11 / 115
第十一話 薬の製作
不治の病だけど、私なら治せる。そうオーウェン様に伝えると、彼の表情がパッと明るくなった。
「本当か!? 本当にココを治せるのか!?」
「は、はい」
「そうか、それはよかった……本当に、よかった……!」
安堵の息を漏らすオーウェン様の目じりには、キラリと輝く優しい雫が溜まっていた。
本当に、オーウェン様にとってココ様は大切な方なのだろう。今の私には、そう思ってくれる人が周りからいなくなってしまったから、大切にしてもらえるのが羨ましい。
「失礼、つい取り乱してしまいました」
「いえ、大丈夫ですよ。それで、材料ですが――」
私は小屋にあった紙とペンを借りて、材料を簡潔に書きだす。
必要なのは、三種類の薬草と、薬効がある青い鉱石。そしてティミッドボアと呼ばれるイノシシの生き血だ。
臆病イノシシとも呼ばれるこの生き物の血は、黒染病の病原体を無毒化する効果がある。
でも、単体だと病原体の力の方が何倍も強くて、太刀打ちできない。昔の人達も、あくまでこれを飲ませることで、延命するしかできなかったと記録にあった。
それを、薬草や鉱石、そして聖女の力で補強をして、黒染病に負けない薬にしたそうだ。
「薬草は、持ち合わせのもので何とかなりますが、鉱石とイノシシに関しては手持ちに無くて……」
「問題ありません。この鉱石もイノシシも、俺が取ってきます」
「わかりました。一刻を争う状態ですので、先に私の方で薬の制作を進めておきます。その間に、鉱石とイノシシをお願いします。特徴を書いておきますので、探す時の参考にしてください」
私は再び紙にペンを走らせ、鉱石とイノシシの簡単な特徴を書いて手渡した。
「鉱石は、主に水辺にあります。ティミッドボアに関しては……すみません、どこにいるかは……」
「大丈夫です。この特徴のイノシシなら見たことがありますので。すぐに戻りますから、ココのこと、よろしくお願いします」
「はい、任せてください!」
家を飛び出したオーウェン様を見送った私は、早速薬の製作に取り掛かる。
まずは、緑色の薬草を小屋にあった鍋に入れて水につけ、火をつけて煮始める。この薬草は煮だすことで薬茶となる。既に乾燥しているものを持っていたから、簡単に作れるわ。
次に、この赤と青の薬草を乳鉢に入れて、すり潰していく。均等に、そしてあまりすり潰さないように丁寧にやるのがコツだ。
「この薬草は、水に色がついてきたら頃合いだから、もういいわね」
乾燥した薬草を煮た結果、水は薬草と同じ緑色に変わっていた。それを確認した私は、鍋を火から離した。
あとは、この薬茶を混ぜて、すり潰した薬草に入れてかき混ぜ、砕いた鉱石を加える。最後にティミッドボアの生き血を少量混ぜれば完成――なのだけど、まだオーウェン様は戻って来ていない。
それも仕方がない。ティミッドボアの生息域は多岐にわたるけど、本当に臆病なイノシシで、中々見つからないし、逃げ足が早い動物だと記憶している。オーウェン様の口ぶりからして、きっとこの森にもいるだろうけど、そんなに簡単に捕まえられるはずがない。
「急いでほしいけど、無茶はしないでくださいね……」
「……うぅ……!」
「今の声、ココ様?」
地下から聞こえてきたうめき声のようなものに反応して地下に行くと、ココ様が苦しそうに唸っていた。
体がかなり熱くなっている。発熱が酷くなっているのね。すぐに解熱効果のある薬を作ってあげなきゃ!
「待っててください、ココ様!」
私は先程使った緑色の薬草の残りをすりつぶし、水で溶かした。
この薬草には、解熱効果もある。そこに私の聖女の力を加えて、即効性を上げるの。
「熱の苦しみから解放されますように……またオーウェン様と仲良く暮らせますように……」
聖女の祈りを込めた影響か、緑色だった薬が真っ白に変化した。祈りを捧げると、たまにこういう変化が起こることがある。
「ココ様、お薬です。ゆっくりでいいので、お飲みください」
「うっ……ごほっ」
つらそうではあったけど、私の薬を飲んでくれたココ様の体は、段々と赤みが取れていき、触っても熱くなくなっていった。
ふう、とりあえず熱が下がって一安心だわ。でも、油断は禁物だ。ココ様を苦しめる病原体をやっつけていない以上、また同じ様なことが起こってしまう。
「……お兄ちゃん……」
「大丈夫ですよ。オーウェン様が、必ずあなたを助けてくれますから」
うなされながらも、オーウェン様を呼ぶココ様の頭を撫でていると、上の階でバタンっという音が聞こえてきた。
もしかして、もう帰ってきたの? まだ出てから一時間くらいしか経っていないのに……それとも、泥棒が入ってきたなんてことは……ないわよね?
「エリンさん、いないんですか?」
「あ、やっぱりオーウェン様だったんですね。あまりにも早いので、もしかしたら泥棒かと思って……」
「それは、心配をかけてしまって申し訳ない」
上の階に行くと、息を切らせたオーウェン様が立っていた。汗もたくさんかいていて、顔も真っ赤なところを見るに、本当に急いで取ってきてくれたのだろう。
「鉱石は、これだけあればいいですか?」
「袋が鉱石でパンパン……はい、大丈夫です! ティミッドボアは……」
「こちらです」
一度小屋の外に出ていったオーウェン様は、気絶した三匹のティミッドボアを担いで入ってきた。
臆病で中々捕まえられないといわれているのに、この短時間で三匹も捕まえてしまうなんて……それに、人間の子供くらいの大きさがあるのに、三匹同時に持っている力も凄すぎる。
「よく三匹も見つけられましたね……」
「これでも、森に狩りによく行くので、獲物を見つけるのも、捕まえるのも慣れているんです。このイノシシも何度か見たことがあるんです。逃げ足の割に食べるところが少ないので、経験は少ないですけどね。それで、こちらもこれで足りますか?」
「これだけいれば大丈夫です。あとは私に任せてください」
オーウェン様から薬の材料を受け取った私は、鉱石を砕いて粉末状にし、それを先程作った薬に入れてから、ティミッドボアから生き血をいただいた。
「エリンさんも、イノシシを狩った経験があるんですか? 随分と手慣れていますが……」
「薬を作るのに、生きた動物から生き血をいただいた経験が何度もあるんです」
質問に答えながら、薬の中に数滴の生き血を入れると、薬の色が緑色から赤色に変化した。
見た目はあまり良くないかもしれないけど、これが黒染病の薬だ。あとは私の聖女の力を与えれば完成だ。
「…………」
完成した薬を持って、先程と同じようにココ様の健康と幸せを心の中で祈る。すると、薬は優しい光を帯びた。
「これで、黒染病の薬は完成しました。さあ、ココ様に飲ませましょう」
「はい。本当にありがとうございます……!」
「お礼はココ様が治った後にお聞かせください。さあ、行きましょう」
オーウェン様と地下の部屋に行き、うなされ続けているココ様にゆっくりと薬を飲ませてあげた。
すると、ココ様の体から黒いシミは消える――ことはなく、今までで一番苦しみ始めた。
「本当か!? 本当にココを治せるのか!?」
「は、はい」
「そうか、それはよかった……本当に、よかった……!」
安堵の息を漏らすオーウェン様の目じりには、キラリと輝く優しい雫が溜まっていた。
本当に、オーウェン様にとってココ様は大切な方なのだろう。今の私には、そう思ってくれる人が周りからいなくなってしまったから、大切にしてもらえるのが羨ましい。
「失礼、つい取り乱してしまいました」
「いえ、大丈夫ですよ。それで、材料ですが――」
私は小屋にあった紙とペンを借りて、材料を簡潔に書きだす。
必要なのは、三種類の薬草と、薬効がある青い鉱石。そしてティミッドボアと呼ばれるイノシシの生き血だ。
臆病イノシシとも呼ばれるこの生き物の血は、黒染病の病原体を無毒化する効果がある。
でも、単体だと病原体の力の方が何倍も強くて、太刀打ちできない。昔の人達も、あくまでこれを飲ませることで、延命するしかできなかったと記録にあった。
それを、薬草や鉱石、そして聖女の力で補強をして、黒染病に負けない薬にしたそうだ。
「薬草は、持ち合わせのもので何とかなりますが、鉱石とイノシシに関しては手持ちに無くて……」
「問題ありません。この鉱石もイノシシも、俺が取ってきます」
「わかりました。一刻を争う状態ですので、先に私の方で薬の制作を進めておきます。その間に、鉱石とイノシシをお願いします。特徴を書いておきますので、探す時の参考にしてください」
私は再び紙にペンを走らせ、鉱石とイノシシの簡単な特徴を書いて手渡した。
「鉱石は、主に水辺にあります。ティミッドボアに関しては……すみません、どこにいるかは……」
「大丈夫です。この特徴のイノシシなら見たことがありますので。すぐに戻りますから、ココのこと、よろしくお願いします」
「はい、任せてください!」
家を飛び出したオーウェン様を見送った私は、早速薬の製作に取り掛かる。
まずは、緑色の薬草を小屋にあった鍋に入れて水につけ、火をつけて煮始める。この薬草は煮だすことで薬茶となる。既に乾燥しているものを持っていたから、簡単に作れるわ。
次に、この赤と青の薬草を乳鉢に入れて、すり潰していく。均等に、そしてあまりすり潰さないように丁寧にやるのがコツだ。
「この薬草は、水に色がついてきたら頃合いだから、もういいわね」
乾燥した薬草を煮た結果、水は薬草と同じ緑色に変わっていた。それを確認した私は、鍋を火から離した。
あとは、この薬茶を混ぜて、すり潰した薬草に入れてかき混ぜ、砕いた鉱石を加える。最後にティミッドボアの生き血を少量混ぜれば完成――なのだけど、まだオーウェン様は戻って来ていない。
それも仕方がない。ティミッドボアの生息域は多岐にわたるけど、本当に臆病なイノシシで、中々見つからないし、逃げ足が早い動物だと記憶している。オーウェン様の口ぶりからして、きっとこの森にもいるだろうけど、そんなに簡単に捕まえられるはずがない。
「急いでほしいけど、無茶はしないでくださいね……」
「……うぅ……!」
「今の声、ココ様?」
地下から聞こえてきたうめき声のようなものに反応して地下に行くと、ココ様が苦しそうに唸っていた。
体がかなり熱くなっている。発熱が酷くなっているのね。すぐに解熱効果のある薬を作ってあげなきゃ!
「待っててください、ココ様!」
私は先程使った緑色の薬草の残りをすりつぶし、水で溶かした。
この薬草には、解熱効果もある。そこに私の聖女の力を加えて、即効性を上げるの。
「熱の苦しみから解放されますように……またオーウェン様と仲良く暮らせますように……」
聖女の祈りを込めた影響か、緑色だった薬が真っ白に変化した。祈りを捧げると、たまにこういう変化が起こることがある。
「ココ様、お薬です。ゆっくりでいいので、お飲みください」
「うっ……ごほっ」
つらそうではあったけど、私の薬を飲んでくれたココ様の体は、段々と赤みが取れていき、触っても熱くなくなっていった。
ふう、とりあえず熱が下がって一安心だわ。でも、油断は禁物だ。ココ様を苦しめる病原体をやっつけていない以上、また同じ様なことが起こってしまう。
「……お兄ちゃん……」
「大丈夫ですよ。オーウェン様が、必ずあなたを助けてくれますから」
うなされながらも、オーウェン様を呼ぶココ様の頭を撫でていると、上の階でバタンっという音が聞こえてきた。
もしかして、もう帰ってきたの? まだ出てから一時間くらいしか経っていないのに……それとも、泥棒が入ってきたなんてことは……ないわよね?
「エリンさん、いないんですか?」
「あ、やっぱりオーウェン様だったんですね。あまりにも早いので、もしかしたら泥棒かと思って……」
「それは、心配をかけてしまって申し訳ない」
上の階に行くと、息を切らせたオーウェン様が立っていた。汗もたくさんかいていて、顔も真っ赤なところを見るに、本当に急いで取ってきてくれたのだろう。
「鉱石は、これだけあればいいですか?」
「袋が鉱石でパンパン……はい、大丈夫です! ティミッドボアは……」
「こちらです」
一度小屋の外に出ていったオーウェン様は、気絶した三匹のティミッドボアを担いで入ってきた。
臆病で中々捕まえられないといわれているのに、この短時間で三匹も捕まえてしまうなんて……それに、人間の子供くらいの大きさがあるのに、三匹同時に持っている力も凄すぎる。
「よく三匹も見つけられましたね……」
「これでも、森に狩りによく行くので、獲物を見つけるのも、捕まえるのも慣れているんです。このイノシシも何度か見たことがあるんです。逃げ足の割に食べるところが少ないので、経験は少ないですけどね。それで、こちらもこれで足りますか?」
「これだけいれば大丈夫です。あとは私に任せてください」
オーウェン様から薬の材料を受け取った私は、鉱石を砕いて粉末状にし、それを先程作った薬に入れてから、ティミッドボアから生き血をいただいた。
「エリンさんも、イノシシを狩った経験があるんですか? 随分と手慣れていますが……」
「薬を作るのに、生きた動物から生き血をいただいた経験が何度もあるんです」
質問に答えながら、薬の中に数滴の生き血を入れると、薬の色が緑色から赤色に変化した。
見た目はあまり良くないかもしれないけど、これが黒染病の薬だ。あとは私の聖女の力を与えれば完成だ。
「…………」
完成した薬を持って、先程と同じようにココ様の健康と幸せを心の中で祈る。すると、薬は優しい光を帯びた。
「これで、黒染病の薬は完成しました。さあ、ココ様に飲ませましょう」
「はい。本当にありがとうございます……!」
「お礼はココ様が治った後にお聞かせください。さあ、行きましょう」
オーウェン様と地下の部屋に行き、うなされ続けているココ様にゆっくりと薬を飲ませてあげた。
すると、ココ様の体から黒いシミは消える――ことはなく、今までで一番苦しみ始めた。
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
愛してくれない人たちを愛するのはやめました これからは自由に生きますのでもう私に構わないでください!
花々
恋愛
ベルニ公爵家の令嬢として生まれたエルシーリア。
エルシーリアには病弱な双子の妹がおり、家族はいつも妹ばかり優先していた。エルシーリアは八歳のとき、妹の代わりのように聖女として神殿に送られる。
それでも頑張っていればいつか愛してもらえると、聖女の仕事を頑張っていたエルシーリア。
十二歳になると、エルシーリアと第一王子ジルベルトの婚約が決まる。ジルベルトは家族から蔑ろにされていたエルシーリアにも優しく、エルシーリアはすっかり彼に依存するように。
しかし、それから五年が経ち、エルシーリアが十七歳になったある日、エルシーリアは王子と双子の妹が密会しているのを見てしまう。さらに、王家はエルシーリアを利用するために王子の婚約者にしたということまで知ってしまう。
何もかもがどうでもよくなったエルシーリアは、家も神殿も王子も捨てて家出することを決意。しかし、エルシーリアより妹の方がいいと言っていたはずの王子がなぜか追ってきて……。
〇カクヨムにも掲載しています
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
氷の公爵は、捨てられた私を離さない
空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。
すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。
彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。
アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。
「君の力が、私には必要だ」
冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。
彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。
レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。
一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。
「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。
これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています