スマホを拾ったら面白い事になった

黒いテレキャス

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スマホを拾ったら面白い事になった

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足元に見えるのは…
ピンクのスマホ。
なんでそんなモンが道に落ちてるんだ?
普通、落としたら気づくだろう?
周囲を見回す。新今宮駅の地下通路。何度か来た事はあるが、改めてじっくり見ると実になんと言うか…
殺風景って奴?
コンクリートの壁が蛍光灯で照らされていて灰色に光っていて…
誰もいない。
自分のスマホを取り出す。
21時18分。
帰宅ラッシュは過ぎた平日の夜。
昔ならホームレスが居たかも知れないが…
監視カメラはあるよな?
少し迷った。誰か来たら通り過ぎよう。
来ない。
拾うか。



部屋の唯一の家具であるテーブルの上には先ほどのスマホ。
持って帰ってしまった。
当然、駅員にでも届けるべきだったが…
何故持って来てしまったのか自分でもよく分からない。
好奇心?
それもあるが…
ネクタイを外しながらため息を付く。久しぶりに結んだので結び目が大きく不細工だ。印象は悪かっただろうか?今更後悔しても仕方ないが…
スマホを手に取る。落ちた時の傷らしいものは見当たらない。電源を入れてみる。壊れてなかった。待ち受けはなんかイケメン男。K-POPアイドル?充電はフル状態。
ロックはかかっていなかった。
マジか?
遠隔操作でロックできるはずだが…
ピンクのスマホ。イケメン待ち受け。普通持ち主は女だよな。
少し罪悪感があるが持って帰った時点でアウトだろうと自分でも説得力のない言い訳を呟き写真フォルダを開く。
若い女性の自撮り写真。
めっちゃかわいいやん。


玄関の傘立てに傘を差す。予報では雨だったが結局降らなかった。
この傘捨てようか?と思うの何度目だろう。高校の時買った奴だから20年以上前か。時の流れにゾッとする。骨は錆びてるし重いし先端が金属だから人混みでは危なくて気を使う。
部屋のテーブルの上のピンクのスマホの着信ランプが光っていた。
誰もいない真っ暗な部屋の唯一の光源。
孤独を実感させられる。
5件の電話着信。全部同じ090から始まる番号が通知されている。
持ち主の友人?
それとも本人?
本人じゃないとして全部同じ番号って意外に友達少ないのか?自撮り写真に写ってたのいかにもリア充って感じだったけど。俺と違って。
階層が違う。絶対にリンクする事のない集団に属する子。
ま、普通スマホ落としたら本人がまずかけてくるよな。
まだロックされてないのが不思議。そう言えばGPSはON状態。OFFにしようと思ったがなんとなくやめといたのは最近もう何もかもどうでもよくなってるから。結局スマホ持ち帰ったのもそのせいだな。
GPSの精度って場所特定できるくらいなのか?ググろうと思ったがめんどくさい。
どうでもいいや。
2、3日で電池切れで終わりだろ。LINEの中身興味あったがアプリ自体無かったし。今時の子でおかしくないか?
集合ポストから取ってきた封筒を開き中の紙切れを出す。
テンプレ文章。
予想通りだが落ち込む。
改めて自分の状況を突きつけられ憂鬱になる。ホントすべてどうでもよくなった
大音量でなんか知らない曲が流れ文字通り跳び上がる。
ピンクのスマホに着信。
迷う。
出るか。
どうなろうとどうでもいいし。
「すみません、私のスマホ拾って下さった方ですか?」
若い女の声。あの自撮りの子?イメージ通りの声だったな。
てか、拾ったじゃなくてパクっただよなぁ…そこ突っ込まないんだ…
「はい」
「ありがとうございます。それで…」
当然返して欲しいと。窃盗だのなんのと騒がれなくて良かった。
「ええと…新今宮駅でお渡ししましょうか?」
あそこを通勤か通学に使ってるんだろ。こっちはそうじゃないが、そこで渡すのが無難だろ。
俺見て引くだろうなぁ。どんな格好して行こう?ああ、めんどうくせ。行かないで済ますか?
「いえ、こちらから伺います」
「え?ここに?」
「はい、もう近くにいます」
おいおい何この急展開。


何故正確な住所を教えてしまったのか?
結局もうすべてがどうでもいいから。
言われるがまま流されていってるよなぁ。
ドアの前でピンクのスマホを握りしめて立っている俺は一体なんだろう?
スマホを拾ったばっかりに…
スエットの袖が汚れてるのに気づいた。一週間くらい洗濯してないから臭いだろう。臭いと言えばこの部屋自体が…
ま、いいや。要件はすぐ済むし2度と会わない相手だし
もうなにもかどうでもいいし。
でもあんな子と話すのは緊張する。俺がスマホの中身見たと思ってるんだろうなぁ。その通りだけど。このスマホ徹底消毒するんだろうなぁ。当然だけど。
チャイムが鳴った。
覗き穴から見るとあの自撮りの子。
もう午後8時を回ってるので背景は暗い。
あの写真の子がドア一枚隔てた所に立ってる。気後れしたがカギを外し思いきってドアを開けた。
思ったより小柄。写真より幼く見える。まだ学生さんか?
いい匂い。
こちらを見て引いてる感じはしない。微笑を浮かべ軽く首をかしげている。サラサラした清潔な髪が揺れている。
「ええっと」
テンパってとりあえずスマホを差し出しそうと思い…
「おい、なにやっとんねん」
低い男の声。
いつの間にか彼女の背後には見知らぬ人物が立っていた。
デカい金髪の若い男。
彼女と同じくリアルでは違う層に属していて、彼女と違うのは絶対に関わりたくないって事。



金髪男は玄関に入り込み、こっちは室内に後退を余儀なくされている。
隣人はおそらく不在。いても互いに挨拶すらしない仲だ。助けは期待できない。
金髪男が言ってる事は右から左へと抜けて行ったが理不尽な理由で脅しをかけられてる事は分かった。
新手のつつもたせ。
ま、こっちは彼女と会話すらしてないが。
俺みたいに引っ掛かる奴いるのかよ?
女はすごいスピードで白いスマホをいじってる。
「シンジにライン送っといた」
男に言うとこちらを一瞥。
「キモ」
その通りだが面と向かって言う事ではないよな。
「俺、金ありませんよ」
一応言っとくか。
「見りゃ分かるって」
金髪は鼻で笑った。
「金を作る方法はあるから」
借金させられる?臓器売らされる?
漫画や小説では見る話だが本当にそんな事あるのか?
まさか、こんな展開になるとは…
体が自分の意思と関係なく震え始める。
金髪がそれに気付き又鼻で笑った。
「泣かないでねぇ」
女が汚物を見る目で吐き捨てる。
「許してください」
金髪の足元に土下座する。俺には縁のない高そうなブランドスニーカーが一瞬見えた。
「アホか」
後頭部を踏みつけられた。鼻がタイルに押し付けられきな臭くなる。鼻血が出たか?
今だ!
金髪男の両足首をまとめて両手でしっかり掴み勢いよく立ち上がった。
ゴツンという音。
金髪男は仰向けに倒れ何が起きたのか理解できていない顔。後頭部を強打して脳震盪でも起こしているのかも知れない。
傘立てから20年モノの傘を抜き金髪男の顔面に突き立てる。悲鳴。先端の金属部分が硬い物に弾き返される感触。何度目かの突きに手応えがなく深く沈み込む。眼窩に刺さったようだ。急に静かになる。
逃げようとしている女の髪を掴み玄関に引きずり込む。ドアを閉め下駄箱の角に思い切り顔面を叩きつける。5、6回繰り返すと静かになった。女の髪から手を離す。大量の髪の毛が指に絡み付いている。血まみれになっていた。
金髪男の体は玄関に収まり切らず室内に半分以上入り込んで伸びている。傘で触ってみたが反応なし。
女が憎々しげな目でこちらを見ている。キレイだった顔は見る影もない。
「もうすぐシンジが来るからね、そしたらアンタなんか…」
女の顔をおもいっきり蹴って黙らせる。
シンジ?ああ、さっきライン送ってたお仲間か。
ここ数日の出来事が突然思い出される。
長らく続く無職の日々。あのスマホを拾ったのは何十社目かの面接の帰り道。
そして昨日何十回目かの不採用通知。
もうこんな事繰りかえしても無駄だろう。
貯金もそろそろ底を付く。
人生詰んだ。でも自殺する勇気はない。ならば…
そんな気持ちになった時にコレだ。
シンジ君はチンピラか?
地元の連れや後輩がゾロゾロゴキブリみたいに出てくるのか?
来いよ。ここにクズ共の屍の山を築いてやる。
長年映画や小説、漫画から学び頭の中で何百回もシミュレーションしてきた事が通用するか試してやる。
さっきの土下座して油断させてからの両足タックルはうまくいったが…
こちらのアドバンテージは…
奴らはここに戦闘モードに入った無敵の人が待ち構えているのを知る由もないって事。
にしても笑える。実に面白い。
無差別通り魔になってたはずの奴がチンピラハンターになるとはね。
既に二人やった。あと何人やれるか…
出迎えの用意をしなければいけない。昔買い集めたスタンガン・催涙スプレー、ガスガン、ナイフ、特殊警棒…ウェポン一式引っ張り出さなきゃ。
緊張と恐怖、そして興奮。
こんなにワクワクするの生まれて初めてかも知れない。
スマホを拾ったら面白い事になりやがった。


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