【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき

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第十一話 証拠を求めて

 翌日、お城に来ていた商人から、無事に目的の物を購入した私は、一度小屋に戻って来て、準備を始めた。

「なんとか買えて一安心ですわ。おかげで、自由に使えるお金は、ほとんど無くなってしまいましたが……」

 これも目的のためなら、安い出費だ。そう自分に言い聞かせて準備を終えた私は、お父様の部屋を訪れ、見張りをしていた男性に掃除をしに来たと嘘を伝えると、素直に通してくれた。

 以前にも、お父様の部屋の掃除をしたことがあるから、怪しまれずに済んだわね。とはいっても、時間をかけていたら怪しまれるだろうから、手早く済ませましょう。

「確か、以前お掃除に来た時に、この辺は触るなと言われましたわね。ということは……」

 お父様の部屋に入るや否や、机の引き出しの三段目を開け、中を確認すると、二重底になっているのを発見した。そしてそこには、レバーのようなものがあった。

「これを引けばいいのかしら……?」

 考えていても仕方がない。とりあえず引いてみよう……えいっ!

「きゃっ……! すごい、本棚が動き出した!」

 部屋に置かれていた大きな本棚が、音もなく横に動くと、そこには別の本棚が隠されていた。そこから一冊取り出し、中身を確認した。

「これは、帳簿? それに、こっちは領収書……専門の人が見ればわかるのかしら?」

 とりあえず、ここにあるものはしっかり記録しておかなければ。そう思った私は、水の入ったバケツから、水晶玉を取り出した。

 これが、商人から買ったもの。これには、記録魔法の力が宿っている。
 この水晶を起動させると、細い光が発せられ、それを記録したいものに当てることで、なんでも記録することができる。

 一見便利な力ではあるが、この水晶では記録できる期間に限りがあったり、記録をする量が少なかったりと、不便な点が多い。だから、なるべく有用な情報だけを集めて、早く使う必要がある。

「こういう時に、素早いお仕事を求められていたことが役立ちますわ」

 使用人のお仕事を押し付けられると、いつももっと早く、もっと丁寧にやれと叱られる。おかげさまで、人よりも動きは機敏な方だと自負している。

「これで帳簿は終わりですわね。後は領収書を……って、随分と宝石の領収書が多いですわね。それに、こっちはアクセサリーに、こっちはドレス……」

 どれもこれも、お義母様やお姉様が身につけているものや、着ているものばかりだ。中には有名店もあるが、名前を聞いたことがないお店や、あまり良い噂を聞かない、怪しい集団のものもある。

 こういうのって、不正な取引だったりする可能性もある。これもしっかり記録して持ち帰ろう。

「これでよしっと。改めて考えると、揃いも揃って危機管理能力が低すぎませんこと……?」

 まあ、情報が漏洩したとしても権力でねじ伏せるだろうし、そもそも一国の長に逆らおうとする人間がいるとも考えにくいわ。
 なによりも、聖女という存在を使って民の信頼は勝ち取れている以上、疑う方もいないということね。

「次は、お義母様のお部屋に行ってみましょう。確か本日は、とある貴族のお茶会に参加していて、不在だったはずですわ」

 変に疑われないように、テキパキと掃除をして時間を潰してから、同じ方法でお義母様の部屋に入ろうとしたが、今度は門前払いをされてしまった。

 そういえば、お義母様は私のような汚い人間なんて、絶対に部屋に入れないと、常々言っていたのを失念していた。これでは、部屋に入ることが出来ない。

「何かいい方法は……そういえば、今日の見張りをしている彼って、大のネズミ嫌いでしたわね……」

 ……あまり性格の良い方法ではないが、背に腹は代えられない。彼は昔、私の食事に虫を入れたことがあったし、その仕返しということで。

「さすがに生きているネズミを手に入れるのは、気が引けますわね……そうだ、先程見せていただいた品の中に、使えそうなものが……まだいらっしゃるといいのだけど……あっ、よかった。まだいらしたわ」

 私は、あの見張りに退いてもらうための秘策を行うために、水晶を売ってくれた商人を探してお城の中を歩いていると、ちょうど出ていこうとする後ろ姿を見つけた。

「おや、セリア様。ちょうど商談も終わって帰るところだったのですが……どうかされましたか?」

「先程見せていただいた商品にあった、とあるおもちゃを一つ、いただきたいのですが」

「おもちゃ、ですか。それは構いませんが……どれをお求めで?」

「ゼンマイ式のネズミのおもちゃですわ」

「これですかい? 随分と物好きですねぇ……リアルに作り過ぎて、全然売れなくて困ってたのですよ。先程高価な水晶を購入いただきましたし、サービスしますよ」

「まあ、それは嬉しいですわ」

 提示された金額は、私の手持ちのお金でギリギリ買えるものだった。サービスをしてもらえてなければ、購入できなかったわね。危なかった。

「では、それをいただきますわ」

「ありがとうございます。他になにか入用で?」

「他には特にございませんわ」

「かしこまりました。では、またごひいきに」

 お城から去っていく商人を見送ってから、再びお義母様の部屋までやってきた私は、物陰に隠れながら、ネズミのおもちゃを取り出した。

「えっと、ここにゼンマイを差して、グルグル回して……これくらい回せばいいかしら?」

 情けないことに、私はこういったおもちゃにほとんど触れたことがない。両親は、お姉様にはおもちゃも含めて色々と与えていたのに、私には教育に悪いという適当な理由をつけて、一切与えてくれなかった。

「これでよし。さあネズミちゃん、お願いしますわ」

 ネズミのおもちゃを床に置くと、少し左右にブレながらではあったが、見張りの元に向かって進んでいく。

 そして、ネズミのおもちゃは見張りの視界に入って……。

「うぎゃあぁぁぁぁ!? ね、ネズミぃぃぃぃぃ!?」

 おもちゃなのに、本物のネズミと間違えてしまった見張りは、まるでネコから逃げるネズミのように、物凄い勢いで走り去っていった。

 ふふっ、無様な姿だこと。昔の私も、あんなふうに凄く驚かされましたし、これでおあいこね。

「さてと、今のうちに中に入らせてもらいましょう」

 急がないと、あの見張りが戻ってきてしまう。そう考えた私は、そそくさとお義母様の部屋に入る。すると、そこにあったのは、目を疑うほどのたくさんの宝石や、アクセサリーだった。

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