【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき

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第四十三話 いざデートに

 アルフレッド様と共に色々な人から話を聞いたり、本を読んだりして情報を仕入れ、何度も話し合いをした結果、人の多いところや豪華な場所ではなく、静かで自然が豊かなところで癒されようという結論に至った。

 私としては、アルフレッド様にはゆっくりしてもらいたいのに、変に人が多いところに行くと、王子様として振舞わないといけなくなるだろうと思っていたから、そうならずに済みそうでよかった。

 とはいっても、すぐにアルフレッド様の休みが取れるわけではなかった。実際に、デートの日は色々と決めてから、一ヶ月も先になっていた。

「きょ、今日はいよいよデートの日……緊張しますが、それ以上に楽しみですわ」

 この日のために、私は念入りに準備をした。身なりを完璧に整えてもらい、今日行く場所でも動きやすくておしゃれな服を用意してもらい、何日も前から湯浴みとマッサージをして体調を整えてもらい、昼食の準備もして――あれ? よく考えたら、最後の以外は全部してもらったことじゃないか。

 これらのことをしてくれたのは、リズや多くの使用人達だ。彼女達がいなければ、こんなに綺麗にしてもらえなかったのは明確だ。それに、食事だってあくまで手伝っただけで、ほとんどはお城のシェフが作ってくれたものだ。

「セリア様、とっても綺麗ですよ~!」

「ありがとうございます、リズ。皆様、今日のために色々と準備をしてくださり、ありがとうございます」

 身支度を終えた後、私は彼女達に向かって、深々と頭を下げた。

 動きやすさ重視でスッキリしつつも、華やかさを忘れないドレスに、ハーフアップにしてもらった艶のある髪、ナチュラルなお化粧、すべすべの肌。全て、彼女達が私のために頑張ってくれた結果だ。

「もうすぐ待ち合わせの時間ですので、私は失礼いたします。重ね重ねになりますが、本日のために色々としてくださり、誠にありがとうございました」

「セリア様! 大切な物を忘れてますよ! はいっ!」

「あっ……うっかりしておりましたわ」

 私は、リズに差し出されたバスケットを受け取る。

 目先のデートが楽しみすぎて、大切な物を忘れるところだった。しっかり者のリズがいてくれて助かったわ。

「アルフレッド様は、もういらっしゃるのかしら?」

 待ち合わせ場所である、中庭の噴水のところに行ってみたが、そこにはアルフレッド様の姿は無かった。

 さすがに、集合時間の一時間前に来るのは早過ぎたかしら? まあいいわ。こうやってどこかに集まるのも、こうやって待つのも、デートの醍醐味らしい。のんびり待っていよう。

 ……なんて思って待ち始めて一分もしないうちに、私が待っている方がやってきた。

「あれっ、セリア様! もう来ていたんだね! 」

「アルフレッド様、おはようございます。随分とお早いのですね」

「実は、今日のデートが楽しみすぎて、三時間も前に来てたんだ。でも、ちょっとお手洗いに行きたくなって席を外していたら、その間に君が来ていたんだ」

 三時間って……それ、ようやく空が明るくなり始めたくらいの時間よね。そんなに楽しみにしてもらえてたんだと、嬉しく思う反面、昨日も忙しくしていたのに、ちゃんと眠ってなくて大丈夫なのかとも思ってしまった。

 ……一応、見た限りではいつも通りな感じだから、大丈夫……なのかしら?

「本当は、教えてくれた人が言っていた、全然待ってないよって台詞を言ってみたかったんだけど、中々うまくいかないものだね」

「そ、そうでしたのね。間が悪くて申し訳ございませんわ」

「セリア様が謝る必要なんて、これっぽっちもないよ。次のデートでリベンジさせてもらうからさ」

 あっけらかんと笑うアルフレッド様は、今日の雲一つない快晴にも負けない眩しがある。今だけでもこんなにときめいているのに、このままデートなんてしたら、どうなってしまうのだろう?

「ところで、その……今日の服装、素敵ですね」

「そうかい? 今日は君の婚約者としての僕だから、王族が付けるような派手な服やマントは避けて、スッキリした動きやすいタキシードにしてみたんだ」

 いつものマントだったり、派手な装飾の服も素敵だが、個人的には今のアルフレッド様の方が、本人の良さが際立っていて、素敵だと思う。
 本当は、なにがどう素敵なのかを伝えられればいいのに、私の語彙力では、魅力の一割も言語化できないだろう。自分の語彙力の無さが恨めしい。

「セリア様も、とても綺麗だね。まるで妖精のようだ」

「あ、ありがとうございます……! 褒めてもらえて、大変光栄ですわ!」

 アルフレッド様に褒められた嬉しさを表現するために、私は小さく握り拳を作って、やった……! と呟いた。

 これも、リズをはじめ多くの使用人が頑張ってくれたおかげだ。
 いや、今日だけではない。今までずっと、私の体の治療もしてくれていたおかげで、ある程度なら肌を見せられる服が着られるようになったのよ。

「このままだとずっとお喋りしてしまいそうだし、そろそろ出発しようか」

「はい。本日はよろしくお願いいたします」

「ああ、こちらこそ。さあ、僕の手を取って」

 ドレスの裾をを持ってお辞儀をすると、アルフレッド様が手を差し伸べてくれた。それを取って歩き出すと、お城の城門に用意された、大きな白馬のところまで案内してくれた。

「アルフレッド様、セリア様、おはようございます。こちらの準備は既に出来ております」

「おはようございます」

「今日はよろしく頼むよ」

「ぶるるる……!」

 お城で世話をしている馬の面倒を見てくれている男性と、今日私達を運んでくれる白馬に挨拶をしてから、私達は白馬の背中にまたがると、白馬はゆっくりと目的地に向かって歩き出した。

「セリア様、乗り心地は大丈夫そうかな?」

「は、はい。問題はございませんわ」

 乗り心地自体は、本当に問題はない。おりこうさんな白馬は、私達に負担をかけないように歩いてくれるし、アルフレッド様が後ろから私を支えてくれているおかげで、落ちる心配も全く無い。

 問題なのは、アルフレッド様に後ろから抱きしめられている形になっていることだ。これが想像以上にドキドキしてしまう。もちろん、とても嬉しくて幸せでもある。

 ――そもそも、どうして馬車で行かなかったのか。それは、私がアルフレッド様に白馬に二人で乗ってお出かけしたいと、ワガママを言ったからだ。

 私は幼い頃、いつか白馬の王子様が助けに来てくれて、私を家族という地獄から救ってくれることを夢見ていた。そのうち、そんな現実はあり得ないことだと、諦めてしまったわけだが……その気持ちが捨てきれず、アルフレッド様に相談したところ、このような形になったというわけだ。

 その際に、自分は白馬の王子様なんて、ロマンチックな人間じゃないよと謙遜をしていたから、アルフレッド様は私を大切にしてくれる、世界一素敵な王子様なんだと力説したら、照れながらもお礼を言ってくれた姿が、本当に可愛かったわ。

「それならよかった。麗しのお姫様に不満に思われてしまったら、白馬の王子様失格だからね」

「も、もうっ。からかわないでくださいまし」

「からかってなどいないさ。君は、僕にとっては本当に麗しのお姫様であり、愛する婚約者だからね」

「うぅ、うぅぅぅぅ~~~~……」

 だ、だからなんでこの方は、こういう恥ずかしいことを、ポンポンと口に出来るの? 私、絶対に耳まで真っ赤になっているわ。

「それにしても、気持ちいね、風」

 お城を出発し、森の中をゆったりと進んでいると、時折私達のことを優しく撫でる風が通り過ぎる。
 少し前だったら、まだ寒い時期だったから、この風は身を震え上がらせるものだっただろう。暖かくなってきた時期で良かった。

「これからも、こんな素敵な日が続くと良いね」

「そうですわね。きっと続きますわ。ほら見てくださいまし、木漏れ日の光が幻想的です。なんだか、ちょっとした冒険気分ですわ」

「冒険か。いいね、そういうのが好きな人は、一度は冒険に出たいと思うものさ」

「アルフレッド様は、そういう気持ちはあったのですか?」

「ああ。高名な魔法使いが冒険に出て、敵討ちをする物語にハマったことがあってね。僕も冒険したいと思っていたよ。多くのドラマがあり、冒険があり、友情や涙ありで、最高の名作だった。君が良ければ、帰ったら貸してあげようか?」

「はい、是非!」

 アルフレッド様がおすすめする本なら、間違いはないはず。今楽しいことをしているのに、また新しい楽しみが増えたわ!

「……やっぱり、賑やかなところよりも、静かなところの方がいいね。心が洗われるようだ」

 辺りから聞こえてくるのは、馬が地面を蹴る音や、森をアスレチックにして遊んでいる鳥の鳴き声、ケロケロと鳴くカエルといった、動物のばかりだ。
 都会の賑やかさを知っていると、この自然の音というのは、とても綺麗で特別に感じられる。

「おっと、ここから先は少し足元が悪そうだ。セリア様、揺れに気をつけて」

 アルフレッド様は、私に説明をしてから間も無く、さっきよりも強く私のことをギュッと抱きしめた。

 わ、わわわ、わかっているわ。これは私が落ちないように、アルフレッド様が支えているだけ。そう、わかってしまえば驚くことはない。冷静に、冷静に……。

「ははっ、こんなに長く密着した経験なんて無いから、ちょっと緊張しちゃうね」

「はうっ!?」

 あまりにも可愛らしいことを言うアルフレッド様の顔を見ると、これまた可愛らしい、少し困ったような笑顔だった。

「あー……。アルフレッド様、ごめんなさい……私、もう無理かもしれません……」

「もう無理って、どうしたんだい?」

「アルフレッド様が素敵すぎて……きゃ、キャパオーバーです……きゅう」

 アルフレッド様成分を過剰に摂取してしまい、ついに限界を迎えてしまった私は、そのままスーッと意識を闇の中に手放してしまった。

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