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第四・五話 悪魔の軍馬
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オルディウスとヴレンハイトは、大都市タイジェル郊外にある馬牧場を訪ねていた。
パーティを組んで依頼を受けるようになると、移動手段として馬を使う頻度が上がると考えたからだ。
オルディウスやヴレンハイトは、自身の体重に加えて大剣と鎧の分まで含めると、その総重量は200kgを超える。
大柄な馬がいたとしても1頭ではなく2頭は必要と考え、大牧場の話を聞いてやってきたというわけだ。
しかし、いかな大牧場とは言え、この二人を乗せるに足りる馬はいなかった。
強靭な駄馬がいるにはいるが、場合によっては武装と人を別々に運ばねばならない。
戦闘機動まではまかなえないということである。
事実、前回の依頼で使った馬はかなり強靭な部類であったにもかかわらず、乗り潰してしまっている。
牧場主も難しい顔をしてイリアス兄弟と話していたが、ふと、何かに思い当たった。
それはジェルザー・ホースという別名「悪魔の軍馬」と呼ばれる魔獣の話だった。
神代の時代に神々によって生み出された騎乗用の魔獣であり、今でも時折野生馬の集団を率いたりしているところが目撃されている。
ジェルザー・ホースは通常の馬と交配し、その血脈からは3割程度の確率でジェルザー・ホースの子が生まれるとされている。
ただ、人に対してはなかなか心を許さず、時として戦いになる(襲われる)ことでも知られていた。
その反面、一度主(もしくは友)と認めた者には生涯付き従うと言われ、その強靭さ、戦闘力の高さは野生馬の比ではないと伝わっていた。
牧場主の話によれば、このジェルザー・ホースをリーダーに戴く野生馬の集団がタイジェルから2日ほどの丘陵地にやってきているということだった。
それもジェルザー・ホースは一頭ではなく複数頭いるというおまけ付きで、だ。
乗りこなせるかどうかはあんたら次第だがな、と、牧場主は手をひらひらさせながら言った。
先に述べた通り、ジェルザー・ホースに認められるのは生半可なことではなく、その目撃例こそあるものの、乗りこなせたという例は滅多に聞かなかった。
だが、イリアス兄弟としては、どうしてもこのジェルザー・ホースを乗りこなしたいと考えた。
アイオリアたちに事情を話し、イリアス兄弟は件の丘陵地に向かうことにした。
2日後。
件の丘陵地にて。
風下を選んで剣を置き、注意深く周囲を探った。
明らかに蹄の痕がある。
そのなかに幾つもの力強い蹄の痕があった。
一目でわかるそれは、その主がどれほど巨大で力強いかを雄弁に語っていた。
イリアス兄弟は内心舌を巻いた。
(これほどの魔獣だとは)
強靭な軍馬、というイメージが幻想であったと思い知らされたのだ。
この僅かな痕跡に刻まれた「強さ」はそんな枠を超えた、まさに魔獣と呼ぶに相応しい代物だったのである。
ふと、遠くから嘶きが聞こえた気がした。
オルディウスがわずかに首を上に向ける。
(まだ―――風下だ)
慎重に歩を進ませ、稜線から僅かに顔をのぞかせる。
―――いた。
30頭ほどいるだろうか。
野生馬の集団。
その中に、それ「ら」は居た。
明らかに巨大な体躯、煌めくような体表とたてがみ、そして桁違いの威圧感。
体表の一部は骨質の装甲状であり、普通の生物ではないと一目で知れる。
―――剣を帯びていないことがこれほど心細くなるとは。
鉄の匂いで気付かれないようにすべきと考えた結果なのだが、これほどの戦力の魔獣とは想定していなかったのである。
群れの動きが変わった。
めいめいに草をはんでいた集団が、統率され丘陵地に隣接する林に整然と向かい始めた。
(気付かれたか)
逃げられる落胆と戦わずに済む安心の不釣り合いな二重奏を心に感じたのも束の間、群れの中から2頭こちらに向かってくるのが見えた。
明らかに「強い」。
見ればわかる。
イリアス兄弟は身を隠すのをやめ、すっくと立ち上がった。
とうに居場所はバレている。
目的も知れているだろう。
ならば。
やるしかない。
オルディウスとヴレンハイトが互いの拳を合わせる。
向こうも一対一でやる気だ。
あいつらも戦士なのだと理解単語った瞬間、不安は吹き飛んだ。
二人と二頭は、それぞれ分かれ、そして互いの相手に猛進した。
そして戦いが幕を開けた。
イリアス兄弟はその身の裡に強大な「大地」の力を秘めている。
肉体の強靭さ、すなわち、耐久力、強度、筋力あらゆる面で人類を凌駕できる。
それでも易々と組み伏せられるような相手ではない。
2mほどあるイリアス兄弟と魔獣の体高はほぼ遜色ない。
体重に至っては4,5倍はあるかもしれない。
その上、相手の体には各所に生得の装甲が見えている。
最初の突撃を躱しざま、その横腹に拳を突き入れる。
硬い。
大地の精霊力で強靭化していない人間なら、骨が砕けていてもおかしくない硬さだ。
間髪入れず、後ろ足が跳ね上がるのを見越して、転がり避ける。
ジェルザー・ホースが即座に振り向き、再び前脚で踏みつけようとする。
2m近い高さから振り下ろされる脚は、とてつもない威力を秘めている。
ずしっっと大地に蹄の跡を築いたそれも躱し、今度は首元に掌底を叩き込む。
装甲がないにも関わらず、そこも硬い。
悪魔の軍馬の名前に偽りはなかった。
これは本当に戦うために作られた魔獣なのだと思い知らされる。
首周りは太すぎて、到底絞め落とすのは無理だ。
ならば打ち倒すしかない。
噛みつきを左腕で受けざま、その顎の付け根に拳を叩き込む。
いかな生物も関節まで鍛えるのは無理だ。
それでも、拳に帰ってくる感触は鈍い。
とはいえ、ジェルザー・ホースもさすがに噛みつきを外した。
「――――――!!!!!!」
呼吸を止め、ジェルザー・ホースの顔面、首に猛烈な拳の嵐を叩き込む。
防御を捨てて、一撃ごとに全力を込めた猛攻だった。
さしものジェルザー・ホースも後ずさる。
大地の力で全力強化されたオルディウスの拳は、岩塊を割るほどの威力を秘めている。
剣を帯びていないとは言え、イリアス兄弟の戦闘力も人間のそれではないのだ。
そうして二人と二頭の激闘は、いつ果てるともなく続いた。
それから一刻(約2時間)。
二人と二頭は丘陵地に寝そべっていた。
両者はまさに異次元の戦いを演じ、疲れ果てたのである。
イリアス兄弟の全身には幾つもの噛み痕が残り、ジェルザー・ホースの二頭もその体表に汗をにじませていた。
ずるり、とオルディウスが半身を引き起こす。
先程まで戦っていた黒毛のジェルザー・ホースに少しだけ身を寄せ、そしてまた倒れた。
ジェルザー・ホースがオルディウスの手に鼻を寄せ、スンスンと鼻を鳴らす。
そうして、ぺろり、とその手を舐めた。
オルディウスは疲労にぼやけた目でその様子を眺めていた。
(俺はクォシェン。お前は?)
オルディウスの意識に誰かが問いかけてきた。
ああ、お前か。
「…イリアス・オルディウスだ。」
(オルディウスか。いいだろう、俺の背を貸してやる)
「ああ…ありがとう。」
(ただし)
「…?」
(俺の背の上以外で死ぬな)
「…わかった。」
疲れを押しのけて、オルディウスは精一杯笑ってみせた。
この後、2人と2頭は、伝説の再来としてタイジェルの噂になった。
パーティを組んで依頼を受けるようになると、移動手段として馬を使う頻度が上がると考えたからだ。
オルディウスやヴレンハイトは、自身の体重に加えて大剣と鎧の分まで含めると、その総重量は200kgを超える。
大柄な馬がいたとしても1頭ではなく2頭は必要と考え、大牧場の話を聞いてやってきたというわけだ。
しかし、いかな大牧場とは言え、この二人を乗せるに足りる馬はいなかった。
強靭な駄馬がいるにはいるが、場合によっては武装と人を別々に運ばねばならない。
戦闘機動まではまかなえないということである。
事実、前回の依頼で使った馬はかなり強靭な部類であったにもかかわらず、乗り潰してしまっている。
牧場主も難しい顔をしてイリアス兄弟と話していたが、ふと、何かに思い当たった。
それはジェルザー・ホースという別名「悪魔の軍馬」と呼ばれる魔獣の話だった。
神代の時代に神々によって生み出された騎乗用の魔獣であり、今でも時折野生馬の集団を率いたりしているところが目撃されている。
ジェルザー・ホースは通常の馬と交配し、その血脈からは3割程度の確率でジェルザー・ホースの子が生まれるとされている。
ただ、人に対してはなかなか心を許さず、時として戦いになる(襲われる)ことでも知られていた。
その反面、一度主(もしくは友)と認めた者には生涯付き従うと言われ、その強靭さ、戦闘力の高さは野生馬の比ではないと伝わっていた。
牧場主の話によれば、このジェルザー・ホースをリーダーに戴く野生馬の集団がタイジェルから2日ほどの丘陵地にやってきているということだった。
それもジェルザー・ホースは一頭ではなく複数頭いるというおまけ付きで、だ。
乗りこなせるかどうかはあんたら次第だがな、と、牧場主は手をひらひらさせながら言った。
先に述べた通り、ジェルザー・ホースに認められるのは生半可なことではなく、その目撃例こそあるものの、乗りこなせたという例は滅多に聞かなかった。
だが、イリアス兄弟としては、どうしてもこのジェルザー・ホースを乗りこなしたいと考えた。
アイオリアたちに事情を話し、イリアス兄弟は件の丘陵地に向かうことにした。
2日後。
件の丘陵地にて。
風下を選んで剣を置き、注意深く周囲を探った。
明らかに蹄の痕がある。
そのなかに幾つもの力強い蹄の痕があった。
一目でわかるそれは、その主がどれほど巨大で力強いかを雄弁に語っていた。
イリアス兄弟は内心舌を巻いた。
(これほどの魔獣だとは)
強靭な軍馬、というイメージが幻想であったと思い知らされたのだ。
この僅かな痕跡に刻まれた「強さ」はそんな枠を超えた、まさに魔獣と呼ぶに相応しい代物だったのである。
ふと、遠くから嘶きが聞こえた気がした。
オルディウスがわずかに首を上に向ける。
(まだ―――風下だ)
慎重に歩を進ませ、稜線から僅かに顔をのぞかせる。
―――いた。
30頭ほどいるだろうか。
野生馬の集団。
その中に、それ「ら」は居た。
明らかに巨大な体躯、煌めくような体表とたてがみ、そして桁違いの威圧感。
体表の一部は骨質の装甲状であり、普通の生物ではないと一目で知れる。
―――剣を帯びていないことがこれほど心細くなるとは。
鉄の匂いで気付かれないようにすべきと考えた結果なのだが、これほどの戦力の魔獣とは想定していなかったのである。
群れの動きが変わった。
めいめいに草をはんでいた集団が、統率され丘陵地に隣接する林に整然と向かい始めた。
(気付かれたか)
逃げられる落胆と戦わずに済む安心の不釣り合いな二重奏を心に感じたのも束の間、群れの中から2頭こちらに向かってくるのが見えた。
明らかに「強い」。
見ればわかる。
イリアス兄弟は身を隠すのをやめ、すっくと立ち上がった。
とうに居場所はバレている。
目的も知れているだろう。
ならば。
やるしかない。
オルディウスとヴレンハイトが互いの拳を合わせる。
向こうも一対一でやる気だ。
あいつらも戦士なのだと理解単語った瞬間、不安は吹き飛んだ。
二人と二頭は、それぞれ分かれ、そして互いの相手に猛進した。
そして戦いが幕を開けた。
イリアス兄弟はその身の裡に強大な「大地」の力を秘めている。
肉体の強靭さ、すなわち、耐久力、強度、筋力あらゆる面で人類を凌駕できる。
それでも易々と組み伏せられるような相手ではない。
2mほどあるイリアス兄弟と魔獣の体高はほぼ遜色ない。
体重に至っては4,5倍はあるかもしれない。
その上、相手の体には各所に生得の装甲が見えている。
最初の突撃を躱しざま、その横腹に拳を突き入れる。
硬い。
大地の精霊力で強靭化していない人間なら、骨が砕けていてもおかしくない硬さだ。
間髪入れず、後ろ足が跳ね上がるのを見越して、転がり避ける。
ジェルザー・ホースが即座に振り向き、再び前脚で踏みつけようとする。
2m近い高さから振り下ろされる脚は、とてつもない威力を秘めている。
ずしっっと大地に蹄の跡を築いたそれも躱し、今度は首元に掌底を叩き込む。
装甲がないにも関わらず、そこも硬い。
悪魔の軍馬の名前に偽りはなかった。
これは本当に戦うために作られた魔獣なのだと思い知らされる。
首周りは太すぎて、到底絞め落とすのは無理だ。
ならば打ち倒すしかない。
噛みつきを左腕で受けざま、その顎の付け根に拳を叩き込む。
いかな生物も関節まで鍛えるのは無理だ。
それでも、拳に帰ってくる感触は鈍い。
とはいえ、ジェルザー・ホースもさすがに噛みつきを外した。
「――――――!!!!!!」
呼吸を止め、ジェルザー・ホースの顔面、首に猛烈な拳の嵐を叩き込む。
防御を捨てて、一撃ごとに全力を込めた猛攻だった。
さしものジェルザー・ホースも後ずさる。
大地の力で全力強化されたオルディウスの拳は、岩塊を割るほどの威力を秘めている。
剣を帯びていないとは言え、イリアス兄弟の戦闘力も人間のそれではないのだ。
そうして二人と二頭の激闘は、いつ果てるともなく続いた。
それから一刻(約2時間)。
二人と二頭は丘陵地に寝そべっていた。
両者はまさに異次元の戦いを演じ、疲れ果てたのである。
イリアス兄弟の全身には幾つもの噛み痕が残り、ジェルザー・ホースの二頭もその体表に汗をにじませていた。
ずるり、とオルディウスが半身を引き起こす。
先程まで戦っていた黒毛のジェルザー・ホースに少しだけ身を寄せ、そしてまた倒れた。
ジェルザー・ホースがオルディウスの手に鼻を寄せ、スンスンと鼻を鳴らす。
そうして、ぺろり、とその手を舐めた。
オルディウスは疲労にぼやけた目でその様子を眺めていた。
(俺はクォシェン。お前は?)
オルディウスの意識に誰かが問いかけてきた。
ああ、お前か。
「…イリアス・オルディウスだ。」
(オルディウスか。いいだろう、俺の背を貸してやる)
「ああ…ありがとう。」
(ただし)
「…?」
(俺の背の上以外で死ぬな)
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