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14 魅了された者
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その日は放課後に生徒会の仕事があって、下校が少し遅くなってしまった。
『用事があって遅くなる』と伝言はしてもらったのだが、馬車の横に寄り掛かったリベリオ様は欠伸を噛み殺し、少々待ちくたびれた様子。
「申し訳ありません。お待たせしました。
………あっ…」
そこで私は自分のミスに気が付き、慌てて通学鞄の中を漁った。
「どうしました?」
「済みません、どうやらノートを教室に忘れて来てしまったみたいなんです。
更にお待たせしてしまうのは申し訳無いのですが、取りに戻っても良いですか?」
そのノートは明日の試験の為の勉強に必要な物なので、絶対に持ち帰らなければいけなかったのに、うっかり置いて来てしまうとは、なんて馬鹿なのか。
「姫様、宜しければ私が取りに行って参りますよ」
そう申し出てくれたのは、イメルダだ。
普段、護衛の彼女が私の側から離れる事は無いのだが、今は婚約者であるリベリオ様と一緒なので安全と判断したのだろう。
「ごめんなさいね、イメルダ。お願い出来る?」
「畏まりました。すぐに戻りますね」
ニコリと微笑んだイメルダは、あっと言う間に校舎の中へと消えて行った。
「クラウディア様が生徒会の役員だったとは、意外ですね」
「ええ。あまり仕事を与えられない名ばかり役員なのですが。
一応王族が在学中は、役員になると決まっているらしくて、レナートも役員をしているんですよ」
「王族でいるのも色々面倒なもんですね」
「本当に」
イメルダを待っている間、私達は馬車の横に立ったままで、少しだけ世間話をしていた。
婚約者同士の私達の会話を邪魔しない様に、リベリオ様の護衛は少し距離を取ってこちらを見守っていたのだが……
それが裏目に出てしまった。
どこからともなく現れた一人の男が、素早く私達に接近して、リベリオ様にナイフを向けたのだ。
「お前が、僕のクラウディアを奪った……。
許さない……。……絶対に…、取り戻す」
明らかに様子がおかしいその男が、虚な瞳でブツブツと呟いた内容に戦慄した。
しかも、私に執着しているらしいその男の顔には、なんとなく見覚えがあったのだ。
(どうして? 魔道具も付けて、眼鏡も掛けているのに……)
これ以上、私の魅了眼のせいで、誰にも傷付いて欲しくはないのに───。
気が付いたら、私はリベリオ様とその男の間に立ち塞がっていた。
「リベリオ様を刺すなら、私を刺してからになさい」
震える声でそう言った私に、その男はハッと驚いた様な顔して、少しの躊躇いを見せた。
その一瞬の隙を逃さず、リベリオ様の護衛が男を取り押さえる。
と、同時に、リベリオ様に仔猫の様に襟首を掴まれた私は、強く後ろに引っ張られ、彼の背後に隠された。
「アンタ、何やってんだ!?」
背後の私を顔だけで振り向いたリベリオ様は、今迄に無い剣幕で怒鳴った。
(アンタ……?)
「ええっと、私のせいで、リベリオ様にお怪我があってはいけないと……」
「ふざけんなっ、アンタ馬鹿かっ!!
アンタが怪我をするより、俺が怪我をした方がずっとマシなんだよっ!」
(俺……?)
「ああ、リベリオ様は普段はそういう言葉遣いをなさるのですね」
「今はそんな事どうっでも良い!!」
納得してポンと手を打ったのだが、余計に怒らせてしまったみたいだ。
私が怒鳴られている間に戻って来たイメルダは、一目で状況を把握して、リベリオ様の護衛と共に犯人をギリギリと縛り上げた。
『用事があって遅くなる』と伝言はしてもらったのだが、馬車の横に寄り掛かったリベリオ様は欠伸を噛み殺し、少々待ちくたびれた様子。
「申し訳ありません。お待たせしました。
………あっ…」
そこで私は自分のミスに気が付き、慌てて通学鞄の中を漁った。
「どうしました?」
「済みません、どうやらノートを教室に忘れて来てしまったみたいなんです。
更にお待たせしてしまうのは申し訳無いのですが、取りに戻っても良いですか?」
そのノートは明日の試験の為の勉強に必要な物なので、絶対に持ち帰らなければいけなかったのに、うっかり置いて来てしまうとは、なんて馬鹿なのか。
「姫様、宜しければ私が取りに行って参りますよ」
そう申し出てくれたのは、イメルダだ。
普段、護衛の彼女が私の側から離れる事は無いのだが、今は婚約者であるリベリオ様と一緒なので安全と判断したのだろう。
「ごめんなさいね、イメルダ。お願い出来る?」
「畏まりました。すぐに戻りますね」
ニコリと微笑んだイメルダは、あっと言う間に校舎の中へと消えて行った。
「クラウディア様が生徒会の役員だったとは、意外ですね」
「ええ。あまり仕事を与えられない名ばかり役員なのですが。
一応王族が在学中は、役員になると決まっているらしくて、レナートも役員をしているんですよ」
「王族でいるのも色々面倒なもんですね」
「本当に」
イメルダを待っている間、私達は馬車の横に立ったままで、少しだけ世間話をしていた。
婚約者同士の私達の会話を邪魔しない様に、リベリオ様の護衛は少し距離を取ってこちらを見守っていたのだが……
それが裏目に出てしまった。
どこからともなく現れた一人の男が、素早く私達に接近して、リベリオ様にナイフを向けたのだ。
「お前が、僕のクラウディアを奪った……。
許さない……。……絶対に…、取り戻す」
明らかに様子がおかしいその男が、虚な瞳でブツブツと呟いた内容に戦慄した。
しかも、私に執着しているらしいその男の顔には、なんとなく見覚えがあったのだ。
(どうして? 魔道具も付けて、眼鏡も掛けているのに……)
これ以上、私の魅了眼のせいで、誰にも傷付いて欲しくはないのに───。
気が付いたら、私はリベリオ様とその男の間に立ち塞がっていた。
「リベリオ様を刺すなら、私を刺してからになさい」
震える声でそう言った私に、その男はハッと驚いた様な顔して、少しの躊躇いを見せた。
その一瞬の隙を逃さず、リベリオ様の護衛が男を取り押さえる。
と、同時に、リベリオ様に仔猫の様に襟首を掴まれた私は、強く後ろに引っ張られ、彼の背後に隠された。
「アンタ、何やってんだ!?」
背後の私を顔だけで振り向いたリベリオ様は、今迄に無い剣幕で怒鳴った。
(アンタ……?)
「ええっと、私のせいで、リベリオ様にお怪我があってはいけないと……」
「ふざけんなっ、アンタ馬鹿かっ!!
アンタが怪我をするより、俺が怪我をした方がずっとマシなんだよっ!」
(俺……?)
「ああ、リベリオ様は普段はそういう言葉遣いをなさるのですね」
「今はそんな事どうっでも良い!!」
納得してポンと手を打ったのだが、余計に怒らせてしまったみたいだ。
私が怒鳴られている間に戻って来たイメルダは、一目で状況を把握して、リベリオ様の護衛と共に犯人をギリギリと縛り上げた。
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