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覚悟
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ライアンがアナにプロポーズをした後、ランスロットはリリアナと向き合う覚悟を決めた。
王配になることに躊躇いを持っていたランスロットに、リリアナは自分の想いを伝えてはこなかった。
それは伝えてしまえば、もしもライアンが立太子しなければランスロットは王配にならなければならなくなるからである。
リリアナの気持ちは伝わっていたが、ランスロットにそれを言葉にせずいてくれること。
ランスロットは自分が、そのことに甘えていることに気付いていた。
「カイル。お前はどうするんだ?」
自分のそばで、必要な本や過去の書類束などを揃えていたカイルは、ランスロットの問いに首を傾げた。
「どう、とは?」
「僕は、リリアナ嬢に婚約の申し込みをする覚悟を決めた。ずっと自分の気持ちを押し殺して、待っていてくれた彼女に、ちゃんと自分の気持ちを伝えて申し込む。カイル、お前はルーナとのことをどうするんだ?」
「ルブラン公爵家に籍は置いていただいていますが、俺は平民です。フィオレンサ公爵家の至宝である月の妖精姫とは釣り合いません」
バンッ!
ランスロットは両手で、目の前の机を力いっぱい叩いた。
卒業後に向けて始めた、公爵としての仕事のための勉強。
そのための資料が床に散らばった。
「ルーナがそんなことを気にしないことくらい、本当はわかっているだろう!僕がお前の気持ちに気づいていないとでも思っているのか?僕もお前も相手が黙って我慢してくれているからと甘え過ぎだ!」
「・・・」
「カイル。僕の補佐のことを気にする必要はない。リリアナ嬢も、ライアン殿下もオフリー嬢もいる。もう僕は卑屈にならず、彼らに助言を求めれる。爵位を継ぐまでは、叔父上たちもそばに居てくれるだろう。だからいいんだ」
ランスロットは、ルーナがこのアデライン王国から出て行きたいのではないか、とずっと考えていた。
ルーナにこだわる王妃殿下。
国王陛下や叔母上であるマーガレットが諌めたとしても、納得し切らないのではないか。
そして、ライアン殿下の婚約者となったオフリー嬢と比べるのではないか。
オフリー嬢を大切な友人だと思っているルーナが、オフリー嬢の枷となることを良しとするわけがない。
二人が婚約したなら、学園の卒業を待たずに国を出ようとするかもしれない。
ランスロットは、自分のためにカイルを置いてひとりで出て行きそうなルーナのために、カイルにも覚悟を決めて欲しかった。
「このままだと、ルーナはひとりで出て行ってしまう。もしかしたらそれは、一ヶ月後かも、一週間後かも、明日かもしれない。いいのか、カイル?」
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バンッ!
ランスロットは両手で、目の前の机を力いっぱい叩いた。
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「ルーナがそんなことを気にしないことくらい、本当はわかっているだろう!僕がお前の気持ちに気づいていないとでも思っているのか?僕もお前も相手が黙って我慢してくれているからと甘え過ぎだ!」
「・・・」
「カイル。僕の補佐のことを気にする必要はない。リリアナ嬢も、ライアン殿下もオフリー嬢もいる。もう僕は卑屈にならず、彼らに助言を求めれる。爵位を継ぐまでは、叔父上たちもそばに居てくれるだろう。だからいいんだ」
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