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第2章
セレスティーナの婚約者《アレクシス視点》
セレスティーナの前に山のように積み上げられた釣書に、イラッとした。
アルバム皇国の皇女のセレスティーナに、皇国内の公爵家や侯爵家はもちろん、他国の王族や高位貴族からも申し込みが多数来ていた。
愛らしく聡明なセレスティーナを手に入れたい貴族は多い。
理解していたつもりだが、目の前の釣書の山を見ているとイライラしてしまう。
セレスティーナの中に、グレイス・シュラットの精神があることは、僕しか知らない。
グレイス・シュラット。
かつてマーベラス王国で魔女と呼ばれた侯爵令嬢。その妹ディアナ嬢の話で、聖女であったことがわかった。
そのグレイスが死んだ日がセレスティーナの誕生日だった。
その日までのセレスティーナは、僕にべったり甘えてて、5歳の普通の甘やかされた皇女だった。
だけど、グレイスの精神が表に出てきてからは、セレスティーナは聡明な皇女として周囲に見られるようになった。
見た目の愛らしい、しかも聡明な皇女。釣書の量は当然といえば当然だ。
セレスティーナが戸惑った表情で手にしている釣書を取り上げる。
「アル兄様?」
「そんなに気が進まないなら僕の婚約者になればいいよ」
何も考えずに出た言葉だった。
だが、キョトンとした顔のセレスティーナとは対照的に、叔父上と叔母上は大喜びで、即座に僕とセレスティーナの婚約が結ばれることとなった。
それもそうだ。
普通は婚約はお互いの家での話し合いや婚約の条件など交わされるが、僕の親代わりがセレの親である叔父上と叔母上なので、話し合う必要性がない。
「アル兄様はお嫌ではないのですか?」
「どうして嫌だと思うの?セレと婚約できるなんて嬉しいよ」
僕がそう言うと、セレが胡散臭げに僕を見る。
セレスティーナの頃は僕の言うこと全てを受け入れていたセレも、グレイスになってからは時々こういう表情をする。
「アル兄様からしたら、私は子供だと思うんですけど。恋愛対象にはならないんじゃないですか?」
叔父上と叔母上が、国内外に僕らの婚約を発表するために、準備に退出したあと、セレスティーナは不満そうにそう言ってきた。
「確かに、セレと僕は10歳離れているけど、グレイスの精神とならそう離れてないだろう?僕はセレのことを可愛いと思っているし、グレイスのことを愛しいと思っているよ」
「愛し・・い、えっ、えっ、私は・・・」
「ねぇ、グレイス。僕のことをアル兄様としてでなく、アレクシスとして見てくれないかな?」
婚約者になることは、咄嗟に出た言葉だった。
でも言った後、僕が彼女を従妹のセレスティーナではなく、グレイスと見ていることに気付いた。
彼女を他の誰にも渡したくない。
ずっとこのまま、僕のそばにいて欲しい。
なら、婚約してこの腕の中に閉じ込めてしまおう。
アルバム皇国の皇女のセレスティーナに、皇国内の公爵家や侯爵家はもちろん、他国の王族や高位貴族からも申し込みが多数来ていた。
愛らしく聡明なセレスティーナを手に入れたい貴族は多い。
理解していたつもりだが、目の前の釣書の山を見ているとイライラしてしまう。
セレスティーナの中に、グレイス・シュラットの精神があることは、僕しか知らない。
グレイス・シュラット。
かつてマーベラス王国で魔女と呼ばれた侯爵令嬢。その妹ディアナ嬢の話で、聖女であったことがわかった。
そのグレイスが死んだ日がセレスティーナの誕生日だった。
その日までのセレスティーナは、僕にべったり甘えてて、5歳の普通の甘やかされた皇女だった。
だけど、グレイスの精神が表に出てきてからは、セレスティーナは聡明な皇女として周囲に見られるようになった。
見た目の愛らしい、しかも聡明な皇女。釣書の量は当然といえば当然だ。
セレスティーナが戸惑った表情で手にしている釣書を取り上げる。
「アル兄様?」
「そんなに気が進まないなら僕の婚約者になればいいよ」
何も考えずに出た言葉だった。
だが、キョトンとした顔のセレスティーナとは対照的に、叔父上と叔母上は大喜びで、即座に僕とセレスティーナの婚約が結ばれることとなった。
それもそうだ。
普通は婚約はお互いの家での話し合いや婚約の条件など交わされるが、僕の親代わりがセレの親である叔父上と叔母上なので、話し合う必要性がない。
「アル兄様はお嫌ではないのですか?」
「どうして嫌だと思うの?セレと婚約できるなんて嬉しいよ」
僕がそう言うと、セレが胡散臭げに僕を見る。
セレスティーナの頃は僕の言うこと全てを受け入れていたセレも、グレイスになってからは時々こういう表情をする。
「アル兄様からしたら、私は子供だと思うんですけど。恋愛対象にはならないんじゃないですか?」
叔父上と叔母上が、国内外に僕らの婚約を発表するために、準備に退出したあと、セレスティーナは不満そうにそう言ってきた。
「確かに、セレと僕は10歳離れているけど、グレイスの精神とならそう離れてないだろう?僕はセレのことを可愛いと思っているし、グレイスのことを愛しいと思っているよ」
「愛し・・い、えっ、えっ、私は・・・」
「ねぇ、グレイス。僕のことをアル兄様としてでなく、アレクシスとして見てくれないかな?」
婚約者になることは、咄嗟に出た言葉だった。
でも言った後、僕が彼女を従妹のセレスティーナではなく、グレイスと見ていることに気付いた。
彼女を他の誰にも渡したくない。
ずっとこのまま、僕のそばにいて欲しい。
なら、婚約してこの腕の中に閉じ込めてしまおう。
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