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穏やかな日々と出産
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悪阻は予定通りに、三ヶ月少しで治った。
吐き気はあったものの、大きな問題はなかったわ。
お医者様の診断でも、お子はすくすく育っているようで、問題ないと言われた。
悪阻が治ったので、お庭の散歩は再開することになったわ。
体力を付けていないと、出産時が大変だとお医者様がヴィル様に言ってくださったから。
お腹が大きくなってくると、余計に不安らしいのよね。
ヴィル様はご弟妹もいないから、妊婦と接したことがないからかもしれない。
その日、散歩に行くためにヴィル様を待っていると小さな異変があった。
「あ」
私の小さな呟きに、アデリアがすぐに反応する。
「どうなさいましたか?奥様」
「アデリア。今、お子が・・・」
お腹を撫でる私に、アデリアがピン!と来たようだ。
「すぐに旦那様をお呼びして参ります」
「もうすぐいらして下さるのだから、大丈夫よ」
「いえ、すぐに」
そう言うと、アデリアは本当にすぐに部屋から出て行った。
どうせすぐにお散歩のためにいらして下さるのだから、その時でかまわないのに。
「アデリアはせっかちですね~」
お腹を撫でながら、お子に語りかけていると、勢いよく扉が開いたと思ったらヴィル様が部屋に飛び込んできた。
「ヴィル様?」
「どうした?ティア。具合が悪いのか?医者を呼ぶか?」
私の足元に跪いて、顔を覗き込んで来る。
後ろからついて来ていたアデリアを見ると、首を横に振っていた。
ヴィル様ってば、アデリアに詳細を聞かずに来られたのね。
ふふっ。嬉しい。
それだけ、私とお子のことを思って下さっているのね。
「あの、お子が・・・」
「すぐ医師を」
「違うのです。お子が動いたのです!」
ヴィル様の手を取って、自分のお腹に当てる。
一度だけだったから、もう蹴らないかしら?
「子が・・・」
ポコン!
「あ!ヴィル様!」
小さいけど、お腹を蹴ったのを感じてヴィル様に訴えると、ヴィル様はジッとお腹を見ていた。
ふ、不快だった?
「俺とティアの子が、ここにいるのだな」
しばらく後に、ヴィル様がそう呟かれた。
後継だからというのではなく、私とのお子を歓迎してくれていると思って良いのよね?
「お父様ですよ~?」
ポコン!ポコン!
手をヴィル様の手に添えるようにして、お腹に語りかけると、再びお腹が蹴られた。
まるで返事をしているみたいだわ。
「ふふっ。まるでよろしくって言っているみたいですわね」
「そうだな」
その後、お子が動くことはなかったけど、ヴィル様はしばらくお腹に手を当てたままだったわ。
吐き気はあったものの、大きな問題はなかったわ。
お医者様の診断でも、お子はすくすく育っているようで、問題ないと言われた。
悪阻が治ったので、お庭の散歩は再開することになったわ。
体力を付けていないと、出産時が大変だとお医者様がヴィル様に言ってくださったから。
お腹が大きくなってくると、余計に不安らしいのよね。
ヴィル様はご弟妹もいないから、妊婦と接したことがないからかもしれない。
その日、散歩に行くためにヴィル様を待っていると小さな異変があった。
「あ」
私の小さな呟きに、アデリアがすぐに反応する。
「どうなさいましたか?奥様」
「アデリア。今、お子が・・・」
お腹を撫でる私に、アデリアがピン!と来たようだ。
「すぐに旦那様をお呼びして参ります」
「もうすぐいらして下さるのだから、大丈夫よ」
「いえ、すぐに」
そう言うと、アデリアは本当にすぐに部屋から出て行った。
どうせすぐにお散歩のためにいらして下さるのだから、その時でかまわないのに。
「アデリアはせっかちですね~」
お腹を撫でながら、お子に語りかけていると、勢いよく扉が開いたと思ったらヴィル様が部屋に飛び込んできた。
「ヴィル様?」
「どうした?ティア。具合が悪いのか?医者を呼ぶか?」
私の足元に跪いて、顔を覗き込んで来る。
後ろからついて来ていたアデリアを見ると、首を横に振っていた。
ヴィル様ってば、アデリアに詳細を聞かずに来られたのね。
ふふっ。嬉しい。
それだけ、私とお子のことを思って下さっているのね。
「あの、お子が・・・」
「すぐ医師を」
「違うのです。お子が動いたのです!」
ヴィル様の手を取って、自分のお腹に当てる。
一度だけだったから、もう蹴らないかしら?
「子が・・・」
ポコン!
「あ!ヴィル様!」
小さいけど、お腹を蹴ったのを感じてヴィル様に訴えると、ヴィル様はジッとお腹を見ていた。
ふ、不快だった?
「俺とティアの子が、ここにいるのだな」
しばらく後に、ヴィル様がそう呟かれた。
後継だからというのではなく、私とのお子を歓迎してくれていると思って良いのよね?
「お父様ですよ~?」
ポコン!ポコン!
手をヴィル様の手に添えるようにして、お腹に語りかけると、再びお腹が蹴られた。
まるで返事をしているみたいだわ。
「ふふっ。まるでよろしくって言っているみたいですわね」
「そうだな」
その後、お子が動くことはなかったけど、ヴィル様はしばらくお腹に手を当てたままだったわ。
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