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ハッピーフェイス
しおりを挟む「い、命だけは助けて、ください……!」
「そんなのどうでもいいからさ、笑いなよ。ハハハ!」
「へっ……?」
「笑いなって。笑顔は人を幸せにするんだ!」
「は、はい?……」
「つまんな。せっかく幸せにしてやろうと思ったのに」
「そ、そんな!お、お願いします!死にたくないです!許してください!」
「じゃあね~」
笑顔の男は持っているナイフを命乞いをしてくる男の首に突き刺した。
男は死んだ男の口角を上げた。男は殺した後、一層笑顔になり現場を後にした。
「今朝未明、東京・板橋区で男性の遺体が発見されました。遺体は激しい暴行受けており、ナイフで首元を刺されているとのことです。死因や男性の身元については捜査中だということです」
「また遺体は口元を裂かれていたということです。東京では連日口元を裂かれた遺体が発見されており、警察はこれまでの事件と同一犯であるとみて捜査を進めています」
街頭の大型モニターで速報が伝わった。最近世間を騒がせている連続殺人。また遺体が見つかった。
不気味なのは発見される死体が笑顔であること。犯人の目的や動機が不明で、誰が犠牲になるか分からず世間は日々恐怖に怯えている。
世間からはシリアルキラーの犯行だと言われているが、発見される死体が口元を裂かれており笑顔に見えることからスマイルキラーとも言われている。
「盛り上がってる。これでまたみんなが笑顔になるね」
男は街頭モニターでのニュースを見て笑顔になった。男は上機嫌でその場を後にした。
――――――――
男は廃墟となっているビルに足を踏み入れた。朽ちた階段を上り5階に向かう。朽ちたビルには似つかわしくない綺麗な木製の扉を開け中に入る。中には男が1人おり銃の整備をしていたところだった。
「またやったのか?」
「世界中を幸せにするためだよ」
「フッ、イカれてんな」
「これは僕にとっての天職だよ」
「そうかもな。お前みたいなのが表に出たら間違いなく病院行きだ」
「ガイル、また行ってくるよ」
「またか?サツが警戒態勢引いてるぞ。地に足が着くようなことはやめとけ」
「そんなのに屈してたら人々を笑顔になんて出来ないからね」
男は笑顔でそう言うと扉を開けて行ってしまった。ガイルは呆れたようにため息を吐いて銃を机に置いた。
「次は誰にしようかな」
男は次の獲物を決めるため街を歩いていた。街には深夜ながら警察が巡回しており、怪しい人物には片っ端から職務質問を受けていた。
男は我が物顔で警察の横を素通りした。警察は男を止めもせず、男は難なく警察の網を掻い潜った。
警察は目ぼしい証拠を何1つとして得ることが出来ておらず、犯人の素性はおろか性別すらも分かっていない。
「あの人なんか良さそうだな」
男が見つけたのはベンチに腰掛けうなだれている男性。スーツを着ているため会社員と思われる。深夜遅くまでの残業で気苦労が絶えないのだろうと男は推測した。苦労している人にこそ笑顔になってもらわないといけない、そう言った強い使命感が男を動かしている。
「あ、おい!」
男は男性の鞄を盗み、裏路地まで走った。どんなに疲れていても物を盗られた時は思わず体が動いてしまう。男はこのような手口で人目のつかない場所まで人を誘導していた。
「ハァ……鞄返せよ!」
男性の目線の先には笑顔で立っている男がいた。
男は笑顔で持っている鞄を男性に返した。
「えっ……」
鞄が突如として光を放ち、轟音が鳴り響いた。男は逃亡中に爆弾を鞄に仕込んでいた。男性に投げ渡し、キャッチする寸前に起爆させた。男性の体は見るも無残な姿になってしまった。男は男性の顔に近づきナイフで笑顔を作ろうとした。
「そこ!何をしている!」
「さすがに早計過ぎたか」
警官が乱入してきて男は逃走を始めた。警察のいる中でやるのはリスクが大きいのは分かってはいたが、どうしても自分の欲求を抑えきれず男は犯行に及んだ。
男の逃げ足は速く、軽々と壁を越えていく身のこなしもあり警官はすぐに見失ってしまった。しかし、警官は男の素顔を目視しておりこの日から男が指名手配されることとなった。警察が警官の描いた似顔絵を基に男の身元を特定し始めたが、男に繋がるものは何1つ出てこなかった。だが、似顔絵に似た顔が防犯カメラで引っかかった。映像によれば男は廃墟となったビルをよく行き来しており、警察は男がいるタイミングで突入をしようと試みたが指名手配されてから男はビルに戻ることは無かった。
警察は男の所有物を押収するためにビルへ潜入した。そこには……
「警察だ!動くな!」
「チッ……追われてんなら言えよ」
「署まで同行してもらう」
「はいはい」
ガイルが銃の整備をしていたところだった。ガイルは押し入ってきた警察の言う事に従い、署に連行されることとなった。
ガイルが指名手配中の男のことを何か知っているのではないかということで取り調べが行われることになった。
「お前、あそこで何をしてた」
「別に勝手に住んでるだけですよ」
「嘘をつくな。押収された拳銃にはお前の指紋がべっとりついていた」
「お前はこの男について何か知っているだろ?」
「あぁ。こいつですか」
「この男について知っていることを全て話せ」
「知ってることなんてありませんよ。あいつの名前だって知りません。知ってるのはアイツの頭のネジが外れ過ぎてることくらいですよ」
「本当か?」
「えぇ。アイツ、自分の情報は残ってないとか言ってたけどホントだったんすね。俺に聞くってことは情報が何も出てきてないんでしょ」
「お前はこちらの質問だけに答えればいい」
「はいはい。そうですか」
「お前はガイルという偽名を使っていた。男はどんな偽名を使っていた?」
「色々ありましたからね。そこから探しても無駄っすよ。でも、一応言っとくならスマイルキラーとか名乗ってましたよ」
「刑事さんも分かってるでしょ。アイツはただの犯罪者じゃないですよ。根っからの純粋な殺人鬼ですよ。世界を笑顔にするっていう目的のためなら手段を厭わない」
「……イカれ野郎か」
ガイルの言葉に刑事は少し共感していた。男がただの犯罪者じゃないこと、殺人という行為を楽しんで且使命感を持ってやっていること。人間ではない。人間の最底辺があの男だろう。
警察内部は男のことをスマイルと呼ぶことになった。スマイルというのも男が使っていた偽名の1つで、爆弾を手に入れるために使っていた名のようだった。
「絶対に捕まえてやる」
刑事は強い眼差しでスマイルのことを睨んだ。
――――――――
「ハハハ!!!!!!」
スマイルは目の前に並んだ数十体の死体を見て結託なく笑う。その死体は全てに口元が裂かれており笑顔のような顔になっている。
スマイルの笑いは止まることなく、使われなくなった倉庫に響き渡った。
「でも、まだまだだ。もっと多くの人たちを笑顔にしなきゃ」
スマイルは心から純粋に笑い、倉庫を後にした。
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