「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

攻略対象教皇子息

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「面白い話をしてるね。僕も混ぜてくれない?」

 そう言って現れたのは、攻略対象の1人であるレイノルド・ノックス侯爵令息。教皇子息だ。

 あれ?レイノルドって登場はもっと後だったはずなのに。
 ここは、マリウス殿下の出会いのシーンで、他の攻略対象の出会いイベントは別にあって・・・

 はっ!
もしかして、私が乱入したせいで、何かストーリーからズレた?
 ま、マズい。この出会いは大切なのに!
マリウス殿下が救わなきゃ意味なかったんだ!

「れ、レイノルド様・・・」

「あれ?僕、君に名前呼んでもいいなんて言った?たった今、リリウム嬢に注意されたんじゃないの?その頭、お飾りなの?考えられないの?」

「・・・」

「ねぇ、何か言ってよ。そういえば、さっき不穏な言葉が聞こえたけど、聞き間違い?父上の認めた聖女の力を、君如きが認めないみたいに聞こえたけど?答えてくれない?その口もお飾りなの?黙ってたって分かんないじゃない。答えてくれる?」

 レイノルドの言葉に、私の正面に立つご令嬢たちはブルブルと震えている。
 彼女たちは、俯いてしまってるから見えないのだろうけど、レイノルドと向き合う形の私にはその表情がよく見える。

 アレは人をいたぶって喜んでる顔だ。
そういえば、レイノルドってSだった。
 あくまでも言葉責めだけど、13歳とは思えない言葉で、容赦なく相手を責めるタイプだったわ。

 唯一、優しくする相手がヒロイン。
そのヒロインにも最初はキツかったんだけど、ヒロインはニコニコとして、気にしてなかった。
 その後、いじめられてるのを見て、自分が守らなきゃって気持ちになるのよね。

 そういえば、アニエスのことも酷く罵ってたなぁ。
 マリウス殿下やクランほどじゃないけど、人に向けられる悪意に、アニエス傷ついてたのよね。

「ねぇ、聞いてるの?」

 レイノルドの声でハッとする。
すっかりラノベの世界に意識を飛ばしてたわ。

 彼女たちは、侯爵家子息であるレイノルドよりも身分が下。
 ここで、レイノルドを止められるのは、私しかいないんだった。

「ノックス様。そのあたりでおやめになってくださいませ。そろそろ、式が始まりますわ」

「あれ?リリウム嬢は、その子たちの肩を持つの?」

「どうしてそんなお考えになるのか、不思議ですわね。わたくしは、事実をお伝えしただけですのに。彼女たちへの罰は、先生方にお任せいたしますわ。手をあげたようですから、キチンと反省していただかないといけませんもの。それから、殿方がご令嬢をそんなに責めるのは感心しませんわ。常に紳士であっていただきたいものでしてよ?」

 記憶の中の、責められて悲しい気持ちになったアニエスの、ほんの少しの仕返しに、そう言い返すと、レイノルドが目を見開いた。







 
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