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エピローグ
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しっとりした曲が心地いい会場に入ると、今日のために来てくれた大切な人が、私達を優しく出迎えてくれた。
以前は、エルヴィン様を助けるために眺めていたウェディングロードを、自分が花嫁として歩けるだなんて、感慨深いものがある。
「アイリーン、足元に気をつけて」
「はい」
エルヴィン様の腕を取りながら、ゆっくりと祭壇に向かって歩いて行く。
その途中に、すました顔をするヴァーレシア先生や、満面の笑みで祝福するミトラ様、号泣するソーニャちゃんとパパ、静かにハンカチを目元に持っていくママの姿が見えた。
まだ入場しただけなのに、そんな泣いちゃって……あ、あれ……私もつられて泣いちゃいそうだよ……ダメダメ、泣いたらお化粧が崩れちゃう。
「階段があるから、気をつけて」
「ふふっ、いつにもまして心配性ですね」
「そうかな? いつも通りだと思うんだけどね」
私達にしか聞こえない小声で笑い合いながら、祭壇のところで待機していた牧師様に出迎えられた。
その後、この前の結婚式でも聞いた、聖書のとても大切な言葉を牧師様が読み上げを行った後、牧師様は私に優しく問いかけてきた。
「新郎エルヴィン、あなたはここにいるアイリーンを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦アイリーン、あなたはここにいるエルヴィンを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はいっ、誓います!」
「よろしい。では、指輪の交換を」
私とエルヴィン様は、互いに向かい合い、互いの左手の薬指に指輪をはめ合う。
事前に王家の御用達の職人と相談して作った指輪は、私達の結婚を祝福するように、キラキラと輝きを放っている。
「では、お二人の愛の形を、神にお見せください」
愛の形……それは、相手の人とのキスをすることだ。もう何度もしているとはいえ、結婚式という大場面で、それも人前でというのは、凄く緊張する。
「アイリーン、肩の力を抜いて、リラックスして。大丈夫だよ」
「エルヴィン様……いつも私を支えてくれて、ありがとうございます……愛してます」
「僕も、愛しているよ」
エルヴィン様は、私のベールをそっと上げると、静かに顔を寄せてきた。私もそれに続いて顔を寄せ……そのままキスをした。
すると、神の像から小さな光の玉が二個出て来て、私達の体にスーッと入ってきた。
「今ここに、神に祝福された新たな夫婦が誕生いたしました。次に、新婦アイリーンが、お手紙をお読みになられます」
牧師様の言葉の後に、スタッフの人から事前に用意していた手紙を受け取った私は、一度深呼吸をしてから、手紙を読み始めた。
――パパ、ママ、私を森で拾ってくれてから、ここまでずっと育ててくれて、ほんとうにありがとうございます。
お二人のおかげで、私はこうして大きくなって、みなさまに祝福されて……涙が出そうなくらい嬉しいです。
パパ、家族のために毎日汗水流して働いて疲れているのに、休みの日は、よく私と一緒に森に行って遊んだり、食料を採ったり、時には逞しい体で私を守ってくれたね。
なにかあると、自分のことなんて顧みずに、体を張って私を守ってくれてくれてありがとう。本当に頼もしくて、たくさん愛してくれたパパが大好きです。
ママ、どこの子供かもわからない私に、毎日ご飯を作ってくれて……本当においしくて、嬉しかったよ。
それからも、相談は何でも聞いてくれて、時には私のために叱ってくれてありがとう。体調が悪くても、私のために頑張ってくれてありがとう。優しくて、ちょっぴりおせっかいで、たくさん愛してくれたママが大好きです。
そして……もう一人、感謝の言葉を伝えたい方がございます。
そのお方は、初対面であったはずの私の頼みを聞き入れ、魔法を教えてくれました。それだけじゃなく、とある出来事の中でも、私に力を貸してくれました。
その人は、実は……私にとって、とても大切な人なんです。だから、改めてちゃんとお礼を言いたかった。ありがとうございます。そして……もう、自分を責めないで。
最後になりましたが、本日は私達の門出を祝うためにお集まりくださり、誠にありがとうございました。皆様のおかげで、私達は本当に幸せです――
「……私からの手紙は以上です。ありがとうございました」
私は、手紙を全て読み終えたあと、深々と頭を下げると、たくさんの祝福の拍手が降り注いだ。
中でもひときわ目立つくらい大きな拍手をしていたパパとソーニャちゃんは、涙と鼻水で顔がべちゃべちゃになってるし、ママも肩を震わせながら泣いていた。
そして……最後に言葉を送った彼も、初めて笑顔を浮かべながら、控えめに拍手をしてくれていた。
「アイリーン、本当によかったね」
「はい。これも全て、あなたがいてくれたおかげです」
「僕は大したことはしていないよ。全て、君が頑張った成果さ」
「そんなこと……それじゃあ、私達が力を合わせて頑張ったからってことにしませんか?」
「それは名案だ。さすがは、僕が愛した女性だよ」
「ふふっ……これからも、末永くよろしくお願いしますね」
祝福の拍手が鳴りやまない中、私達は世界で一番の幸せを感じながら笑い合う。
エルヴィン様やみんなと出会わなければ、私はこんなに成長できなかったし、幸せになれなかっただろう。
本当に……本当にありがとうございました。みんなの暖かい心に報いるためにも、私はエルヴィン様と、世界で一番幸せになります!
以前は、エルヴィン様を助けるために眺めていたウェディングロードを、自分が花嫁として歩けるだなんて、感慨深いものがある。
「アイリーン、足元に気をつけて」
「はい」
エルヴィン様の腕を取りながら、ゆっくりと祭壇に向かって歩いて行く。
その途中に、すました顔をするヴァーレシア先生や、満面の笑みで祝福するミトラ様、号泣するソーニャちゃんとパパ、静かにハンカチを目元に持っていくママの姿が見えた。
まだ入場しただけなのに、そんな泣いちゃって……あ、あれ……私もつられて泣いちゃいそうだよ……ダメダメ、泣いたらお化粧が崩れちゃう。
「階段があるから、気をつけて」
「ふふっ、いつにもまして心配性ですね」
「そうかな? いつも通りだと思うんだけどね」
私達にしか聞こえない小声で笑い合いながら、祭壇のところで待機していた牧師様に出迎えられた。
その後、この前の結婚式でも聞いた、聖書のとても大切な言葉を牧師様が読み上げを行った後、牧師様は私に優しく問いかけてきた。
「新郎エルヴィン、あなたはここにいるアイリーンを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦アイリーン、あなたはここにいるエルヴィンを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はいっ、誓います!」
「よろしい。では、指輪の交換を」
私とエルヴィン様は、互いに向かい合い、互いの左手の薬指に指輪をはめ合う。
事前に王家の御用達の職人と相談して作った指輪は、私達の結婚を祝福するように、キラキラと輝きを放っている。
「では、お二人の愛の形を、神にお見せください」
愛の形……それは、相手の人とのキスをすることだ。もう何度もしているとはいえ、結婚式という大場面で、それも人前でというのは、凄く緊張する。
「アイリーン、肩の力を抜いて、リラックスして。大丈夫だよ」
「エルヴィン様……いつも私を支えてくれて、ありがとうございます……愛してます」
「僕も、愛しているよ」
エルヴィン様は、私のベールをそっと上げると、静かに顔を寄せてきた。私もそれに続いて顔を寄せ……そのままキスをした。
すると、神の像から小さな光の玉が二個出て来て、私達の体にスーッと入ってきた。
「今ここに、神に祝福された新たな夫婦が誕生いたしました。次に、新婦アイリーンが、お手紙をお読みになられます」
牧師様の言葉の後に、スタッフの人から事前に用意していた手紙を受け取った私は、一度深呼吸をしてから、手紙を読み始めた。
――パパ、ママ、私を森で拾ってくれてから、ここまでずっと育ててくれて、ほんとうにありがとうございます。
お二人のおかげで、私はこうして大きくなって、みなさまに祝福されて……涙が出そうなくらい嬉しいです。
パパ、家族のために毎日汗水流して働いて疲れているのに、休みの日は、よく私と一緒に森に行って遊んだり、食料を採ったり、時には逞しい体で私を守ってくれたね。
なにかあると、自分のことなんて顧みずに、体を張って私を守ってくれてくれてありがとう。本当に頼もしくて、たくさん愛してくれたパパが大好きです。
ママ、どこの子供かもわからない私に、毎日ご飯を作ってくれて……本当においしくて、嬉しかったよ。
それからも、相談は何でも聞いてくれて、時には私のために叱ってくれてありがとう。体調が悪くても、私のために頑張ってくれてありがとう。優しくて、ちょっぴりおせっかいで、たくさん愛してくれたママが大好きです。
そして……もう一人、感謝の言葉を伝えたい方がございます。
そのお方は、初対面であったはずの私の頼みを聞き入れ、魔法を教えてくれました。それだけじゃなく、とある出来事の中でも、私に力を貸してくれました。
その人は、実は……私にとって、とても大切な人なんです。だから、改めてちゃんとお礼を言いたかった。ありがとうございます。そして……もう、自分を責めないで。
最後になりましたが、本日は私達の門出を祝うためにお集まりくださり、誠にありがとうございました。皆様のおかげで、私達は本当に幸せです――
「……私からの手紙は以上です。ありがとうございました」
私は、手紙を全て読み終えたあと、深々と頭を下げると、たくさんの祝福の拍手が降り注いだ。
中でもひときわ目立つくらい大きな拍手をしていたパパとソーニャちゃんは、涙と鼻水で顔がべちゃべちゃになってるし、ママも肩を震わせながら泣いていた。
そして……最後に言葉を送った彼も、初めて笑顔を浮かべながら、控えめに拍手をしてくれていた。
「アイリーン、本当によかったね」
「はい。これも全て、あなたがいてくれたおかげです」
「僕は大したことはしていないよ。全て、君が頑張った成果さ」
「そんなこと……それじゃあ、私達が力を合わせて頑張ったからってことにしませんか?」
「それは名案だ。さすがは、僕が愛した女性だよ」
「ふふっ……これからも、末永くよろしくお願いしますね」
祝福の拍手が鳴りやまない中、私達は世界で一番の幸せを感じながら笑い合う。
エルヴィン様やみんなと出会わなければ、私はこんなに成長できなかったし、幸せになれなかっただろう。
本当に……本当にありがとうございました。みんなの暖かい心に報いるためにも、私はエルヴィン様と、世界で一番幸せになります!
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