私のことはお気になさらず

みおな

文字の大きさ
23 / 83

公爵閣下と過去

しおりを挟む
 カールの話は、こうだった。

 元グリフォン公爵であるヴィル様のお父様は、中々の美丈夫だったのだそう。

 ヴィル様の弟さんであるエリク様は、そのお父様似で、今流行りの役者のような美男子だったのだとか。

 一方ヴィル様は、他国から嫁いできたお母様似で、ヴィル様の婚約者はずっとエリク様が婚約者だったらと文句を言っていたらしい。

 だけど、エリク様には同い年の婚約者様がいて、仲睦まじくされていたそう。

 それにエリク様は、お兄様であるヴィル様を尊敬していたそうだ。

 だけどヴィル様の婚約者は、ヴィル様でなくエリク様を求めた。

 そして。

 願うだけでなく愚かにも行動に移した。

 エリク様の婚約者様を、破落戸に襲わせたのだそうだ。

 そして、それに心を壊した婚約者様に寄り添い支えていたエリク様に媚薬を飲ませ、事に及んだ。

 それに絶望した婚約者様が自死を選び・・・

 エリク様は、それを追われた。

 国王陛下は、そのヴィル様の元婚約者を貴族籍から抜き、罪人たち用の娼館へと送ったそうだ。

 その処罰には、令嬢の両親が厳しすぎないかと抗議したらしいが、陛下は「好きでもない相手に体を暴かれる気持ちがよく分かるだろう」とおっしゃったそうだ。

 うん。
私もその通りだと思う。

 よくもまぁ、そんな極悪非道で自分勝手なことができたものだ。

 その令嬢は、恋ゆえのことだと言ったらしいけど。

 それが恋心だと言うのなら。

 私は一生、恋心なんて知らなくてもかまわない。

 そんなことがあったなら、ヴィル様が婚約者を作らなかった気持ちも理解るわ。

 というか、ご両親!
どうして貴族のままでいなかったのよ!

 どんなに辛くても、お二人が矢面に立ってヴィル様を守るべきじゃないの!

 怒りと悲しみと、それからヴィル様への複雑な気持ちで、胸の中がいっぱいになった。

 ヴィル様は、王妃殿下から言われて・・・
 仕方なく私と婚約してくれたのかもしれない。

 本当は、婚約なんかしたくなかったのかもしれない。

 だって、そんな思いをしたのなら婚約にも令嬢にも、良い気持ちは持っていないはずだもの。

 ケレス様のことが嫌で、婚約を解消しようと探した婚約者だけど、ヴィル様が受けた悪意に比べたら、あの二人のイチャイチャなんて・・・

 嫌だけど。

 でも!政略結婚で、何なら白い結婚だと割り切れば、我慢できなくもないわ!

 そんな辛い思いをしたヴィル様に、無理させてる方が嫌よ。

 お別れ・・・

 そこに考えが及んだ時、低い声が耳に聞こえた。

「どうして泣いている?」
 
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

処理中です...