【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき

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第六話 生まれて初めての友達

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 翌日の放課後、私の隣の席であるレオ様の周りには、多くのクラスメイトで賑わっていた。

 話を聞いている限りだと、誰がレオ様にアドミラル学園の案内をするかで盛り上がっているようだ。

 別に誰がしても変わらないし、誰でも良いと思うのは私だけだろうか。そもそも、レオ様の意見を無視して、自分が行くって言っている人が多いのもどうかと思う。

「ちょっと、彼の近くにいたら辛気臭い空気が移ってしまうから、早く消えてくれませんこと?」

 ゆっくりと帰る準備をしていると、フローラと取り巻きの女性達が、わざわざ私の元に来て嫌味を言ってきた。

 相変わらず私を目の敵にしてるというか、暇というか……私、彼女達に恨まれるようなことをしたつもりは無いのに、ここまで執拗に絡んでくるとか、一体シャーロットにどんなことを吹き込まれたのかしら? ちょっとだけ気になってしまうわ。

「これは失礼しました。さようなら」
「ええ、さようなら」

 私が素直に去ったのが嬉しかったのだろう。フローラはニヤリと嫌な笑みを私に向けてから、レオ様を囲む輪の中に入っていった。

 フローラはレオ様と仲良くなりたいのかしら。何か思惑があるのか、別の理由なのか……まあどうでもいいわね。今日は両親がいるから、最終下校時間ギリギリまで、あの教室で過ごすとしよう。

「こんにちはー……って、なんでこんなに煙っているの!?」

 教室を後にして、旧別館にある教室に行くと、中は煙によって視界が悪くなっていた。

 もしかして……火事!? いや、それだったらここに来る前に気づくだろう。とにかく、煙は準備室から教室に流れ込んでいるようだ。

 ……なるほど、多分いつものやつね。念のために確認しておこう。

「シャフト先生? うーん……ノックをしても反応が無いわね。アメリアです、入りますよ」

 準備室に入ると、教室よりも煙で視界が悪くなっていた。それに加えてとても散らかっているから、油断したら転んでしまいそうだ。

「……この薬品と魔法を組み合わせれば……いや、それではこっちが上手くいかん……それなら薬品を変える……それもダメだ。薬効が弱くなっては意味が……」
「シャフト先生!」
「……あ? なんだ、アメリアか」

 シャフト先生は、ボロボロの椅子に座りながら、ブツブツと何か喋っていた。その手には、煙がモクモクと立ち上る試験管があった。中には青い液体が入っている。

「何か用か?」
「用か? じゃありませんよ……凄い煙ですよ」
「煙? あー……言われてみればそうだな」
「研究するのはいいですけど、周りに心配かけないようにしてください」
「別に誰も心配なんてしねえだろ」

 シャフト先生は、自分を卑下して言っているわけではない。彼の研究は独特なようで、いつも他人に理解されないと何度も言っている。だから、心配もされないという理屈だ。

 悪い研究をしているわけではないと思うけど、彼の性格や貪欲な研究欲のせいで、他人に誤解されてしまうのよね。

 本当にもったいないわ……確かに変わった方ではあるけど、魔法薬を作る魔法使いとして、素晴らしい腕を持っているのに。

「とりあえず換気をするので、窓を開けますね」
「ああ」
「これは一体何事だ!?」
「きゃっ!?」

 窓を開けようとした矢先、怒声に近い大きな声と共に、準備室の扉が勢いよく開かれた。そこには、息を切らせたレオ様が立っていた。

「なんだぁ? 昨日に引き続いて、今日も随分と賑やかなこった」
「何を呑気なことを言っているんだ!? 火事か!? アメリア、ケガはしてないか!?」
「え、ええ。火事じゃないので大丈夫ですよ」

 私の元に駆け寄ってきたレオ様は、私の両肩を強く掴んだ。煙のせいで見えにくいけど、凄く心配そうな表情を浮かべている。

「シャフト先生の研究のせいで、煙が凄いことになっているだけです」
「研究だって!? おい、この煙に害は無いだろうな!? もしアメリアの身に何かあったら……!!」
「少しは落ち着け青二才。ずっと換気もしないでここにいたワシがピンピンしているんだ。害があるわけないだろう」
「シャフト先生の言う通りです。大丈夫ですよ」
「そうか……それなら良いんだが……」

 酷く取り乱していたレオ様は、深く息を吐いてから、私とシャフト先生の方に向いた。

「すまない、酷く取り乱してしまった。シャフト先生、失礼な態度を取ってしまったこと、心よりお詫びします」
「別になんも気にしてねーよ。これだけ煙ってれば、驚くのも無理はねーしな」

 それ以上言うことは無いと言わんばかりに、シャフト先生は再び研究を始めてしまった。なので、私とレオ様はいそいそと隣の教室へと戻ってきた。

「まったく、俺としたことがあんなに取り乱してしまうとは……」
「急に飛び込んでくるから、ビックリしました」

 私の中でのレオ様の印象は、明るくて社交的で、穏やかな人という印象だった。だから、先程みたいに口調を荒くしていたのは、少し意外だった。

「別に私のことなんて、そんなに心配する必要は無いと思うんですが」
「するに決まっているだろう! だって君は――」

 出会った時からハキハキと喋っていたレオ様にしては珍しく、それ以上の言葉が出てこない。一体何が言いたいのだろうか?

「君は……友達だから! 友達がいると思っていた所で異変が起こってたら、心配するだろう!」
「友達……とも、だち……ってなんですか?」
「え、友達を知らないのかい?」
「言葉自体はもちろん知っています。ですが……私はこの世に生を受けてから、友達というのが出来たことが無いのです」

 私は家のために、ずっと勉強に明け暮れていた。そんな私に、友達を作って交流をする余裕なんて無かったわ。

 だから、急に友達だと言われても……どういう反応をすればいいのか、全然わからない。

 あっ……待って。一人だけ、私が幼い頃に知り合った男の子がいるのだけど、その子なら友達といっても差し支えないかもしれない。

 でも、その子に友達になろうとか、友達だって言われていないし、違うのかもしれないわ……うーん、難しい。

「そうだったんだね。それじゃあ、俺がアメリアの友達第一号だ!」
「は、はあ……」
「あれ、もしかして迷惑だった?」
「そういうわけではありません。少々戸惑っているだけです。それで、友達とは一体どういうことをするのでしょうか」
「特にこれをしなきゃいけないっていうのは無いよ」

 ……? 何もしないのなら、友達になる必要は無いんじゃないかしら? 了承してしまった以上、ここでやっぱり断るなんてことはしないけど、疑問が残るのは確かだ。

「ところで、アメリアは今日も勉強をするのかな?」
「ええ、今日は読書をしようかと。レオ様は?」
「俺は……適当にのんびりしていようかな。ここは静かで過ごしやすいからね」

 レオ様はふぅと小さく息を漏らしてから、私の対面に腰を下ろした。

「はぁ、情けないな俺……」
「何か言いましたか?」
「いや、何も言ってないよ。気にしないで読書をしてくれ」
「わかりました」

 確実に何か言っていたのはわかるけど、本人がはぐらかすということは、聞かれたくないことなのだろう。そう思った私は、静かに読書を始めた。
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