「何やって……ん?」
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「威勢はいいな。だが、その徽章をつけてんなら手加減はしねぇ」
男たちの胸にはバッジがついていた。そのバッジはタルロスが追っていた組織のものであった。
いきり立つ男たちはゼパムに殴り掛かる。ゼパムは簡単に拳を交わすとがら空きの胴に蹴りを入れる。
蹴りを喰らった男は数メートル先まで吹っ飛ばされた。ゼパムの蹴りにより男の内蔵に大きなダメージが加わり立つことは出来なくなった。
その様を見ていたもう1人の男は目を丸くした。よそ見した瞬間を見逃さなかったゼパムは蹴りを右側頭部に喰らわす。
男の首が衝撃で完全に折れ即死、数メートル先の壁に衝突し完全に動かなくなった。
「怪我は?」
「大丈夫です。それよりも弟を!!」
「弟?さっき叫んでた名前の人か?」
「はい。リクって言ってまだ8歳なんです」
「こいつらの心当たりは?」
「全く無いです」
「……一般人を無差別に狙うような奴らじゃなかった。こいつらじゃなくても街中でいくら朝とはいえいきなり拉致なんてしない」
「本当に無いんです!」
ゼパムの目には女性が嘘をついているようには見えなかった。この女性の弟が組織にとって価値のある人間というわけではない。なのに街中でいきなり拉致をした。不可解過ぎる。ゼパムの耳に近づいてくる足音が入ってきた。ここも危険になると感じ女性と共にバーに向かう。
「ついてきてくれるか?」
「弟を探さないと」
「それは俺たちが探す。今はついてきてくれ。あんたまで攫われるぞ」
「わかりました。あなたは誰ですか?」
「俺たちはタルロスだ」
「え?」
「ほら行くぞ」
ゼパムの予想通り街中に敵組織の包囲網が作られていた。バーは一番安心であるため身を隠すのにはうってつけである。敵に見つからないように細心の注意を払いバーに向かった。バーにはツルギしかおらず、ステラとコバンは見当たらなかった。
ツルギは見知らぬ女性のことを警戒し腰に携えている銃を取ろうとする。ゼパムが手で制止し、ツルギは渋々銃から手を離した。
「どうした?何があった」
「やつらだ。”輝く道”」
「あいつらか。でも、どうして急に?」
「待ってください!”輝く道”って何ですか?」
「”輝く道”ってのはルミノソっていうテロ組織のことだ」
「じゃあ弟はテロ組織に攫われたんですか!?」
「張本人連れてきたのか」
ツルギはやれやれと言った表情でため息をついた。ゼパムはそんなツルギを見てニッコリと笑った。
女性はバーを視線を目まぐるしく移動させながら眺めていた。
「みんな呼んでくれ。作戦会議だ」
「了解」
ツルギはそういうと2階に向かった。2階でステラとコバンは仮眠をとっていたようだった。
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