51 / 60
第五十一話 お前はもう帰れない
しおりを挟む
「ごきげんよう、良い夜ですね」
「スィヤンフィ……!」
突然現れたスィヤンフィとエリーザから、無意識に距離を取るために後ずさりをする。
「見張りを欺いて逃げようとしても無駄ですよ。この実験施設は、監視水晶で常に見張ってますからね」
「最初から気づいていたなんて……なら、どうしてここまで泳がせたの?」
「実は、ようやくあなたのカプセルが完成しましてね。明日連れてくる予定だったのですが、逃げ出したあなたを見て、ここにくるだろうと踏んでいたので、放っておいた次第です」
あたしってば、完全にスィヤンフィの手のひらの上で踊ってただけだったってこと……?
「ふぁ~……気持ちよく寝てるところをたたき起こされたから、何事かと思ったけど……脱走とか映画かよ、ウケる。ていうかさ、アランへの不信感が募るように、洗脳をかけたんじゃないの? それで心をバキバキに折る~みたいな?」
「仰る通りです。もしかしたら、アランにバレないように魔法の出力を落としたせいかもしれません。それか、我々の想定よりも意志の力が強かった可能性も……ふむ、人の意志とは不確実ではあるが、なんとも興味深い」
「ちゃんとやれし、無能かよ」
半分寝ぼけているエリーザは、ゆっくりと指を鳴らす。すると、エリーザに付けられた首輪から、あたしの体全体に、強い電気が襲い掛かってきた。
「きゃあああああああ!?!?」
「きゃはっ! 良い声で鳴くじゃんウケる~! 動画に取れないのが残念過ぎて、マジぴえんだわ~!」
あたしは痛みに耐えきれず、その場に崩れ落ちた。
電気の痛みって、こんな身を引き裂かれるような感覚を覚えるくらい、凄いビリビリするんだ……い、意識が飛びかけた……。
「そうだ、ちょっとゲームしない? うちに捕まらないで、この部屋の出口に辿り着けば、お前の勝ち。その報酬として、ここから出られるというのはどう? あ、ゲーム中は電気を流さないから、安心していーよ」
「……本当に、逃してくれるの?」
「うちは嘘つかねーし」
「…………わかった」
「良いノリしてんじゃん、そーいうの、嫌いじゃないし。んじゃいくよー、時間は一分間ね! よーいはじめー!」
「うっ……ぐっ……」
体中が痛み、しびれが残っている状態でも、迫ってくるエリーザから逃げないといけない。それはわかってるけど、体が思うように動かない。
仕方がないから、カプセルを陰にして隠れるのが精一杯だ。
「あれあれ~どこかな~? うちが見つけちゃうぞ~」
なんだかくねくねした、よくわからない動きをするエリーザ。前までの清楚で引っ込み思案な人間と同一人物とは思えない。
「よくわからないけど、今のうちに……よし、もう少しで出口に……!」
「あ、手が滑っちゃった」
「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」
首輪がピカリと光ると、同時にあたしの体に強い電流が再び襲い掛かってきた。それに耐えられず、ドアの目の前で倒れこんでしまった。
「で、電気はやらないって……言ったのに……!」
「うっそー、あんなの信じるとか、バカすぎて国宝もんっしょ! ていうかさ……本当に逃げられると思った? どんだけ頭の中花畑だよ。絶対に逃がさないから。一生」
「……うぅ……ぐすっ……」
「え、泣いてんじゃんかわいそ~! あ、でもその絶望に染まった顔、中々面白いわ~。ねえねえ、こいつでもうちょっと遊びたいんだけど!」
「ダメです。これ以上は壊れてしまいますから。さて、ここをこうして……。」
痛みと悔しさで泣いていると、スィヤンフィがカプセルに手をかざして、魔法陣を展開する。それから間もなく、カプセルが重い音と共に開き、中から巨大でムキムキなウサギが出てきた。
「この個体は、私の作った魔道具による、肉体改造実験を受けた個体でしてね。転移魔法の耐久性テストに何度も用いられるほど、頑丈なのです。それと、彼らには、私の命令は絶対だと思い込む暗示をかけてあります」
「ひ、酷い……命は、あなたの都合の良いおもちゃじゃない……!」
「そんな戯言は、この世の中には通用しません。力の無い者は、力のある者に利用される定めなのですよ。さあ、小娘を拘束――」
大きなウサギがあたしを捕まえたと同時に、部屋の中かが一際眩しくなり、辺り一面に強い衝撃が襲いかかってきた。
その原因は、突然天井から地面に向かって降ってきた、凄く太い光の……レーザー? のようなものが襲い掛かってきたからだ。
「いった~……おしりうった~!」
「ああ、私の実験室が……何者だ!?」
痛みで泣き叫ぶエリーザと、研究所の破損を見て怒りに狂うスィヤンフィなど目もくれず、ビームが発生した所を確認する。
そこにいたのは……純白の毛に包まれ、九本の大きな尻尾をもつ巨大なキツネと、その背に乗る一人の男性の姿があった。
遠目だけど、あたしにはわかる。あそこにいるのは……もう会えないと思っていた……それでも、どうしてももう一度会いたかった、愛しの男性だ――
「スィヤンフィ……!」
突然現れたスィヤンフィとエリーザから、無意識に距離を取るために後ずさりをする。
「見張りを欺いて逃げようとしても無駄ですよ。この実験施設は、監視水晶で常に見張ってますからね」
「最初から気づいていたなんて……なら、どうしてここまで泳がせたの?」
「実は、ようやくあなたのカプセルが完成しましてね。明日連れてくる予定だったのですが、逃げ出したあなたを見て、ここにくるだろうと踏んでいたので、放っておいた次第です」
あたしってば、完全にスィヤンフィの手のひらの上で踊ってただけだったってこと……?
「ふぁ~……気持ちよく寝てるところをたたき起こされたから、何事かと思ったけど……脱走とか映画かよ、ウケる。ていうかさ、アランへの不信感が募るように、洗脳をかけたんじゃないの? それで心をバキバキに折る~みたいな?」
「仰る通りです。もしかしたら、アランにバレないように魔法の出力を落としたせいかもしれません。それか、我々の想定よりも意志の力が強かった可能性も……ふむ、人の意志とは不確実ではあるが、なんとも興味深い」
「ちゃんとやれし、無能かよ」
半分寝ぼけているエリーザは、ゆっくりと指を鳴らす。すると、エリーザに付けられた首輪から、あたしの体全体に、強い電気が襲い掛かってきた。
「きゃあああああああ!?!?」
「きゃはっ! 良い声で鳴くじゃんウケる~! 動画に取れないのが残念過ぎて、マジぴえんだわ~!」
あたしは痛みに耐えきれず、その場に崩れ落ちた。
電気の痛みって、こんな身を引き裂かれるような感覚を覚えるくらい、凄いビリビリするんだ……い、意識が飛びかけた……。
「そうだ、ちょっとゲームしない? うちに捕まらないで、この部屋の出口に辿り着けば、お前の勝ち。その報酬として、ここから出られるというのはどう? あ、ゲーム中は電気を流さないから、安心していーよ」
「……本当に、逃してくれるの?」
「うちは嘘つかねーし」
「…………わかった」
「良いノリしてんじゃん、そーいうの、嫌いじゃないし。んじゃいくよー、時間は一分間ね! よーいはじめー!」
「うっ……ぐっ……」
体中が痛み、しびれが残っている状態でも、迫ってくるエリーザから逃げないといけない。それはわかってるけど、体が思うように動かない。
仕方がないから、カプセルを陰にして隠れるのが精一杯だ。
「あれあれ~どこかな~? うちが見つけちゃうぞ~」
なんだかくねくねした、よくわからない動きをするエリーザ。前までの清楚で引っ込み思案な人間と同一人物とは思えない。
「よくわからないけど、今のうちに……よし、もう少しで出口に……!」
「あ、手が滑っちゃった」
「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」
首輪がピカリと光ると、同時にあたしの体に強い電流が再び襲い掛かってきた。それに耐えられず、ドアの目の前で倒れこんでしまった。
「で、電気はやらないって……言ったのに……!」
「うっそー、あんなの信じるとか、バカすぎて国宝もんっしょ! ていうかさ……本当に逃げられると思った? どんだけ頭の中花畑だよ。絶対に逃がさないから。一生」
「……うぅ……ぐすっ……」
「え、泣いてんじゃんかわいそ~! あ、でもその絶望に染まった顔、中々面白いわ~。ねえねえ、こいつでもうちょっと遊びたいんだけど!」
「ダメです。これ以上は壊れてしまいますから。さて、ここをこうして……。」
痛みと悔しさで泣いていると、スィヤンフィがカプセルに手をかざして、魔法陣を展開する。それから間もなく、カプセルが重い音と共に開き、中から巨大でムキムキなウサギが出てきた。
「この個体は、私の作った魔道具による、肉体改造実験を受けた個体でしてね。転移魔法の耐久性テストに何度も用いられるほど、頑丈なのです。それと、彼らには、私の命令は絶対だと思い込む暗示をかけてあります」
「ひ、酷い……命は、あなたの都合の良いおもちゃじゃない……!」
「そんな戯言は、この世の中には通用しません。力の無い者は、力のある者に利用される定めなのですよ。さあ、小娘を拘束――」
大きなウサギがあたしを捕まえたと同時に、部屋の中かが一際眩しくなり、辺り一面に強い衝撃が襲いかかってきた。
その原因は、突然天井から地面に向かって降ってきた、凄く太い光の……レーザー? のようなものが襲い掛かってきたからだ。
「いった~……おしりうった~!」
「ああ、私の実験室が……何者だ!?」
痛みで泣き叫ぶエリーザと、研究所の破損を見て怒りに狂うスィヤンフィなど目もくれず、ビームが発生した所を確認する。
そこにいたのは……純白の毛に包まれ、九本の大きな尻尾をもつ巨大なキツネと、その背に乗る一人の男性の姿があった。
遠目だけど、あたしにはわかる。あそこにいるのは……もう会えないと思っていた……それでも、どうしてももう一度会いたかった、愛しの男性だ――
73
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
悪役令嬢だけど破滅したくないから神頼みしたら何故か聖女になりました
当麻リコ
恋愛
五歳にして前世の記憶に目覚めたライラ。
彼女は生前遊んでいた乙女ゲームの世界に転生していたことを知る。
役どころはヒロインの邪魔ばかりする悪役令嬢ポジション。
もちろん悪役にふさわしく、悲惨な末路が待ち構えている。
どうにかバッドエンドを回避しようと試行錯誤するが、何をやってもゲームの設定からは逃れられなかった。
かくなる上は、最終手段の神頼みしかない。
思いつめたライラは、毎日神殿に通い祈りを捧げ続けた。
ヒロインが登場するまであとわずか。
切羽詰まった彼女の身に、とんでもない奇跡が起きた。
一切魔力を持たなかった彼女に、突如膨大な魔力が宿ったのだ。
呆然とする彼女に、神殿から下された使命は「聖女として神様のお世話をすること」。
神殿の権力は強く、侯爵令嬢という高貴な身の上にも関わらず問答無用で神殿に住み込むことが決められた。
急激に変わり始める運命に、ライラは持ち前の度胸と能天気さで前向きに挑む。
神様と急造聖女の、無自覚イチャイチャ恋愛劇。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる