【完結】真実の愛を見つけたから離婚に追放? ありがとうございます! 今すぐに出ていきます!

ゆうき

文字の大きさ
35 / 97

第三十五話 愛する人へのお土産

しおりを挟む
「そんなの、一つしかないよ! ほら、こっちこっち!」

「ちょっと、そんな引っ張ったら、転んじゃうわよ」

 自分の時よりも興奮気味のミラに連れていかれた場所は、綺麗なお花屋さんだった。

「なるほど、花束をプレゼントするのね。とっても素敵なアイディアだわ」

「でしょでしょ! お花には色々な花言葉があるから、それでサイラス様に愛と感謝を伝えようよ!」

 あ、愛って……改めて言われると、恥ずかしくて顔から火が出そう。

「でも……私、お花って薬で使うための知識しか無いの」

「大丈夫大丈夫! あたし、結構詳しいから! だから、あたしに任せて!」

 とても頼もしいミラと一緒に、お花屋さんの中に入ると、お花の独特な甘い香りが出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」

「姉が恋人に花束を贈りたいのですけど、バラとかすみ草ってございますか?」

「ええ、ございますよ。少々お待ちください」

 いつも私やお父様と話す時とは違い、気品のある話し方で店員さんと話すミラの姿は、私なんかよりも、しっかり貴族をしているって印象を受ける。

「えっと、バラは赤いのを十一本、青を一本入れてください」

「かしこまりました。すぐに準備いたしますので、少々お待ちください」

 すでにミラの中では、花の種類や本数が決まっていたのね。でも、どうしてその種類と本数なのかしら?

「ねえミラ。さすがの私でも、バラの花言葉はわかるのだけど……どうしてかすみ草を入れたの? あと、バラの色とか本数にも意味があるの?」

「もちろんあるよ!」

 ミラは、ニヤリと笑ってから、今の注文に込められた花言葉を私に耳打ちしてもらったのだけど……過激な内容すぎて、一瞬意識が飛びかけたわ。

「どう、素敵でしょ?」

「す、素敵だけど! 私なんかに、そんな素敵なプレゼントが似合うとは思えなくて……それに、そんな花言葉……!」

「似合うに決まってるよ! それに、サイラス様も絶対喜んでくれる!」

「……そう、かしら……?」

「そうだよ! それに、今教えた花言葉の意味、全部お姉様の気持ちでしょう?」

「……ええ」

 少し前の私だったら、恥ずかしさの方が勝ってしまい、そんなわけないでしょって言っているところだけど、恋心を自覚した今だと、なにも反論が出来ない。

 ……ああもう、なんだか恥ずかしさに耐えきれなくなってきたわ! この空気を変えないと!

「そ、そうだわ。今、一緒に働いている人達の何人かが、調子を崩しているの。だから、お見舞いの花を送りたいのだけど、なにがいいかしら?」

 ……実は、もう何日も経っているのに、まだみんなの調子が戻らない。だから、仮眠室を一時的な病室代わりにしているの。

「それなら、ガーベラとかが良いんじゃないかな? 明るくて可愛い花だし、花言葉も希望だから、喜ばれると思う!」

「わかったわ。それじゃあ、それもいただいてきましょう」

 思わぬところで、お見舞いの品を手に入れると、お花屋さんを後にして、馬車まで戻っていった。

「あれ、お姉様? 乗らないの?」

「ええ。歩いてギルドに帰るわ。そのほうが早く着くからね」

「そんな~寂しいよ~!」

「もう、子供みたいなこと言わないの。また一緒にお出かけしてあげるから」

 体が成長したり、よその人と話す時は大人っぽくなったけど、私の前ではまだまだ子供なのよね。

「それじゃあ、またね。お父様によろしく言っておいて。それと、今日は本当にありがとう」

「あたしこそ、ありがと~!」

 馬車が出発してから間もなく、ミラはキャビンの窓から体を出し、こちらに向かって腕をブンブンと振り回していた。

「それじゃあ、またね~! あたし、ずっと応援してるから~!」

「ミラ……ありがとう~!」

 会おうと思えば、いつでも会いに行ける距離だから、深く考える必要は無いのかもしれないけど……やっぱり別れは寂しい。

「寂しがってても仕方がないわね。さあ、早く帰ってこれを渡さないと!」

 急いでギルドに帰ってきた私は、持ち前の体力のおかげで、一切息切れをすることはなかった。

「……あら、みんな眠っているのね」

 静かに仮眠室に入ってみると、レージュ様の姿はなく、他の人達は気持ちよさそうに眠っていた。
 そんな彼らのベッドの近くにある机に、買ってきた花を花瓶に生けて置いた。

 レージュ様、どこに行ったのかしら……あっ。もしかしたら、あそこかもしれないわね。

「……失礼します。エリシアです」

「はーい、どうぞー!」

 サイラス様の分と、レージュ様の分を持ってギルド長室に行くと、そこには私の想定通り、レージュ様の姿があった。

「レージュ様、もう起きて大丈夫なのですか?」

「ええ、なんとか。明日から現場に戻る予定です」

「そうだったのですね。これ、お見舞いなのですが……」

「これはこれは、ありがとうございます。とても綺麗ですね。質素な我が家が明るくなりそうです。早速帰って生けてあげなければ。では、僕はこれで」

 私が引き止める間もなく、レージュ様は部屋を出て行ってしまった。

 ……もしかして、邪魔をしちゃったかしら……もしそうなら、申し訳ないことをしてしまった。

「エリシア、今日はどうしたんだ? 確か、休みだから妹さんに会いに行くって言ってなかったか?」

「ええ、その帰りに寄ったの。レージュ様達にお見舞いと……これを、あなたに」

「え、俺に?」

「ひ、日頃のお礼みたいなものよ」

 キョトンとしているサイラス様に、例の花束を手渡す。

 こういう時に、素直に私の気持ちだって言えばいいものを、恥ずかしくてその言葉が出てこない自分が、本当に情けない。

 ……なんてことを呑気に考えていたら、サイラス様は花束を持ったまま、滝のような涙を流していた。

「えっ、どうしたの!? もしかして、気に入らなかった!?」

「ちがっ……エリシアが、俺のために……俺のために、こんな素敵なプレゼントをしてくれたって思ったら、嬉しくてさぁ……!」

 泣きじゃくるサイラス様を見て、心の底からプレゼントをあげて良かったと思うと同時に……やっぱりこの人のことが大好きだなと、強く思った。

 こういう時って、やっぱり告白をするべきなのかしら? でも、万が一にも断られて、この関係が崩れてしまったら?

 さすがにそんなことは無いとは思いたいけど、可能性はゼロではない。そう考えると……言い出せなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

婚約破棄?悪役令嬢の復讐は爆速で。

ハチワレ
恋愛
「リリム・フォン・アスタロト! 貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの最中、婚約者である王太子エリオットから身に覚えのない罪を突きつけられた公爵令嬢リリム。隣には「真実の愛」を語るマシュマロ系男爵令嬢シャーリーの姿。 普通の令嬢なら泣き崩れる場面――だが、リリムは違った。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...