【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき

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第三十七話 ドキドキが止まらない

 翌日。いつもより早くに目覚めた私は、夜が明けて明るくなってきた空の下を、のんびりと散歩をしていた。

「朝は空気が澄んでいて、気持ちが良いですわね……それにしても、昨日はなかなか寝付けなかったのに、こんなに早くに目が覚めてしまうだなんて……」

 アルフレッド様への恋心が自覚した影響か、目を閉じるとアルフレッド様のことばかりを考えてしまい、その度にドキドキして眠れなくて……眠ったら、今度はアルフレッド様が夢に出てきてしまい、それに驚いて目が覚めたら、まだこんな時間だった。

 私って、自分で知らない間に、アルフレッド様のことを、こんなに好きになっていたのね。それを、相手はお母様を奪った戦争の元凶だって決めつけて、その気持ちを押し殺していたんだ。

「それが無くなった結果、こんな気持ちが溢れてきたと……なんていうか、我ながら笑ってしまいますわね」

 復讐をするべき相手に、知らない間に好意を寄せていたのもそうだが、復讐という枷が無くなったら、自分でも制御がきかなくなるのは、さすがにどうかと思う。

 そんなことを思いながら、やや自虐気味に笑っていると、中庭にとある人物がいるのを見つけた。

「あら、こんな早い時間に誰かいらっしゃいますわね。随分と早起きですこと……って、あれは……!?」

 そこに立っていたのは、昨晩安眠出来なかった要因である、アルフレッド様その人だった。
 どうやら、水の魔法を使って花に水をやっているみたいだ。アルフレッド様の周りには、遊びに来た小鳥たちが綺麗で可愛らしい鳴き声をあげながら、飛び回っている。

「……綺麗……」

 小鳥たちを相手に、少し困ったように笑うアルフレッド様の姿は、まるで私が幼い頃に読んであこがれていた、白馬に乗った王子様のように見えて、さらにキュンキュンしてしまった。

 どうしよう、今すぐに話しかけに行きたいけど、あの空気を壊すような真似はしたくないし、話そうと思っただけで、心臓が爆発しそうなくらい緊張している。

「こんな状態で行っても、ろくな話が出来なさそうですし……きょ、今日は出直したほうがいいですわね。うん、そうしましょう」

 自分で言い訳をしたくせに、物陰からアルフレッド様を見るのが止められない。時間や体力が許されるなら、無限に見ていられそうだ。

 ……さすがにこれは、気持ち悪いような気がする。これでは、まるでストーカーみたいだ。

「そこの人、いつまでコソコソと見ているのかな?」

「えっ!?」

 今まで、一度も私に視線を向けていないはずだったのに、アルフレッド様は的確にこちらを見ながら、声をかけてきた。

 突然声をかけられた驚きと、声をかけてもらえたという緊張で、心臓がバクバクを通り越して、もの凄いことになっているが、話しかけられた以上、無視をするわけにもいかない。というより、したくない。

「おや、セリア様だったか。おはよう。随分と早いんだね」

「お、おはようごじゃいましゅ! あっ……」

 開幕から早々に、思いきり噛んでしまった。私ったら、なんてザマなの? こんなことでは、家族にさらなる復讐をするだなんて、夢のまた夢だ。もっと心を強く持たなければ。

「ふふっ、まだ寝ぼけているのかな? 落ち着いて、この気持ちいい空気を一杯吸い込んでごらん」

「は、はい。すぅぅぅぅ……!」

 ああ、こんな情けない姿を見せてしまったのに、家族のように笑ったりバカにしたりしないで、優しくしてくれるアルフレッド様、素敵すぎる……好きぃ……!

「少し落ち着いたかい?」

「ふぅ……はい、おかげさまで」

 嘘だ。深呼吸をしたことで、確かに綺麗な朝の空気を取り込めたが、同時に、アルフレッド様の匂いまで嗅いでしまって……やっぱりこれではストーカー……いや、変質者だわ!

 そんなことで、アルフレッド様に嫌われたくない。早くこの場を去らなければ……そう思ったが、すぐに別の考えが浮かび、弱気な考えを打ち消した。

「そうよ……何もしないで耐えるだけの日々は、あの日捨ててきたんだ。今の私は、自分から動かなくちゃいけない……あ、あの! アルフレッド様!」

「なんだい?」

「腕……組んでも、よろしいですか?」

「えっ? 随分と急だね……もちろん構わないよ」

 思った以上に、あっさりと承諾を得られた私は、おずおずとアルフレッド様の腕に、そっと自分の腕を絡める。

 昔読んだ本に、好きな人と腕を組むシーンがあったのを覚えていたから、お願いしてみたのだけど、幸福感で頭がふわふわしている。油断したら、だらしない顔になってしまいそうだ。

「まだ向こうの花には水を上げていないんだ。一緒にどうだい?」

「でも、私は魔法が……」

「それは大丈夫。僕に任せて」

 そう言うと、アルフレッド様は水色の魔法陣を私の手のひらに描いた。ぼんやりと青く光っていて、とても綺麗だ。

「確か、初歩の魔法なら使えると言っていたね。なら、魔力自体はあるということ。魔力を魔法陣に流してごらん」

 私は、魔法陣をジッと見つめながら、言われた通りに魔力を流す。

「光りましたわ! これで――」

 水やりが出来る。そう思ったのに、魔法陣からは勢いよく水が放出され、まっすぐ私の顔を濡らしてきた。

「がぼぼぼぼ!?」

「セリア様、大丈夫か! 今止め……がばばばばば」

 見えていないからよくわからないが、多分アルフレッド様が私を助けようとしてくれたのね。相変わらず優しい人だ。

「あ、止まった……魔力を流さないと、止まるのですね……」

「そ、そうなんだ……魔力のコントロールをするように言ってなかったね。今の魔力量だと、水が強すぎるんだ」

 そうだったのね……せっかく何か一緒に出来ると思っていたのに、いきなり大失敗だ。

「水に濡れた君は、いつも以上に色っぽくて、とても素敵だね」

「ふふぇ!? あ、その、あの……あ、ありがと……ごじゃいましゅ……」

 いつもなら、凛とした態度で返事が出来るはずなのに、褒められた上に、濡れていつも以上に……その、セクシーなアルフレッド様を相手に、ちゃんと喋られなかった。

「どうして僕を見てくれないんだ? なにか気に障ることをしてしまったかな?」

「ち、違いますわ! その……笑わないで聞いてほしいんですけど……濡れたアルフレッド様が、とても色っぽくて……直視、できません……でしたわ」

 耳まで真っ赤になっているであろう状態で、アルフレッド様に言葉を伝える。
 きっとアルフレッド様のことだから、お礼を言うか、僕も愛している! とか、感動で涙がぁ! とか、その辺りの反応が返ってきそうだ。

「っ……!」

「え……」

 私の予想は、全てが外れた。代わりにアルフレッド様は、少しだけ私から目を逸らしながら、ほんのりと頬を赤くして照れていた。

 それがあまりにも可愛すぎて……ずっと我慢していたのに、思わずだらしなくにやけてしまった。


 ****


■リズ視点■

「ふんふふ~ん! 今日も元気に張り切ってお仕事をしなきゃね!」

 二つの国の戦争の話を聞いた時のショックで、何だか寝つきが悪くて、いつもより早くに仕事を始めたわたしは、鼻歌を歌いながら外に出た。

 わたしは、突然ここに転がり込んできたんだから、皆さんよりも多くの仕事をしないとね! さあ、まずはお洗濯……って、あれは!

「セリア様とアルフレッド様だ!」

 お二人も随分と早起きなんだね。せっかくだから声を……え、腕を組み始めた!? しかもセリア様から!?

 あの甘々な雰囲気……あれって、間違いないよね? それに、セリア様からアタックしてるってことは……絶対に、アルフレッド様のことが好きになったよね!

 セリア様ってば、ようやく自分の気持ちを自覚したんだね! 前々から、好きになってるのは明確で、早く気づけば良いのにって、いつもやきもきしてたから、なんだかスッキリした気分!

 あの人はとても優しいから、きっと幸せにしてくれるはず。アルフレッド様を見てたら、絶対にそうだって確信が持てるよ!

「ついに、セリア様にも幸せが……あれだけいじめられていたんだから、誰よりも幸せになってもらいたいなぁ……」

 わたしがセリア様と過ごした時間なんて、たかが知れているけど、その短い時間の間でも、セリア様のいじめられっぷりは酷かった。
 そんなセリア様が、ようやく幸せへの第一歩を踏み出せたんだから、応援するのは当然だよね!

「わたしに何か出来ることってあるかな? とりあえず、今は邪魔をしないのは最優先として……こんなことなら、恋の一つでもしておくべきだった……!」

 自慢じゃないけど、わたしは恋愛経験は全く無い。一応、故郷には仲の良い男の子のお友達がいたくらいだ。

 う~ん……う~~~~ん……力になりたいのに、なにも思いつかないのって、すごく歯がゆいかも……とりあえず、お洗濯をしながら考えよっと!

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