心が見えるバケモノだと家族に虐げられてる侯爵令嬢、賑やかな侯爵子息様に出会って即告白をされ、毎日溺愛されてるんですがどうすればいいのかしら…

ゆうき

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第18話 すれ違う想い、重なる想い

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「レックス様……!」
「っ!? あ……アイリス殿!?」
「はい、アイリスです……!」
「アイリス殿……! よかった……目を覚ましたんだな!」

 まだ足が治っていないのでしょう。レックス様は松葉杖をつきながら私の元に来ようとしていたので、急いで私の方からレックス様の元へ行くと、優しく抱きしめてくれましたわ。

『うおぉぉぉぉ!! よかった、本当によかったぁぁぁぁ!! アイリス殿が目を覚まさなかったら……俺は……!!』
「レックス様、お気持ちは大変嬉しいですが、少し落ち着いてください」

 レックス様の心の妖精が大声で喜んでいるのに苦笑しながらそう言うと、レックス様はバツが悪そうに苦笑いを浮かべました。

「す、すまない! 嬉しくてついな」
「いいんです。レックス様もご無事でよかった……立ち話もあれですし、座ってお話しましょう」

 私は松葉杖をついているレックス様の補助をしながら、ゆっくりとベンチに座りました。

「その、レックス様。今回は本当にありがとうございました。そして……ごめんなさい。私達姉妹の……いえ、家族の問題に巻き込んでしまって」
「アイリス殿が謝る事など何もない。悪いのはアイリス殿の家族だ。だから、気に病む必要は無い」
「いえ……私が悪いんです。私が早く答えを出せていれば……こんな事には……」
「……?」

 心の底から私を悪くないと仰ってくれるのは大変嬉しいです。ですが……巻き込んでしまったのは事実です。

 それに、私はレックス様の優しさと愛情に安心して、ずっと答えを出せていなかった。もしも答えを早くに出し、家をさっさと出てディヒラー家のお世話になっていれば……こんな事には……。

「アイリス殿。俺は君のように心を見る力は無い。だから、そんな悲しそうに俯いていないで、君の考えている事を教えてくれないか?」

 そっと私の手に自分の手を重ねるレックス様は、優しく微笑んでおられました。

 ……そうですよね。ちゃんと口に出さないといけませんよね。

「……はい。その……私は怖かったんです。レックス様は優しくて素敵な方……そんなあなたに私は惹かれていました。ですが、私はあなたに相応しい女なのか信じられなくて……あなたと一緒になって、あなたが貶されたらと思うと、怖かったんです。だから……優しさに甘えて、ずっと答えを出せなかった」
「……そうだったんだな」
「ですが、今回の事件であなたの気持ちを更に肌で感じて……私もあなたを助けたい、支えたいと思ったんです。そう思った瞬間、ようやく決心が出来ました。あなたの愛に応える決心が」
「それって……」
「はい。私は……アイリス・ハーウェイは、レックス様を愛しています。あなたの隣を歩きたい。ずっとずっと支えたい。だから……あなたのお嫁さんにしてください」

 人生で初めての愛の告白――緊張のあまり、心臓が爆発しそうですし、身体が熱を帯びすぎて汗が止まりません。息も苦しいですし、口の中もカラカラで、心の妖精を見る余裕もありません。

「……ありがとう……君の気持ちは嬉しい。だが俺は……怒りに身を任せ、その結果……君をこんなに傷つけてしまった」
「レックス様……?」

 重ねていた手を離したレックス様の表情は、とても悲しそうで……見ている私も悲しい気持ちになってしまいましたわ。

「……この先も、もしかしたらまた俺は君を傷つけてしまうかもしれない。悲しませてしまうかもしれない。そんなの俺は嫌だ。だから……君とはもう今後会わないようにしようと思う」
「え……?」

 ――もう会わない。

 それは私の想像していた答えの中には一切無かったものでした。だって……あれだけ愛してくれたレックス様が、自ら離ればなれになるなんて、想像できませんもの……!

『そうだ……これでいいんだ……ディヒラー家によってハーウェイ家は潰されたから、もう彼女をいじめ、陥れる連中はいない。だから、俺がいなくてもきっと幸せになれる……俺のような危険な男といる必要は無いんだ……』
「嫌ですわ!!」
「あ、アイリス殿……?」

 自分でも驚くくらいの大声で否定すると、レックス様も驚いたように目を見開いておられました。

「そんなに心の中で悲しんでいる方のお願いなんて、聞けません!」
「……ははっ。こういう時に心が見えるのはズルいな。そうだよ……俺だって離れたくない。だが……またいつ俺の力が暴走するかわからない。そんな危険な俺が、世界一大切な君と一緒にいるわけにはいかない!」

 仰りたい事はわかります。お優しいレックス様の事ですから、そう思うのも無理はないでしょう。

 ですが……だからといって、はいそうですかさようならなんて……言えるわけがありません! なにより、ようやく決心して告白したのに、こんな別れ方なんて……あんまりじゃないですか!

「何を言っているんですか! あなたのいない安全な暮らしなどいりません! 私は……危険でもあなたと一緒にいる暮らしを望みます!」
「どうしてわかってくれないんだ! 俺の心は見てわかっているんだろう!?」
「わかります! わかった上で、私は一緒にいるという選択をしているんです!!」
「っ……!!」
「もしあなたがまた暴走の兆しを見せたら、私が全力で暴走を防いでみせます! そのためにも、もっともっと魔法の練習をします! それでも駄目なら、暴走してもすぐに止められる術を考えます!」
「……アイリス殿」
「レックス様の愛が冷めない限り、私は絶対に離れません!」

 とにかく私の想いをぶつける事に特化した言葉。本当はもっと物語のような、ロマンチックな気持ちの伝え方をしたかったのですが……そんなものよりも、私の思いが伝わる不格好な言葉の方がいいに決まってます。

 そう思い、真っ直ぐとレックス様を見つめて言葉と想いをぶつけると、レックス様の目から、一筋の涙が流れ――それと同時に、私は唇を奪われました。

 触れるだけの、子供同士が出来心で行うようなキス。それはレックス様の優しさを象徴しているようなキスでしたわ。

「レックス、様……」
「ありがとう、アイリス殿……俺はとても嬉しい」
「もう、言い方が違いますよ? いつもの元気なレックス様を見せてください」

 互いに誰もいない病院の屋上で涙を流すという不思議な状況の中、レックス様は力強く涙を拭ってから、私の事を強く抱きしめてくださいました。

「……ああ! 俺は……俺は猛烈に感動しているぅぅぅぅ!! 」
「きゃあ!? ちょ、ちょっとレックス様!? お気持ちは嬉しいですし抱きしめてくれるのは嬉しいですが! 傷が痛みます!」
「っと! これはすまない! あまりの嬉しさでつい舞い上がってしまってな!」
「ふふっ……あはははっ。出会った時も似たような事を仰られていましたね」
「あはははは! そんな事もあったな! だがアイリス殿、今は過去よりも未来に目を向けようではないか! 俺達の未来は明るいぞ! その明るい未来へ向かって、俺と共に歩んでくれ!」
「はいっ!」

 レックス様の提案に力強く頷いた私は、誓いの意を込めて、もう一度レックス様と口づけを交わしました――
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