魔法使いの「願い事6つだけ」

汐田 瀬羽音

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第1章

第20話:雷竜討伐作戦②

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ワッカの命により総勢21名の鳥人が小屋の地下室に集結した。

小屋の地下は作戦会議の場に普段から使用しているらしく、大きな机に使い古された周辺地図が広げられている。

雷球でぼんやり照らされた地下室は作戦会議に相応しい陰湿っぷりで今にも極秘会議が始まりそうだった。

「ジュード率いる奇襲隊が雷竜らしき存在と遭遇したのが今から43分ほど前、ここから北東へ8キロのガガト高見台付近、間違いないか?」

「はい、間違いありません」

淡々と情報を確認、周りへ周知するワッカにジュードが答える。

「この高見台でライラックが雷吸砲を発砲するも撃退に失敗、高見台は半壊状態、雷吸砲も恐らく使い物にならないだろう」

「ったく、どうせ早まって有効射程ギリギリから撃ったんだろう?堪え性の無い男はこれだから困る…」
そうワッカに口を挟むのは雷舞隊の隊長、フレイヤだった。

「るっせえ…聞こえてんだよ…」
フレイヤの譴責に耳が痛そうに答えるライラック

「フレイヤその辺にしてやれ、撃退に失敗したとはいえ、ライラックの負傷で収まっている。被害拡大の前にこうして全員が集まれていることが何よりの成果だ」

「棟梁…」
ワッカのフォローにライラックは今にも泣きそうに震えていた。

「軽症で良かったな。翼は折れてないな?」

「も、もちろんだ、このままじゃ親父さんに顔向けできねえ…」

「よし、では続けるぞ」

フレイヤは腕組みをしながらも手の甲をひらひら靡かせることで了解の合図を送る。

「ジュードの話によればその後、雷竜はあたりを回遊、雷吸砲に異常なまでに反応したことから残りの高見台を探している可能性が高い」

「はっ、回遊とはずいぶんなご身分だ、アタシらが好きなだけ踊らせてやるよ」

啖呵を切るフレイヤにワッカは静かに頷き、話を続ける

「勘のいいやつはもう察しがついてるかもしれんが、今回は雷吸砲をおとりに迎撃地帯まで誘導、そこで一気に仕留める!ジュード、残り3つの高見台、まだ生きてるか偵察を頼めるか?」

「御意」

淡々と進められるおとり作戦にフレイヤは掌でテーブルを軽く叩く形で待ったをかける。
「おいおい、雷吸砲全部壊されちまったら、どうやって弱らせるんだよ」

「残り3つの雷吸砲のうち最低1つは生きてる前提の話にはなるが…今回、2つは奴にくれてやろうと考えている」

「なっ!?棟梁、わざわざくれてやる必要はねえだろう!?」

「雷吸砲に反応するということは、動力の雷吸石に反応しているといっていいだろう、そいつをエサに奴が食らいつくのをただじっと待っているのは少し悠長だと思わないか?」

「そりゃあ迎撃地点まで手っ取り早く誘導できりゃ、苦労しねえけど…ってまさか…!」

「そう、そのまさかだ。破壊された雷吸砲から雷吸石をフレイヤの部隊が回収、
 そのまま迎撃地点まで奴にエサを見せびらかしながら誘導。そこで俺たちが獲るってわけだ」

「棟梁…確かに踊らせるのはアタシらの十八番だ。だけどケツにエサぶら下げて引っ張っていくってのはアタシら仕事じゃないんじゃないか?そういうのはライクラックにやらせときゃいいじゃねえか」

「俺はこのなかで一番速く飛び一番上手く踊らせる気高き狩人を一人しか知らないんだが…」

目を瞑りながら饒舌に語るワッカにフレイヤも流石に棟梁の面目は潰せまいと承諾する。

「あー!わかったよ!あんたたち!私から遅れをとったりコースから外したら許さないよ!」

「はっ!」
雷舞隊の若い男女達が声を揃えて返事をした。

その声によし来た!とばかりに笑みを浮かべたワッカは作戦を続ける。

「今回の仕留め方は突き上げ方式で行きたいと思う。
 迎撃地点まで誘導できたら奇襲隊が雷竜落下地点まで体力を削り、
 俺が地上から上昇、奴の体を頭からケツまで貫く」

「地上までの誘導は誰がするのさ?」

「最悪、俺がやる」

「棟梁あんたは地上から打ち出される槍だ、あんたが囮で打ち上がるんじゃ奴がギリギリで減速しかねない!その結果、ケツまで届かず奴の体内で丸焼きだ。もうそんなの見たかないよ」

「では、私がやります」

そう声を上げたのはライリーンだった。

「お前はダメだ。万が一仕留めきれなかったら…」

「私がやります!」
気がつけば私は手をあげていた。
作戦の内容も初めて聞くモノの名前が出てきて大体しか把握できていないけれど、
誰かが困っていて私でも力になれる可能性が少しでもあるなら、立ち上がるべきだと考えたんだと思う。

今さっきまで議論を交わしていた者、口を硬くして作戦を頭の中でシミュレートしていた者、名誉のため覚悟を決めた者。

それぞれが私に注目し、しばらく沈黙が続いた。

最初に口を開いたのはライリーンだった。

「ダメです。あなたは大事な客人です、傷一つでもつければ私たち一族の恥です!」

そう言いながら私の手をとるライリーンの手を握り返し
私は彼らを安心させるように力強く答える

「私、こうみえても魔術師見習いなんです。魔術は使えませんが、魔法なら経験がないこともありません!」

今振り返ると私はとんでもないことを言ったに違いない。
魔術師の見習いというだけでも頼りないのに、魔術は使えないとキッパリ言い切ってしまったこと、それなのに魔法は使ったことがあると……。
なんとも嘘くさい話だ。

それでも胸の奥がこそばゆい感覚を覚えながらも、私は堂々と胸を張ってみせる。

「チチチ?」
さっきから胸がこそばゆいと思っていたら、
首からぶら下げた巾着から道中知り合ったリスが心配そうにこちらを見ていた。

「心配ないよ。きっと大丈夫。」

リスのおかげで少し緊張もほぐれかかったと思った矢先、
ワッカが厳しく私に視線を向けた。

「いいや、駄目だ。スミカさんから危ないことは無しだと言われているのは君も聞いていただろう?」

「では、私にとって危ないことでなければいいんですね?」

「屁理屈を言っても駄目だ!」

「じゃあ、どうすれば手伝わせてくれますかっ!」

ワッカにつられて思わず声を荒げてしまった。
そんな私たちを見かねてか、フレイヤが口を開いた。

「そこまでそのお嬢ちゃんが言うのなら、その魔法とやらの力をアタシらにみせて、危険が及ばないことを証明して見せとくれよ」

百聞は一見に如かず、内心、できる自信は半分程度だったが、残りの半分は私の魔術の師匠を信じることで不安は吹き飛んだ。

「わかりました」

「お、おい」
すかさず、間に入って制止しようとするワッカに間髪入れずにフレイヤは続ける。

「今からあんたに向かって雷撃を飛ばす。威力は抑えておくがまともに食らえば、数十秒は体を動かせなくなるくらいの衝撃だ。これを防げるかい?」


「できるはずです。やってみせます!」
自分に言い聞かせるように、深く力強く言葉にした。


「いい覚悟だ。ちいと狭いから奇襲隊の連中は少しの間、上にいっててくれないか」フレイヤはそういうと私に向かって掌を見せ、腕をこちらにつき出してきた。
それと同時にフレイヤの肘あたりからビリビリとした電流がうねりをあげて、こちらに向けられている掌に集まりだす。

フレイヤの体毛が逆立ち、これらが強力な電気を帯びていることがヒシヒシと伝わってきた。

「準備はいいかい?私が5つ数えたらあんたにこの雷撃を放つ」

「はい、いつでも…」
思わず息をのむが、それも束の間、フレイヤからカウントダウンが開始される。
それと同時に目を瞑っていても感じる何とも言えない圧力が私に襲いかかった。

「5」

(大丈夫、まずは気持ちを集中させる)

「4」

(思いを集めて、それを願いに)

「3」

(願いを一瞬で爆発、一瞬で爆発…)

「2」

(私の思いは……)

「1」

(私の願いは……!)

「0」

(私を……って!)

その瞬間、私は力強く目を見開くと、
フレイヤの掌から眩い光を発しながら竜の姿をした雷撃が私に向けて放たれた。
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