そこは獣人たちの世界

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第一章

*キオの成長

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あのくそじじい!まじでおかしいんじゃねぇか?なんで書類整理の量が昨日の倍量なんだよ!いや、まぁ俺は昨日が初日でキオの世話を朝にしたってのもあるんだろうが。
もちろん書類整理だけじゃなく、途中受付業務もこなしたわけだが、俺自身が訓練に出張るようなものもなくて助かった。
何とか資料整理もあわせて昨日よりは早く任された仕事をこなし終わって帰ろうって時にじじいに呼び止められてマスタールームにいるわけだ。

「こんな時間に終わるとは余裕そうじゃのガロ。これなら明日も増やしてもよいかの。」

「これ以上増やされたらたまったもんじゃねぇぞ!」

「ふむ、では仕事量はこのままでもよいが、それではあと五日はかかるぞ?増やさなければあと三日はきついじゃろうな。」

「・・・ちっ、分かった、増やしてくれて構わない。キオの試験は三日後にするつもりといってたもんな。訓練した後も変わらないか?」

一番気になってるのはじじいとキオと二人きりで訓練したってところだ。俺としてはできれば俺が見てやりたいところだが、あの動く的を俺がやったらおそらく今のキオじゃ早すぎるだろうからな。そもそもでこっちの書類仕事の手も放せなかったしな。

「・・・それなんじゃがの、試験は二日後に入れておいたわい。あの調子ならばあと一日もあれば試験を受かるほどになるじゃろうからな。」

「ほう?剣の振りは悪くはなかったが、戦闘に使えるかは怪しいところだろ?」

「今はたしかに。じゃがそのための特訓と試験じゃからな。もし合格を与えられなくともその翌日にもう一度受ければよいだけじゃ。」

「まぁそれはそうかもしれねぇが、魔法のほうはどうだったんだ?」

悔しいことにキオの魔法の成長は俺は見れてない。家でやったりするわけにもいかねぇからな。俺の中では初日の打った後座り込んでた印象しかない。

「それを見て二日後に決めたのじゃ。魔法のほうこそ明日には余裕で実践レベルじゃろうな。呑み込みがとても早い。」

「そんなレベルなのか・・・」

成長が速いのは嬉しいが、明らかに抜きんでているといえる。魔素保有量は多いほうだってのはわかってたが、こりゃ下手したら特訓で増やした今の俺以上の量を持っているのかもしれないな。
それはやはりニンゲンだからというのが関係しているのだろうか?それともキオだけが特別なんだろうか。そこばかりはわからないところだな。

「明日は剣中心に訓練をするつもりじゃ。そちらの成長度合いはわからぬが、剣も呑み込みはいいのじゃろ?だからこその二日後じゃ。」

「そうか。わかった。ならじじい、明日明後日で俺がSランクになれる量出してくれて構わないぞ。」

「そういうとおもっておったわい。資料の量が増えるだけじゃ。受付対応の時間はきょうとおなじでかまわん。お主である必要性の感じるような初級育成もないじゃろうからな。」

「そういってくれると助かる。もっともこの町の初級で育成必要なのって今の時期にはそうないだろ。」

「まぁそうじゃの。今年の初級連中の大体はもう大きな街に行っておる。ここに残っておるのはあっちの街に合わなかったものばかりじゃろうな。」

まぁそこは俺もそうだったからわかる。あの頃はこの町にいたくなかった気持ちも大きくて、隣町である程度活躍して戻ってきて遠征依頼を受けるようになったんだから。だが遠くに行くと故郷ってのはやっぱり恋しくなるもんなんだよな。

「おっと、キオ君が待っておるんじゃったな。呼び止めて悪かったの。」

「いや、まぁキオの訓練度合いがわかったから十分だ。まぁすぐに俺もすこしだが成果を直接見に行くけどな。じゃあまた明日来るぜ。」

「うむ、明日も頼むぞ。」

今日はまだ日も出ている。腹は減っちまってるが少しくらいならキオの魔法や剣捌きを見てやる時間もあるだろうと急ぎ足で地下の訓練所にと向かった。
で、そこで見たのは予想外の光景だった。キオが手を前に突き出すと水の小さな礫が現れる。そこまでは別に俺も見た光景だった。だがその礫があのじじいの使う水の的のように不規則に動き始める。それを追うように眼を動かし、剣を定めて振りぬくキオの姿だった。
思わず見とれちまったが、真剣だったキオもちょうどこっちを向いたことで気づいたようで、的と剣をすぐに片づけて障壁を解除したかと思ったらすぐに出てきてしまった。

「ガロ!お疲れさま!」

「あ、あぁ。さっきのはじじいに言われた訓練か?」

「え?あぁさっきのは違うよ。できるかなーってウォーターバレットをウォーターランブルバレットにしたら本当に不規則に動くようになったからビャクラクさんの水の的に券当て終えた後はこれで練習してたんだ。」

まだキオ的には礫レベルなんだろうが、その魔法のセンスはすでに魔法使いといってもそん色ないほどなんじゃないだろうか?もちろんあの水礫の威力はまだ弱いだろうし、粒も小さい。とはいえ粒が大きければそれだけいいとも限らない。魔法を小さく詰めて威力を上げるというやり方をするやつもいるくらいだからな。

「そうか、かなり進んじまってるようだな。予想以上だ。俺は明日明後日も忙しいが、明後日の試験は頑張れよ?」

「うん!」

あぁ、ほんとに楽しそうに返事してくれる。まだ困惑する部分も多いだろうに、それ以上に楽しんでるってわけか。それにしてもそんな無邪気な表情、まさかじじいには見せてないだろうな?ちょっと不安になってきちまったぜ。
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