私のことはお気になさらず

みおな

文字の大きさ
29 / 83

結婚式と愚か者

しおりを挟む
 王宮の大聖堂で行われる結婚式には、国王陛下や親族、あとは高位貴族の当主しか参加できない。

 その代わり、聖堂から移動して王宮の広間で多くの方たちから祝福を受ける。

 ヴィル様は警戒するようにおっしゃっていたけど、それはヴィル様の地位を狙う者たちがいるということよ。

 決して、目の前にいる人のことじゃないわ!

「ティア!迎えに来たよ。待たせてしまったけど、僕はこうやってちゃんと迎えに来たよ」

「・・・」

 この方、こんなに意味の分からないことを言う方だったかしら?

 出会った頃は・・・
普通に感じたわ。

 少なくとも、花婿の隣で幸せそうに微笑んでる花嫁に、こんなことを言う人じゃなかったわ!

 というか、書面だけの婚姻をした後は国外追放じゃなかったの?

 ケレス様はもう成人されたはずよ。
私よりお誕生日は前だったもの。

 カバヤン伯爵令嬢のことは・・・
ええと、ええと、興味がなかったからほとんど二人の話は右から左に流してたから・・・

 駄目だわ、思い出せない。

 いえ。いいわ。問題点はそこじゃないもの。

 軟禁されているはずのケレス様が、何故ここにいるの?

 監視はどうなってるの?

 それに、あれほど優先してきたカバヤン伯爵令嬢はどうしたの?

 あれこれ考えてたけど、とりあえずは!

「タービン公爵令息様。名前を呼ぶのをおやめください。私のことは、グリフォン公爵夫人と」

「ティア!ああ、そうか。迎えに来るのが遅くなったから拗ねているんだね?でも、ほら僕はちゃんと迎えに来ただろ?」

「拗ねてなどおりませんし、貴方様を待ってもいません。私は今日、夫と結婚しましたの。そもそも何故ここにいらっしゃるのです?カバヤン伯爵令嬢はどちらに?」

「ああ。やっぱりティアはミネルバとのことを誤解していたんだね。だから、こんなふうに他の男と結婚するをして、僕の気を引こうと。でも、ミネルバは幼馴染なんだよ。僕はちゃんと君のことを愛しているよ」

 ケレス様の言葉に、背中がぞわぞわっとした。

 やめてよ!背中を虫が這ってるみたいに、嫌悪感が半端ないわ。

 大体、誤解もへったくれもないし、私と貴方の婚約はすでになくなっているのよ。

 タービン公爵は、あっさりと婚約関係の解消に応じたんだから。

 公爵は夫人の言うことに絶対で、夫人はカバヤン伯爵令嬢のことを気に入っていたし、嫌いな公爵の母親が決めた私との婚約に不満を持っていたもの。

「私とタービン公爵令息との婚約は、貴方のご両親が解消手続きをなさいました。すでに私たちは婚約者ではありませんわ」

 せっかくの結婚式なのに!いい加減にしてよ!
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

処理中です...