そこは獣人たちの世界

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第一章

世界の話

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「さて、昼飯も食い終えたところで、ちゃんと今後のことを話さないとな。」

「今後のことか、僕をどうするのかってことだね。」

なり行きで家まで連れてきてもらえたけど、ずっといるわけにもいかないだろう。といっても僕の行く当てなんてない。夜寝て朝には元の世界かもしれないけど。

「とりあえず今日はこの家で寝てもらって、朝にまだ元の世界に戻れなかったら、退屈だろうがこの家でしばらく過ごすといいだろ。」

「え、それはちょっと邪魔じゃない?」

「邪魔とかそういうことは気にする必要はない。ただ言ったように明日か明後日には発情期に入るから、場合によっては俺は部屋にこもることもあるけどな。だから寝るところはそこのソファーになる。他にもベッドがあればよかったんだろうが、広いベッド一つだけなんだよな。普段なら俺がソファーでといえるんだが、篭れる部屋もそこだけだしな。」

「それは気にしなくていいよ。むしろベッド一つしかないならお世話になってる僕がソファーなのは当然だし。」

ソファーで寝た経験はないけど、大きいソファーだから僕なら横になっても体をかがめないで寝れそうだし、床で寝なくていいなら全然問題ない。

「悪いな、何かかけるものは持ってくる。今は平気だがまだこの時期少し夜は冷えるからな。」

「あ、やっぱ時期によって温度の変化とかはあるんだね。」

「あぁ、さすがにそりゃあるぞ。というかこの世界事情を説明したほうがいいかどうかだよな。どうする?」

「ガロがよければ聞きたいけど。」

「そうか、ちと長くなるかもだがわからないところがあったらそのたびに聞いてくれよ。」

そういうと僕にいろいろ説明してくれた。まず一月とか一週間みたいな単位はないし、何月とか何曜日とかもないけど、けどちゃんと一日二日の区別はあること。ただし聞いてたように太陽が昇るのが区切りになってるそうだ。
次に一年の周期について、一年という概念はあるらしいけど1000日で一年だそうで、思わず絶句してしまった。どうしてその区切りなのか聞いたら月が真っ赤に染まる日が1000日ごとにあるのが由来だそうだ。
それで年齢のことも聞くと、ガロは20歳だそうだ。あんまそうは見えないと思ったら今年が20歳で、次の赤い月で21歳だとのこと、つまり誕生日という概念はないということだ。
例えば赤い月の日に生まれても、次の日には1歳だし、赤い月の次の日に生まれたら次の赤い月までは0歳だと質問したら帰ってきた。ちょっとがばがばな気もするけど、もうそういうものだから違和感のあるやつはいないだろとも言われた。
ちなみにそのあと元の世界ではちょっとまえに26歳になったところだったけどと言ったら驚いた顔をされたが、元の世界では一年が365日周期、2か月前だからおよそ60日前かなと付け足したら、それだとこの世界では何歳になるんだなんて話になってしまった。
多分この世界計算だと10歳くらいの日数しかたってないけど、ガロはわかってない雰囲気なので同じくらいじゃないといっておいた。

「こう話すと結構違いがあるもんだな。そういえばキオの世界での成人はいくつだったんだ?俺たちの世界では6歳で仕事できるようになる。もちろんギルドでもな。さらに10歳からは婚約もできるようになる。」

「6歳でもうギルドでの仕事!?いくら何でもそれって危険じゃないの?」

あ、でも一番少なくても5000日だから元の世界基準だと10歳はいってるか。それでも結構若い気もするけど。

「確かに若いがその頃より前から戦いは学ぶ。町の外だと結構近くに角兎なんかはいるからな。あれは弱い魔物だが突進されて角が急所に当たれば死ぬ。そういう世界だからな。」

「えっと、その、町の中だけで生きていくこともできるんだよね?」

「もちろんだ、戦いが合わないやつはそうしてる。この町にだって魔物除けのない出入り口には警備兵もいる。それでも町の中に魔物が入ってこない可能性はゼロじゃないからな。ある程度の自衛はできるようにだれでも戦闘訓練をガキの頃にやったはずだ。」

うっ思ってる以上に戦闘世界なんだな。戦闘経験なんて僕には当然ない。魔物に襲われたら真っ先に死ぬ自身があるおそらく角兎とやらにも勝てないんだろう。

「ちなみにさ、魔物はどのレベルまで襲うの?なんでも見境なくとか?」

「魔物にもよるな、角兎は同種の角兎は襲わないが、それ以外は縄張りに入れば見境なく何でも襲う。暴れ牛は暴れまわり続けているから同種同士でぶつかって死んでることもある。疾走豚は走るのが好きなだけで何かを襲うような魔物じゃないが、走ってるときに見えなくなって人にぶつかることはあるな。」

「もしかして飼いならされた魔物っていうのが疾走豚とか?」

「あぁそうだな。疾走豚は囲いさえあればそれを飛び越せないやつだからな。もちろん丈夫な囲いじゃないと走って突き破られちまうだろうけど。」

おうふ、魔物だからそりゃ簡単にはいかないか。いや、元の世界でも家畜の脱走とかニュースであったし、同じようなものなのかも?

「さて、他に知りたいことはあるか?」

「じゃあやっぱり魔法かな!僕でも使えるのかとか知りたいし。」

「あぁ、魔法か。それだとさっき話した6歳の時から仕事ができるって言った話にもつながるんだけどな、6歳を過ぎた赤い月以降には教会で魔法を使うための加護を得られるんだ。簡単な祈りを済ませれば一応誰でも受けられる。ただしどの属性を使えるようになるか、どのレベルまで使えるのかは個人差があるけどな。」

「おぉ!ってことは僕ももしかしたら教会で祈れば魔法が使えるかもってことだね。」

「そうかもしれないが、魔法の加護を受けてもちょっと炎が出せるだけのやつとか、水を出せるだけとかで、攻撃レベルじゃないようなやつも多いからな?」

なるほど、魔法を使えるといっても戦闘レベルかどうかはわからないのか。でもそれでもいい!やっぱ魔法が使えるかもってだけで夢があるじゃん?もしかしたら転移してきた僕ならチート的な能力かもしれないし!

「それでも使えるようになりたいなぁ。」

「そうか、どうする?それならこれから教会に行くか?」

「あ、うーん、せっかくガロは帰ってきたところだし、発情期に入ったら外に出れないんでしょ?ならそのあとでいいかな。」

僕に付き合わせて無理やり帰ってきたとはいえ、旅先から発情期をしのぐための帰宅だったはずだ。ならその間くらいは家でゆっくりしたいだろう。

「そうか?それならいいんだがな。」

「それよりガロの使える属性が知りたいんだけど、聞いてもいいかな?それとほかにどんなぞくせいがあるのかとか!」

「ん、俺か?俺は雷が使えるんだ。他の属性の話もするとちょっと長くなるぞ?」

「ガロがいいなら聞きたいね!」

そういうとまたちょっとめんどくさそうにしながらも話し始めてくれた。まず基本属性として火、水、風、土の王道パターン!さらにその4属性の上位に爆、氷、雷、樹の属性があるらしい。
だいたいの人は爆が使えれば火、氷が使えれば水のように基本属性も使えるらしいけど、ガロはちょっと特殊で雷は使えるけど風は使えないんだと言っていた。
そして火にも当然強弱があるけどそこは個人差のようで、爆が使えても火はすごく弱い人もいるし、火しか使えないけどものすごい業火を使える人もいるそうで、ガロは雷しか使えないけどかなりの力を持ってるパターンかな?
で、この8種に属さない属性に目覚めることもあるそうだが、その場合は自分で勝手に属性の名前を付けて使うんだそうだ。自由度があっていい気もするし、自由すぎる気もする。まぁそもそも珍しいパターンで総数としては少ないらしいけど。
僕が魔法に目覚められたらどの属性になるかなとちょっと期待に胸膨らめせて、この属性ならこんな魔法をなんて妄想しながらガロの話を聞いていた。
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