異形病院

おしゅれい

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患者メモ8日目 陸田司(ノイズ)

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「やあ、お久しぶり。様子を見に来るのが随分と遅れてごめんね」
僕が様子を見に来たのは、先日暴れていたノイズ。 彼は僕がつけた首輪をしっかりつけており、落ち着いた様子で僕を見た。
「先日はありがとうございました。よくわからないけど、首輪をつけてから思考することができるんです」
「落ち着けたようで何より。でもその首輪を外すとまた暴れてしまうから、外さないように気をつけてね」
「はい、ちゃんと気をつけます」
彼は少し恥ずかしそうに髪を触ってはにかんだ。
「少し聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」
「はい」 
「まず、君の名前を聞いても良いかな?覚えてる?」
「覚えてますよ。陸田司。司って呼んでください」
「ありがとう。それとね、この花は君にとってどんな花かわかるかな?」
「それは……」
彼が少し悲しそうな顔をして花に触れる。
「僕の母さんが大切に育てた花です。僕が誕生日に苗をあげたんですけど、毎年花が咲く度に母さんは幸せそうな顔をしていて、僕も幸せだった。……母さんに、会いたいな」
「そっか……思い出の詰まった花なんだね」
僕は悲しそうにする彼の頭をそっと撫でた。
最初は意識のない化物のようだったけど、首輪をしていれば彼は人間と大差はない。
しかし、首輪が外れてしまえばたちまち姿を変えてしまう。
……この変化には鍵がありそうだ。
「司君、話してくれてありがとうね。このお花、少し貰って行っても良いかな?」
「どうぞ!役に立つかはわからないですが……」
「ありがとう」
僕は彼から花を貰うと、部屋を後にした。
もし僕の考えが合っていれば、彼が人間に戻れる日は、案外直ぐかもしれない。
後は、僕の腕次第だ。
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