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第16話
しおりを挟む「ニケ!頭を下げて素直に謝るなら、婚約関係を継続してやる!大体、ロートレック侯爵家との縁を結びたいのだろう?なら、素直に僕の言うことを聞いていれば良いんだ」
この世界には、何度言っても物事を理解せず、自分の世界でしか物事を考えられない人間がいることを、ニケは思い知った。
こんなのと結婚しないで本当に良かった。セラフィム子爵家の汚点になるところであったと、ニケは息を吐く。
「マグエル・ロートレック侯爵令息様。婚約者でもない私のことは、セラフィム子爵令嬢とお呼び下さい。名前で呼ばれるなど不快ですわ」
「なっ!!」
「それから、婚約解消の書類は既に王家に提出済みですから、婚約関係の継続などできませんし、私はするつもりもありません。あと、ついでにお伝えしますと、セラフィム子爵家がロートレック侯爵家と縁を結びたいのではありません。ロートレック侯爵家が我が家と縁を結びたかったみたいですよ」
きっと言っても理解しないだろうが、黙って言われるままでいるつもりはない。
案の定、マグエルは唾を飛ばしながら言い返して来た。
「そんなわけあるかっ!負け惜しみも大概にしろ!聞かれましたか?王太子殿下っ!」
「ああ。聞いた。マグエル、お前は本当に侯爵家の子息なのか?我が国の貴族にこんな馬鹿がいるとは思わなかった」
「ぽぇ?」
ラギトの返答が予想外だったのだろう。マグエルが妙な声を出している。
ぽぇってなに?頭の中の空気か何かが抜けたの?
頭の中、脳みそないよね?空気詰まってるだけだよね?それ、抜けたのかな?
「王太子・・・殿下?」
「その空っぽの頭に入るのかわからないが、よく聞くといい。ニケ・セラフィム子爵令嬢の母親セラフィム子爵夫人は、ケルドラード皇国の前皇帝陛下とフォレスト王国公爵家のご令嬢のご息女だ」
「は?」
「そして、セラフィム子爵家嫡男のノクス殿の奥方はフォレスト王家の末娘。ニケ嬢の姉君の夫は、当時ケルドラード皇国宰相を務めていたビスクランド侯爵の孫だ。ちなみに、そのビスクランド侯爵夫人は、我がアシュタル王国の先先代の国王陛下の従妹だから、ニケ嬢と僕は遠縁の親戚関係だな」
「は?」
やはり、理解できていないようだ。
まぁ、脳みその代わりに空気が詰まっているのだから、理解できないわよね、とニケは苦笑する。
それでも自身の父親や、ニケに言われても理解できないことも、王太子殿下から言われればカケラくらいは頭に入るかもしれない。
普通は物心つく頃には、親が子供にこの国の貴族については教えるものだ。
子供だからといって、何か問題を起こしたら、相手によっては家を揺るがす大問題になるからだ。
そして、普通の貴族の子供は、セラフィム子爵家に手出ししてくるようなことはない。
仲良くしようとすり寄ってくることはあっても、だ。それは、正しくセラフィム子爵家の価値を理解しているということ。
ニケは、その下心が嫌で、その下心を感じさせないマグエルに、出会った時は多少の好意を持てたのだが、下心がないのではなくセラフィム子爵家の価値を理解していないというオチであった。
この世界には、何度言っても物事を理解せず、自分の世界でしか物事を考えられない人間がいることを、ニケは思い知った。
こんなのと結婚しないで本当に良かった。セラフィム子爵家の汚点になるところであったと、ニケは息を吐く。
「マグエル・ロートレック侯爵令息様。婚約者でもない私のことは、セラフィム子爵令嬢とお呼び下さい。名前で呼ばれるなど不快ですわ」
「なっ!!」
「それから、婚約解消の書類は既に王家に提出済みですから、婚約関係の継続などできませんし、私はするつもりもありません。あと、ついでにお伝えしますと、セラフィム子爵家がロートレック侯爵家と縁を結びたいのではありません。ロートレック侯爵家が我が家と縁を結びたかったみたいですよ」
きっと言っても理解しないだろうが、黙って言われるままでいるつもりはない。
案の定、マグエルは唾を飛ばしながら言い返して来た。
「そんなわけあるかっ!負け惜しみも大概にしろ!聞かれましたか?王太子殿下っ!」
「ああ。聞いた。マグエル、お前は本当に侯爵家の子息なのか?我が国の貴族にこんな馬鹿がいるとは思わなかった」
「ぽぇ?」
ラギトの返答が予想外だったのだろう。マグエルが妙な声を出している。
ぽぇってなに?頭の中の空気か何かが抜けたの?
頭の中、脳みそないよね?空気詰まってるだけだよね?それ、抜けたのかな?
「王太子・・・殿下?」
「その空っぽの頭に入るのかわからないが、よく聞くといい。ニケ・セラフィム子爵令嬢の母親セラフィム子爵夫人は、ケルドラード皇国の前皇帝陛下とフォレスト王国公爵家のご令嬢のご息女だ」
「は?」
「そして、セラフィム子爵家嫡男のノクス殿の奥方はフォレスト王家の末娘。ニケ嬢の姉君の夫は、当時ケルドラード皇国宰相を務めていたビスクランド侯爵の孫だ。ちなみに、そのビスクランド侯爵夫人は、我がアシュタル王国の先先代の国王陛下の従妹だから、ニケ嬢と僕は遠縁の親戚関係だな」
「は?」
やはり、理解できていないようだ。
まぁ、脳みその代わりに空気が詰まっているのだから、理解できないわよね、とニケは苦笑する。
それでも自身の父親や、ニケに言われても理解できないことも、王太子殿下から言われればカケラくらいは頭に入るかもしれない。
普通は物心つく頃には、親が子供にこの国の貴族については教えるものだ。
子供だからといって、何か問題を起こしたら、相手によっては家を揺るがす大問題になるからだ。
そして、普通の貴族の子供は、セラフィム子爵家に手出ししてくるようなことはない。
仲良くしようとすり寄ってくることはあっても、だ。それは、正しくセラフィム子爵家の価値を理解しているということ。
ニケは、その下心が嫌で、その下心を感じさせないマグエルに、出会った時は多少の好意を持てたのだが、下心がないのではなくセラフィム子爵家の価値を理解していないというオチであった。
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