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第五十一話 一大作戦
数日後、無事に回復した私は、アルフレッドやフェルト殿下、国の権力者達が集まる会議室にやって来て、予知で見たことを事細かに説明をした。
「なるほど、カルネシアラの兵がそんなことを……彼らの様子を考えるに、君の父君の力が戻り、その力を振るった結果、おかしくなったと考えるのが妥当かな」
「以前お聞きした、洗脳魔法を使ったということですか? ですが、どうやってお父様が魔力を取り戻したのか、皆目見当もつきませんわ」
「でも、それって今考える必要はあるのかね? 我々が今なすべきことは、攻め込んでくるカルネシアラ国から、祖国と民を守ることを考えることだと思います」
会議に参加していた若い貴族の男性が、手を上げながら発言をする。
確かに彼の言うことも一理あるが、今の状況ではどちらも正しいと思うの。
「いや、それもこれも重要なことである。もし仮に、彼が現時点で力を取り戻していなければ、その方法を知ることで、力が戻るのを阻止できるやもしれぬ」
「それをどうやって調べるかが問題ですね。戦争の準備をしているとなれば、おいそれと外部の人間の侵入を許すとは思えません」
解決しなければいけない現実に直面した参加者たちは、頭を悩ませる。中には唸り声をあげたり、頭を抱えている者もいる。
そんな中、私はとある方法が思いついていた。戦争を起こさない方法も、怪しまれずに済む潜入方法も。
「私に一つ考えがございますわ」
「申してみよ」
「私が、祖国に帰ればよいのです」
私の発言に、部屋中がざわめき始める中、アルフレッドは、今までで一番といっていいくらい慌てながら立ち上がった。
「バカな、そんなのダメに決まっているじゃないか! 君を危険な目に合わせるわけにはいかない!」
「落ち着いてくださいませ、アルフレッド。誰かが行動をしなければ、多くの民が犠牲にになってしまいますのよ?」
「そ、それは……」
「なにも、考えなしというわけでもございません。私の家族は、私がこの国に来ることを、強く反対していました。それは、私の持つ力を手放したくないからでした。それが帰ってくるとなれば、家族は喜んで受け入れるでしょう」
私がお城を出ていく時の家族の慌てようは、今まで見たことがないようなものだった。それもそのはず、セリアという存在はどうでもよくても、聖女の力だけは重要だったからだ。
「無事に帰った後は、折を見て戦争の準備をしている証拠を集めます。それをカルネシアラ国の民に知らせて、王家への不信感を煽るのです。そうなれば、民はすぐに反乱を起こし、国家は完全に孤立化します。そうなれば、誰も助けてくれなくなるでしょう。これでも、一度経験がありますし、カルネシアラ国のことはよく存じておりますので、勝算はあるかと」
「仮に、既に君の父君の力が完全に戻っていて、民がその手中に落ちていたら? いくら証拠を見せても、意味が無いんじゃないか?」
「赤い月の日までは、まだ時間があるから大丈夫だと思いますわ。もしダメだったら……そうですね。笑って誤魔化すとしましょう」
アルフレッドの言う通り、もし力が既に戻っていて、民が全員お父様の手に落ちていたら、私はただ自ら地獄に戻り、死ぬまで良いように使われに行くだけだ。それでも、一か八かの賭けに出る価値はあると思う。
「ご心配なさらず。私が戻らなかったり、連絡が無いということは、既にカルネシアラ国の民は、お父様の手に落ちたという証拠になるでしょう。それは、ソリアン国にとって有益な情報になるかと」
「自分が犠牲になるかもしれない方法を、許可すると本気で思っているのか!?」
「アルフレッド、落ち着け。感情的になれば、大局を見ることは出来ないと教えたであろう」
「しかし父上!!」
「落ち着けと言ったのがわからぬか、大バカ者め!!」
「ぐっ……」
フェルト殿下の一喝の効果は絶大だった。あれだけ食ってかかっていたアルフレッドは、悔しそうに唇を噛みながら、静かに席に着いた。
「セリア、そなたの意見は理解した。そして、そなたの協力に心から感謝をしたい」
「それじゃあ……!」
「しかし、今はそなたも我がソリアン国の大事な民であり、余の家族なのだ。そんなそなた一人に重荷を背負わせるようなことを、余は許すわけにはいかん」
「そ、そんな……それでは、一体どうするのですか!? このままお父様が攻め込んでくるのを、手をこまねいて見ているとでも!?」
「慌てるな。余は、そなた一人に重荷を背負わせないと言ったのだ」
そう言うと、フェルト殿下は今も悔しそうにしているアルフレッドに視線を向けた。
「アルフレッド、そなたが一緒に行き、セリアを守るのだ」
「ち、父上……?」
「そなたの魔法の腕は、目を見張るものがある。きっとそなたなら、セリアを守る盾となり、悪しき者を裁く剣になれるであろう。もしそなたが嫌だと申すなら、別の方法を考える。なんなら、余が直接赴くのもやぶさかではない」
「いえ、僕がいきます! この役目は、僕がやらなければいけないこと……僕が必ずセリアを守り、二人で無事に帰ってくると誓いましょう!」
「アルフレッド……!」
ここだけの話、自分が提案したこととはいえ、一人で帰るのはとても不安だったが、アルフレッドが一緒に来てくれるというだけで、心の奥底にあった不安は、影も形も消え去っていた。
――こうして、私とアルフレッドの二人による、国と民を救う壮大な潜入作戦が決まったのだった。
「なるほど、カルネシアラの兵がそんなことを……彼らの様子を考えるに、君の父君の力が戻り、その力を振るった結果、おかしくなったと考えるのが妥当かな」
「以前お聞きした、洗脳魔法を使ったということですか? ですが、どうやってお父様が魔力を取り戻したのか、皆目見当もつきませんわ」
「でも、それって今考える必要はあるのかね? 我々が今なすべきことは、攻め込んでくるカルネシアラ国から、祖国と民を守ることを考えることだと思います」
会議に参加していた若い貴族の男性が、手を上げながら発言をする。
確かに彼の言うことも一理あるが、今の状況ではどちらも正しいと思うの。
「いや、それもこれも重要なことである。もし仮に、彼が現時点で力を取り戻していなければ、その方法を知ることで、力が戻るのを阻止できるやもしれぬ」
「それをどうやって調べるかが問題ですね。戦争の準備をしているとなれば、おいそれと外部の人間の侵入を許すとは思えません」
解決しなければいけない現実に直面した参加者たちは、頭を悩ませる。中には唸り声をあげたり、頭を抱えている者もいる。
そんな中、私はとある方法が思いついていた。戦争を起こさない方法も、怪しまれずに済む潜入方法も。
「私に一つ考えがございますわ」
「申してみよ」
「私が、祖国に帰ればよいのです」
私の発言に、部屋中がざわめき始める中、アルフレッドは、今までで一番といっていいくらい慌てながら立ち上がった。
「バカな、そんなのダメに決まっているじゃないか! 君を危険な目に合わせるわけにはいかない!」
「落ち着いてくださいませ、アルフレッド。誰かが行動をしなければ、多くの民が犠牲にになってしまいますのよ?」
「そ、それは……」
「なにも、考えなしというわけでもございません。私の家族は、私がこの国に来ることを、強く反対していました。それは、私の持つ力を手放したくないからでした。それが帰ってくるとなれば、家族は喜んで受け入れるでしょう」
私がお城を出ていく時の家族の慌てようは、今まで見たことがないようなものだった。それもそのはず、セリアという存在はどうでもよくても、聖女の力だけは重要だったからだ。
「無事に帰った後は、折を見て戦争の準備をしている証拠を集めます。それをカルネシアラ国の民に知らせて、王家への不信感を煽るのです。そうなれば、民はすぐに反乱を起こし、国家は完全に孤立化します。そうなれば、誰も助けてくれなくなるでしょう。これでも、一度経験がありますし、カルネシアラ国のことはよく存じておりますので、勝算はあるかと」
「仮に、既に君の父君の力が完全に戻っていて、民がその手中に落ちていたら? いくら証拠を見せても、意味が無いんじゃないか?」
「赤い月の日までは、まだ時間があるから大丈夫だと思いますわ。もしダメだったら……そうですね。笑って誤魔化すとしましょう」
アルフレッドの言う通り、もし力が既に戻っていて、民が全員お父様の手に落ちていたら、私はただ自ら地獄に戻り、死ぬまで良いように使われに行くだけだ。それでも、一か八かの賭けに出る価値はあると思う。
「ご心配なさらず。私が戻らなかったり、連絡が無いということは、既にカルネシアラ国の民は、お父様の手に落ちたという証拠になるでしょう。それは、ソリアン国にとって有益な情報になるかと」
「自分が犠牲になるかもしれない方法を、許可すると本気で思っているのか!?」
「アルフレッド、落ち着け。感情的になれば、大局を見ることは出来ないと教えたであろう」
「しかし父上!!」
「落ち着けと言ったのがわからぬか、大バカ者め!!」
「ぐっ……」
フェルト殿下の一喝の効果は絶大だった。あれだけ食ってかかっていたアルフレッドは、悔しそうに唇を噛みながら、静かに席に着いた。
「セリア、そなたの意見は理解した。そして、そなたの協力に心から感謝をしたい」
「それじゃあ……!」
「しかし、今はそなたも我がソリアン国の大事な民であり、余の家族なのだ。そんなそなた一人に重荷を背負わせるようなことを、余は許すわけにはいかん」
「そ、そんな……それでは、一体どうするのですか!? このままお父様が攻め込んでくるのを、手をこまねいて見ているとでも!?」
「慌てるな。余は、そなた一人に重荷を背負わせないと言ったのだ」
そう言うと、フェルト殿下は今も悔しそうにしているアルフレッドに視線を向けた。
「アルフレッド、そなたが一緒に行き、セリアを守るのだ」
「ち、父上……?」
「そなたの魔法の腕は、目を見張るものがある。きっとそなたなら、セリアを守る盾となり、悪しき者を裁く剣になれるであろう。もしそなたが嫌だと申すなら、別の方法を考える。なんなら、余が直接赴くのもやぶさかではない」
「いえ、僕がいきます! この役目は、僕がやらなければいけないこと……僕が必ずセリアを守り、二人で無事に帰ってくると誓いましょう!」
「アルフレッド……!」
ここだけの話、自分が提案したこととはいえ、一人で帰るのはとても不安だったが、アルフレッドが一緒に来てくれるというだけで、心の奥底にあった不安は、影も形も消え去っていた。
――こうして、私とアルフレッドの二人による、国と民を救う壮大な潜入作戦が決まったのだった。
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