死んだらこうなった

藤村託時

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第1章

第1話 死んでしまった

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 俺はさっき死んでしまった。
 死ぬ直前の記憶がある。
 風呂でうとうとして意識を失ってしまったのだ。
 だからおそらく溺死したのだと思う。

 そして今真っ白な空間にポツンとひとり残されている。

「お待たせてしました」
「えっ!?」

 突然後ろから声をかけられたのでつい驚きの声を上げてしまった。
 振り向くとそこには七三分けのメガネの男が立っていた。

「君はノービジョンだからこれからどうするか決めていかないといけないんです」
「ノービジョンってなんすか?」
「君、死んだ後自分がどうなるのかとか考えたこと無かったでしょう?」
「まぁそんなすぐ自分が死ぬとも思ってなかったからなんも考えてなかったっすね」
「高校2年生でしょ君?そのくらいの年齢だとどっかしらで死んだらどうなるとか考えちゃう子が多いんですけどね。たまにいるんですよね、君みたいに死に対して向き合ってない人が」

 なんかこの七三メガネ腹立つなぁ……
 ただ今はこの男しか話せる人もいないので話を聞かねば。

「つまり死後のことを考えてない人をノービジョンって呼んでるってことですかね?」
「その通り。そしてノービジョンの人たちはこれからビジョンを固めてもらわなければいけません」
「いまいちビジョンってのがよくわかんないんすけど……」
「要するに死んだ後どんな所に行くか、自分がどうなるかの想像です。人が死んだらその人が生きている間に想定していた死後の世界に近い世界に送るのがルールなんです」
「なるほど」
「死んだら天国や地獄があるんだろうなと考えている人にはこちらで想像の天国地獄に近い世界へ送ったり、生まれ変わりを信じている人には元の世界に近い世界の赤子として送ったりしますね」
「死んだ後無になるとか幽霊になるって考えてる人はどうなるんですか?」
「無になると考えてる人は感情がない虫などの生物に魂を移したりします。幽霊になると思ってる人はノービジョンの人達と一緒でビジョンを考えてもらう必要がありますね」
「幽霊はいないと?」
「ルールとして実体の中に魂を入れる決まりになってるから幽霊がいたとしたら我々が見落としてるだけです」
「大体、死後のルールは分かりましたが、俺は結局どうすればいいんですか?」
「いったん待機所に送るので、ビジョンを固めておいてください」
「待機所?」
「待機所は待機所です。時が来たらまたこちらでビジョンの確認をするので、死んだことに対して向き合ってくれてればいいですよ。それでは」

 七三メガネはそんなことを言ったあと俺の頭に手を載せた。
 すると次の瞬間には黒い床と黒い天井で10畳くらい広さの部屋に移動していた。
 見渡してもあの七三メガネの姿はもう見えなかった。
 ただ自分以外につけまつげとゴテゴテのネイルをしたギャルが座っていた。

「おっ、人来てよかったー!マジでここやることなくて暇なんだけど」
「あっ、どうも……」
「ってかどうせなら女子来て欲しかったわ!」

 出会ってそうそうギャルの圧に押されてしまっている。

「アンタ歳いくつ?」
「17歳ですけど」
「へぇ、アタシとタメじゃん!なんか死んだらしいけどこれからよろしくね~!」

 死んでも明るい人は明るいんだな……
 俺は暗いとまでは行かなくてもそこまで明るい方ではなかったから少し羨ましい。

「お名前はなんて言うんですか?」
「アタシはイェクジェネ!アンタは?」
「イェクジェネ?どこ出身ですか?」
「ネーベユニオンだけど」

 ネーベユニオンってどこだ。
 まるで聞いた事のない地名を言われ思考が停止していた時、新たに人の姿が現れた。

「あっ、ちょっと困りますぅ……」

 メガネをかけた痩せた男がキョロキョロしている。

「なんか変なの来たんですけど……」

 ギャルがそう呟いた後、部屋の壁に突然映像が写った。映像から七三メガネの男が語り出した。

「今3人そこにいると思うが、ひとまずその3人で生活してもらい死後のことについて考えてもらうとする。もう1人追加する予定だが、しばらくは3人で暮らしてくれ」

 そう言った後、また映像は途切れた。

 こうして死後の共同生活が始まったのであった。
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