囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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40話 プリクラはもう行かない

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 中間試験が終わり、期末試験に向けて再スタートを切った響たちは疲れを癒すため週末に街に遊びに来ていた。

「響…こんな機会をセッティングしてくださるなんて…慈悲深いお方!」
「夏目何一人で喋ってんの?早く歩いて」
「透子さん待ってぇー!」

 今回は意図せず珍しい組み合わせになった。菖蒲と有咲が用事があるため来れないということで、残ったメンバーでブラブラと街中を闊歩する。

「あ!私あそこのパフェ食べたーい!」
「いいじゃん!行こ行こ!」
「行くの早っ、なら俺たちも行こーぜ!」

 昼ごはんもまだ食べていない状況でスイーツを食べるというのは、少し罪悪感があるものの甘味というものはそんなものさえ払拭させる力がある。

「道元のそれチョコ?あたしのいちご一口あげるから一口ちょーだい」
「お、おいっ」
「んー!やっぱりチョコもありだったかー。はい、道元も一口」
「…俺はいいや」

 菖蒲に食べさせることが度々あったため多少の耐性はあるものの、他の人間からの餌付けには慣れていないため断った。しかし、透子は『マジで美味しいから!』と響の口にパフェを詰め込んだ。思い返せば透子は、人の口に食べ物を詰め込むのが得意分野だった。

「あーあ、菖蒲ちゃん嫉妬しちゃうなー?」
「あ、いや!?そんなつもりであげた訳じゃ!」

 一華は透子の耳元で小さく囁き、透子はそれに対して声を上げる。それを眺める響の肩に手をするりとかけ、『浮気は良くない』と窘めるように語りかける。

「うぅ、うるさいな!もう兎佐美が残り食べていいよ!」
「いいの!?やったね!なら代わりに私のあげるよっ」

 そんな二人を見ながら佑馬が『俺らも交換しちゃう!?』とベタベタしながら言ってきたので、大きな口で佑馬のパフェに食らいついた。美味しい所を食べられた佑馬は、生地と残ったクリームだけのパフェと呼べるのかも分からないものを見つめていた。


「パフェも食べたし、次はゲーセン行かない!?」
「兎佐美さんナイスアイディア!」

 ゲーセンにはなかなか行く機会が無かったため、ワクワクした気持ちで自動ドアをくぐる。騒音の中でピカピカ光る明かりに目を眩ませながらも、楽しそうなゲーム機やUFOキャッチャーに目を輝かせる。

「最初は太鼓の鉄人やろ!」
「なら一番スコア低かったやつがジュース奢りで」

 響の家でゲームをした時の透子は、ジャンプが出来ないほどゲーム音痴だったのだが今回は超高速で飛んでくるノーツを華麗に捌く。

『フルコンボだドコ!!』
「透子さん、上手すぎない?」
「あたし子供の頃祭りの小太鼓やってたから、こういう打楽器は得意なんだよねー」

 透子は指でVサインを作り、飲みたいジュースを選んでいた。
 残った三人はどんぐりの背比べな結果となり、渋々佑馬が自販機に千円札を入れた。

「響!あのフィギュアかっこよくね!?」
「確かに…ちょっと欲しいな」

 ジュースを買ったあとブラブラとUFOキャッチャーを見ていた時に二人で造形の良いフィギュアを見つけた。二人で交互にお金を入れていき、思いのほか数百円で取ることが出来、フィギュアは響のタイミングで取れたのだが、佑馬が羨ましそうな顔で見ていたので『パフェの分な』と言い佑馬に渡した。

「愛してる…神棚に飾るよ」

 フィギュアの箱に頬ずりする佑馬を尻目に、透子が横目である台を凝視していた。響も目向けると、透子の好きなアニメのフィギュアが置かれていた。
 響は気を利かせて一華たちに話を振る。

「あのホラーシューティングゲームしないか?」
「いいね!ああいうの好き!透子ちゃん行こ!」
「あ、ごめんあたしホラーは苦手だから、ここら辺でゲームして待ってるよ」

 透子は響にウインクをしてUFOキャッチャーの巣窟に消えていった。
 残った三人でゲームをしたが、佑馬はホラーが得意ではなかったようで終始響に抱きついていた。

 ゲームが終わり、透子の背負っていたバックが大きく膨れたのを確認した後、少しベンチで休憩をした。

「んー!やっぱりゲームセンターは楽しいね!」
「女の子がいるだけで楽しさ倍増!!」

 佑馬の冗談に苦笑いする一華は手をポンと叩き『あ!』と声を上げ、指を指す。

「記念にプリクラ撮らない!?」
「ありー」

 響は気乗りしなかったが佑馬が『こんな機会滅多にないぜ!?』と手を引っ張るので嫌々プリクラの幕をくぐる。

『みんなポーズはいいかなー?行くよー!はいチーズ!』
「道元顎の下でピースして!」
「こ、こうか?」

 プリクラのアナウンスに四苦八苦しながらもプリクラを撮りきる。

「っぷ!道元どこむいてんの?」
「なんでプリクラでこんなに人相悪くなるんだよ」

 響はプリクラを撮った後、尿意を催したためトイレに駆け込んだ。

「そんなに俺って目つき悪いのか?」

 響は鏡の前でプリクラのポーズを再現する。

「おーい響、やっぱ俺もトイレ行くわーー……」
「あ」

 佑馬に無様な姿を見られた響は、鏡に映る自分自身を見つめながら無になった。
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