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第1章
第1話:カシオペイア
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「ん…。」
ふと額に感じた冷たい一粒の雫で気がついた。
霞む目を開こうとしたが、少ないながらも眩い木漏れ日によって一瞬憚られた。
次第にゆっくりと目が慣れてゆき、自分が仰向けの状態で倒れていることに気がついた。
「あれ…?ここは…?」
とりあえず状況を把握するために、仰向けの状態から首だけであたりを見回すと
周りは一面の緑、それもたくさんの木に囲まれた緑だった。
ここは山か、それとも森か、林か、そんな広さもわからないまま、手足がどこも壊れていないことをグーとパーを数回繰り返して確認し、ゆっくりと体を起こし立ち上がった。
「よし…。」
辺りの空気は少し肌寒く、足元の草に露がついてるのをみて、
今が早朝であることがわかった。
思いっきり息を吸うと鼻の頭がツンとする感覚や歩く度に伝わる足元の感触などから自然の情報を一つ一つ確かめながら歩いているとあるものが目に入った。
それと同時にこんなことを考えた。
もし、こんないきなり知らない世界で大自然に一人ポツンと取り残されたら、きっと普通の女の子は泣いてしまうだろうな。と
だけどそんな孤独感や恐怖感は不思議と感じなかった。
なぜなら、自分の目先に手入れがされた小道と、木で作られた看板。そして看板の上にカメのオブジェが乗っているのを見つけたからだ。
見知らぬ世界でたった一人、そんななか人の手で作られたであろう景色が広がっていれば、誰でも安堵する。
逆にこれらを見つけていなかったら、私も普通の女の子といっしょで泣いてしまっていただろう。
私はその看板の文字が見える距離まで無我夢中で歩いた。
-----------------------
『カシオペイア』
そう書かれた看板の先には青々しい草木に囲まれた木造の丸いドームがポツリ。
かすかに人が住んでいると思われる扉と手紙箱が目に入った。
『かすかに人が住んでいる』というのも変な言い方だけれど、それほどまでに人工物が自然に溶け込んでいたのだ。
私としては誰か人が住んでいて欲しい、
これだけ自然に溶け込んでいたら、普通の人じゃない、例えば妖精や小人、
地底人なんかが住んでいるのかもしれない。
そんな思いが過ったからだ。
ドームに近づくにつれて、先ほどの看板の上にカメが乗っていた理由がなんとなくみえてきた。
ドームの屋根部分に筋のようなものが入っており、その筋がまるでカメの甲羅のように網目模様となっていた。
ドームの目の前まで辿り着いた私は辺りを見回しチャイムらしきものを探したが、どこにもそれらしいものはついていなかった。
そればかりか夜、玄関を照らすような外灯らしきものも見当たらず、自然そのものに溶け込みすぎて電気すら通っていないのではないかと思わせた。
仕方がないのでドアをノックすることにした私は拳を握り、木製の扉に拳の背中を軽く当てた。
扉からは微かな温もりを感じた。
木の温もりというやつだろうか…。
コンコン
「すいませんー。どなたかいませんかー?」
しばらく待つも返事はない…。
ドームの周りをなぞるように歩くとドームの側面に窓がいくつかついているのに気が付いた。
その形は三角だったり細長い四角だったり、ベランダにあるような見慣れた長方形だったり様々だった。
中の様子はレースがかかっているのか、何か薄い霧のようなものがかかっていて見えなくなっていた。
「ごめんくださーい!」
今度はさっきよりも少し大きな声で呼びかけ、再びドアをノックした。
ドアのノックもさっきよりも少し強めに叩いたつもりだ。
そのせいか少しだけ扉がこちら側に開いたような気がした。
――ガチャリ
特に誰かでてくる様子もない、開き戸なのだから内側から誰かが開けてくれたに違いないのだが、誰も応対に出てこない…。
ご自由にどうぞ、ということだろうか…?
そう勝手に解釈して、おそらく空いていると思われる扉をゆっくり開いた。
――カランカラン
小さく鐘の音が辺りに響いた。
少し驚いたが、訪問者を知らせる音が鳴るということは、
迎え入れることを想定した建物であることは間違いなく、
生活感を強く感じることができた。
扉の中は玄関のようになっており、2・3歩歩いた先は少し高い段差に続いていた。
どうぞここで靴を脱いでくださいと示されている見慣れた玄関だ。
ただ、1つ見慣れた玄関と違う点があり、
それは、靴を脱いだ先、
2・3歩も歩かないうちにまた扉があるということだった。
すこし不思議に思ったが靴を脱いだ流れで、2つ目の扉を開いた。
今度は引くタイプではなく、押すタイプの扉だ。
ガチャ…カランカラン…
入口の鐘の音よりも高い音が鳴ったような気がする。
扉の先は少し薄暗く、先はよく見えないけれど、店のカウンターらしき木造のテーブルが目に入った。
内装は木造の棚が並んでおり、
小さな壺や見慣れない分厚い書物なんかが少し埃をかぶってもいたりもして
なんだか骨董品屋のような印象を受けた。
電灯らしきものははとくになく先ほど外で見た様々な形の窓から
光を取り入れているといった感じになっている。
さらに思ったより天井は高く、灯り窓のような窓がいくつもついていた。
それになにやらポコポコと水が流れるような音が聞こえる。
「ごめんくださーい」
天井が高いだけに自分の声がよく響いた。
それでも奥から返事はない…。
今度はもう少し大きな声で呼びかけようと息を少し大きく吸ったその時、
奥から何かホワホワした光、弱弱しいとは何か少しちがう神秘的な光が見えるのと同時に女性の声が響いた。
「はいはーい。」
返事とともに光をまとった女性が奥から出てきて続けて言った。
「あら、珍しいお客さんだこと」
歳は30後半か40代前半といったところだろうか、
声の主は、黄金色で少しカールがかかった髪を胸まで伸ばしており、
茶色のローブのような服を着ていた。
「あ、えっと、勝手に入ってごめんなさい。」
外の様子から早朝ということは感じ取っていたので、
おそらく営業時間外だろうと、挨拶の前にお詫びをした。
「あーいいの、いいの。うちはわりとオープンだから。
奥にソファーがあるからちょっと掛けて待ってて」
そう言うとローブの女性はカウンターの奥へと移動し、
なにやらガサゴソと物を整理し始めた。
そう声はかけられながらも、
「はい、わかりました」と客のように振る舞うには、何か違うと思い
まずは自分がここに辿り着いた経緯を説明しなくてはと、私は口を開いた。
「あの、私この世界とは別の世界から来て…えっと…」
何から説明すればいいだろうか、
アカデミーの試験でこの世界に来た事、3年間この世界で暮さなければいけないこと
そもそもアカデミーで通じるのだろうか、何から話すべきか、
考えが交錯し言葉に詰まってしまった。
「あー。ここでは珍しくないから気にしなくていいよ。
ささ、あがってあがって。」
ローブの女性がそう言いながら人差し指で私のほうへ合図すると
彼女の身をまとっていた光の1つが私のほうへ飛んできて、私の周りを一周したと思ったら
「ついてこい」といわんばかりにゆっくりと奥のほうへ進んでいった。
私もその言葉と光に導かれるまま、歩き進んだ。
導かれた先を行くと小部屋らしきところにたどり着いた。
その部屋には、2人ほど掛けられるソファーの他に勉強机のような机と1人掛けのイスが1つ
そのイスはソファーと向かい合うような形に向いていた。
机には細くて少し青がかった透明な花瓶と透明な花のオブジェが置かれていた。
そして次に目に入ったのは外から見つけたベランダらしき窓に使われる見慣れた長方形の窓だった。
外から覗いた時は曇りがかっていた窓も内側からは外の様子がくっきり見えていた。
草木が生い茂り、自分が歩いてきた小道が続いているのが見える。
木の温もりを感じながら緑豊かな自然の風景を楽しめるこの部屋は、来訪者をもてなす客室といったところだろうか。
部屋の様子や景色を見てあれこれ考えをめぐらせているとローブの女性がティーポットとカップを手にやってきた。
「いい景色でしょう、夏にはリスが、冬には野うさぎがやってくることもあるのよ。さ、掛けて。」
とソファーへの着席を促され、ローブの女性も同じく向かいの一人掛け用のイスに腰をおろした。
「自己紹介がまだだったね。私はこのドーム、カシオペイアを管理してるスミカという。」
そう名乗りながらスミカはポットからカップに注ぐ動作をする。
私も名乗ろうと口を開こうとするが、スミカに口元を人差し指で遮られる
スミカの目線はポットから注がれようとしているカップに向けられており、私もつられるように視線をスミカからカップに移した。
ポットからはカップに何か液体が注がれる様子はなく、変わりにホワホワとした薄黄色の光が注がれていた。
その光がカップで飲み物を飲む際にちょうどいいラインまで注がれると、光はそっと失われるかのように消え、カップには薄黄色の液体が溜まっていた。
「さ、飲みな。きっと落ち着くよ。」
そうスミカから促され、カップの飲み物に口をつけた。
熱すぎず温すぎず、口元から心を優しくあたためるかのような感覚を覚えた。
一口飲み終えると、昔どこかで飲んだことのある後味を感じた。
「ただのハーブティーよ、ただし魔法のね」
スミカは不思議そうに飲んでいたと思われる私に言葉をかけ、ウィンクして見せた。
そのウィンクにハッとし、何か言わなくてはと口を開く
「えっと…」
(ん…? どうして私はこんなところでお茶してるんだ…?それも中学の頃の制服で…)
「えっと…私ここで何か言わなくちゃ、いや…何か大事なことをあなたに説明しなくちゃいけなかったような…」
うまく言葉がでて来ない。
「スミカでいいよ。」
そう温かな笑みで目の前のローブの女性、スミカは答える
(思い出せない…。覚えていることは…)
ここまでの会話を一言一言頭の中で遡った。それも可能な限り早く。
頭の中でスミカと魔法のハーブティのことが逆再生され、また記憶が巻き戻される。
気が付いた時には私はその場で立ち上がってスミカに迫っていた。
「スミカさん、私何かしなくちゃいけなくてここに来た気がするんですっ!」
(思い出せ、思い出せ、ここはどこ、私は何を、私はどうして…)
(私は)
(私は…私は。)
(私はっ…!)
『誰だ…?(誰だ…?)』
ふと額に感じた冷たい一粒の雫で気がついた。
霞む目を開こうとしたが、少ないながらも眩い木漏れ日によって一瞬憚られた。
次第にゆっくりと目が慣れてゆき、自分が仰向けの状態で倒れていることに気がついた。
「あれ…?ここは…?」
とりあえず状況を把握するために、仰向けの状態から首だけであたりを見回すと
周りは一面の緑、それもたくさんの木に囲まれた緑だった。
ここは山か、それとも森か、林か、そんな広さもわからないまま、手足がどこも壊れていないことをグーとパーを数回繰り返して確認し、ゆっくりと体を起こし立ち上がった。
「よし…。」
辺りの空気は少し肌寒く、足元の草に露がついてるのをみて、
今が早朝であることがわかった。
思いっきり息を吸うと鼻の頭がツンとする感覚や歩く度に伝わる足元の感触などから自然の情報を一つ一つ確かめながら歩いているとあるものが目に入った。
それと同時にこんなことを考えた。
もし、こんないきなり知らない世界で大自然に一人ポツンと取り残されたら、きっと普通の女の子は泣いてしまうだろうな。と
だけどそんな孤独感や恐怖感は不思議と感じなかった。
なぜなら、自分の目先に手入れがされた小道と、木で作られた看板。そして看板の上にカメのオブジェが乗っているのを見つけたからだ。
見知らぬ世界でたった一人、そんななか人の手で作られたであろう景色が広がっていれば、誰でも安堵する。
逆にこれらを見つけていなかったら、私も普通の女の子といっしょで泣いてしまっていただろう。
私はその看板の文字が見える距離まで無我夢中で歩いた。
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『カシオペイア』
そう書かれた看板の先には青々しい草木に囲まれた木造の丸いドームがポツリ。
かすかに人が住んでいると思われる扉と手紙箱が目に入った。
『かすかに人が住んでいる』というのも変な言い方だけれど、それほどまでに人工物が自然に溶け込んでいたのだ。
私としては誰か人が住んでいて欲しい、
これだけ自然に溶け込んでいたら、普通の人じゃない、例えば妖精や小人、
地底人なんかが住んでいるのかもしれない。
そんな思いが過ったからだ。
ドームに近づくにつれて、先ほどの看板の上にカメが乗っていた理由がなんとなくみえてきた。
ドームの屋根部分に筋のようなものが入っており、その筋がまるでカメの甲羅のように網目模様となっていた。
ドームの目の前まで辿り着いた私は辺りを見回しチャイムらしきものを探したが、どこにもそれらしいものはついていなかった。
そればかりか夜、玄関を照らすような外灯らしきものも見当たらず、自然そのものに溶け込みすぎて電気すら通っていないのではないかと思わせた。
仕方がないのでドアをノックすることにした私は拳を握り、木製の扉に拳の背中を軽く当てた。
扉からは微かな温もりを感じた。
木の温もりというやつだろうか…。
コンコン
「すいませんー。どなたかいませんかー?」
しばらく待つも返事はない…。
ドームの周りをなぞるように歩くとドームの側面に窓がいくつかついているのに気が付いた。
その形は三角だったり細長い四角だったり、ベランダにあるような見慣れた長方形だったり様々だった。
中の様子はレースがかかっているのか、何か薄い霧のようなものがかかっていて見えなくなっていた。
「ごめんくださーい!」
今度はさっきよりも少し大きな声で呼びかけ、再びドアをノックした。
ドアのノックもさっきよりも少し強めに叩いたつもりだ。
そのせいか少しだけ扉がこちら側に開いたような気がした。
――ガチャリ
特に誰かでてくる様子もない、開き戸なのだから内側から誰かが開けてくれたに違いないのだが、誰も応対に出てこない…。
ご自由にどうぞ、ということだろうか…?
そう勝手に解釈して、おそらく空いていると思われる扉をゆっくり開いた。
――カランカラン
小さく鐘の音が辺りに響いた。
少し驚いたが、訪問者を知らせる音が鳴るということは、
迎え入れることを想定した建物であることは間違いなく、
生活感を強く感じることができた。
扉の中は玄関のようになっており、2・3歩歩いた先は少し高い段差に続いていた。
どうぞここで靴を脱いでくださいと示されている見慣れた玄関だ。
ただ、1つ見慣れた玄関と違う点があり、
それは、靴を脱いだ先、
2・3歩も歩かないうちにまた扉があるということだった。
すこし不思議に思ったが靴を脱いだ流れで、2つ目の扉を開いた。
今度は引くタイプではなく、押すタイプの扉だ。
ガチャ…カランカラン…
入口の鐘の音よりも高い音が鳴ったような気がする。
扉の先は少し薄暗く、先はよく見えないけれど、店のカウンターらしき木造のテーブルが目に入った。
内装は木造の棚が並んでおり、
小さな壺や見慣れない分厚い書物なんかが少し埃をかぶってもいたりもして
なんだか骨董品屋のような印象を受けた。
電灯らしきものははとくになく先ほど外で見た様々な形の窓から
光を取り入れているといった感じになっている。
さらに思ったより天井は高く、灯り窓のような窓がいくつもついていた。
それになにやらポコポコと水が流れるような音が聞こえる。
「ごめんくださーい」
天井が高いだけに自分の声がよく響いた。
それでも奥から返事はない…。
今度はもう少し大きな声で呼びかけようと息を少し大きく吸ったその時、
奥から何かホワホワした光、弱弱しいとは何か少しちがう神秘的な光が見えるのと同時に女性の声が響いた。
「はいはーい。」
返事とともに光をまとった女性が奥から出てきて続けて言った。
「あら、珍しいお客さんだこと」
歳は30後半か40代前半といったところだろうか、
声の主は、黄金色で少しカールがかかった髪を胸まで伸ばしており、
茶色のローブのような服を着ていた。
「あ、えっと、勝手に入ってごめんなさい。」
外の様子から早朝ということは感じ取っていたので、
おそらく営業時間外だろうと、挨拶の前にお詫びをした。
「あーいいの、いいの。うちはわりとオープンだから。
奥にソファーがあるからちょっと掛けて待ってて」
そう言うとローブの女性はカウンターの奥へと移動し、
なにやらガサゴソと物を整理し始めた。
そう声はかけられながらも、
「はい、わかりました」と客のように振る舞うには、何か違うと思い
まずは自分がここに辿り着いた経緯を説明しなくてはと、私は口を開いた。
「あの、私この世界とは別の世界から来て…えっと…」
何から説明すればいいだろうか、
アカデミーの試験でこの世界に来た事、3年間この世界で暮さなければいけないこと
そもそもアカデミーで通じるのだろうか、何から話すべきか、
考えが交錯し言葉に詰まってしまった。
「あー。ここでは珍しくないから気にしなくていいよ。
ささ、あがってあがって。」
ローブの女性がそう言いながら人差し指で私のほうへ合図すると
彼女の身をまとっていた光の1つが私のほうへ飛んできて、私の周りを一周したと思ったら
「ついてこい」といわんばかりにゆっくりと奥のほうへ進んでいった。
私もその言葉と光に導かれるまま、歩き進んだ。
導かれた先を行くと小部屋らしきところにたどり着いた。
その部屋には、2人ほど掛けられるソファーの他に勉強机のような机と1人掛けのイスが1つ
そのイスはソファーと向かい合うような形に向いていた。
机には細くて少し青がかった透明な花瓶と透明な花のオブジェが置かれていた。
そして次に目に入ったのは外から見つけたベランダらしき窓に使われる見慣れた長方形の窓だった。
外から覗いた時は曇りがかっていた窓も内側からは外の様子がくっきり見えていた。
草木が生い茂り、自分が歩いてきた小道が続いているのが見える。
木の温もりを感じながら緑豊かな自然の風景を楽しめるこの部屋は、来訪者をもてなす客室といったところだろうか。
部屋の様子や景色を見てあれこれ考えをめぐらせているとローブの女性がティーポットとカップを手にやってきた。
「いい景色でしょう、夏にはリスが、冬には野うさぎがやってくることもあるのよ。さ、掛けて。」
とソファーへの着席を促され、ローブの女性も同じく向かいの一人掛け用のイスに腰をおろした。
「自己紹介がまだだったね。私はこのドーム、カシオペイアを管理してるスミカという。」
そう名乗りながらスミカはポットからカップに注ぐ動作をする。
私も名乗ろうと口を開こうとするが、スミカに口元を人差し指で遮られる
スミカの目線はポットから注がれようとしているカップに向けられており、私もつられるように視線をスミカからカップに移した。
ポットからはカップに何か液体が注がれる様子はなく、変わりにホワホワとした薄黄色の光が注がれていた。
その光がカップで飲み物を飲む際にちょうどいいラインまで注がれると、光はそっと失われるかのように消え、カップには薄黄色の液体が溜まっていた。
「さ、飲みな。きっと落ち着くよ。」
そうスミカから促され、カップの飲み物に口をつけた。
熱すぎず温すぎず、口元から心を優しくあたためるかのような感覚を覚えた。
一口飲み終えると、昔どこかで飲んだことのある後味を感じた。
「ただのハーブティーよ、ただし魔法のね」
スミカは不思議そうに飲んでいたと思われる私に言葉をかけ、ウィンクして見せた。
そのウィンクにハッとし、何か言わなくてはと口を開く
「えっと…」
(ん…? どうして私はこんなところでお茶してるんだ…?それも中学の頃の制服で…)
「えっと…私ここで何か言わなくちゃ、いや…何か大事なことをあなたに説明しなくちゃいけなかったような…」
うまく言葉がでて来ない。
「スミカでいいよ。」
そう温かな笑みで目の前のローブの女性、スミカは答える
(思い出せない…。覚えていることは…)
ここまでの会話を一言一言頭の中で遡った。それも可能な限り早く。
頭の中でスミカと魔法のハーブティのことが逆再生され、また記憶が巻き戻される。
気が付いた時には私はその場で立ち上がってスミカに迫っていた。
「スミカさん、私何かしなくちゃいけなくてここに来た気がするんですっ!」
(思い出せ、思い出せ、ここはどこ、私は何を、私はどうして…)
(私は)
(私は…私は。)
(私はっ…!)
『誰だ…?(誰だ…?)』
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