「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

キラッキラの

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「おはようございます、アニエス嬢。クランも一緒でしたか」

 馬車を降りようとした私を、エスコートするために出迎えてくれたのは、キラッキラした美少年だった。

 キラキラと朝日を弾く金髪に、夏の青空のような瞳。
 王子様を絵に描いたような、キラキラとした容姿の彼は、間違いなく3年後にヒロインと出会って恋に落ち、アニエスを断罪する婚約者様だ。

「おはようございます、マリウス王太子殿下」

「おはようございます、マリウス殿下。今日は本を貸して下さるお約束ですよね?ですから姉上・・・姉と一緒にお伺いしました」

「ああ、そうでしたね」

 クランと話しているマリウスの様子をチラ見する。

 うん。ないわ。
確かにすっごい美少年だし、未来はそのまま美形になることはわかってるけど、さすがに10歳はないわ。良かった。
 この子、可愛いな。将来楽しみだな、程度だわ。

 マリウス・ハイドランジア王太子殿下。
現在、アニエスと同じ10歳。
 ハイドランジア王家には、マリウスの下に妹姫がいるけど、男兄弟はいないから、10歳だけど、すでに立太子していた。

 あー。妹がいたっけ。
確か、3歳年下で、めちゃめちゃブラコンで、マリウスがアニエスに冷たくなったのと比例して、アニエスに嫌味とかすごく言ってたわ。

 アニエス、それにも傷ついてたのよね。
妹だから、いずれは嫁に行くんだろうけど、それでも自分の好きな人の妹に嫌われるの、悲しかったみたい。

 まぁ、29歳のお姉さんからしたら、7歳のお子ちゃまの嫌味なんて、堪えませんけどね。

 ブラコン妹の嫌味は、ヒロインにいずれお任せするとしても、まだしばらくは私が婚約者のままだ。

 うーん。どうしようかな。毎日、王太子妃教育に来るたびに嫌味言われるのも、微妙にストレスかも。

 婚約者様はアニエスに冷たくないから、それほど酷い嫌味は言われないと思うけど。

「それでは、マリウス殿下、クラン。わたくしは授業がありますので、ここで失礼いたしますわ。クラン、帰りは気をつけてお帰りなさい」

「え、あ、アニエス嬢、僕が部屋までエスコートを・・・」

「大丈夫ですわ。部屋に迷うほど子供ではありません。それよりも、クランをよろしくお願いします」

 私はカーテシーをすると、さっさと2人に背中を向けた。

「あ、アニエス嬢。お昼をご一緒してもいいだろうか?」

「申し訳ございません、殿下。今日は少々調べたいことがございますの。ぜひ、次の機会に」

「・・・残念だけど、用があるのなら仕方ない。では、明日にでも、是非」

「かしこまりましたわ」

 頷きはしたが、私は明日はどんな理由で断ろうかと考えていた。

 しかし、婚約者様は学園に入るまでは、それなりにアニエスと交流してたのね。
 これは、アニエスが婚約者様に婚約破棄を告げられて、絶望するのも無理ないわ。


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