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番外編:最後まで足掻いて〜エリック視点〜
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それから堕ちるのは、あっという間だった。
牢に入れられた数日後に、貴族牢の部屋の前にローゼンタールの王太子とアリスティアが現れた。
騎士たちが牢内にはいり、僕とユリアを拘束した時点で話が始まる。
「二人の王籍と貴族籍の剥奪が決まった。二人には奴隷としてシュワルミット王国へ渡ってもらう」
は?何を言ってるんだ?王籍の剥奪?
僕はセオドア王国の唯一の王子だぞ?
ユリアはユリアで、アリスティアに謝罪をしたら許してくれるんじゃないのかと喚いている。
謝罪を受け入れるのと、許されるのが同一だと思っているのか?
嘘だろう?確かにユリアは男爵令嬢だけど、貴族令嬢として何も学んでないのか?
しばらく押し問答をしていると、イングリス公爵夫人がやって来た。
「母上と父上が亡くなった?」
その時頭に浮かんだのは、両親が亡くなったことで、僕が唯一の王族になった、ということだった。
今思えば、何故両親の死を悼めなかったのだろう。
あんなに好き勝手させてくれていたのに。
アリスティアが・・・イングリス公爵令嬢が僕を受け入れるなどと、何故思えたのだろう。
王族として、何の責任も負わずに、自分の欲にだけ向き合っていた僕が、どうして国王の椅子に座れると思ったんだろう。
母上が彼女にしていたのは、僕を国王の椅子に座らせるための『教育』だったのだと、公爵夫人から聞かされた。
アリスティアがいない時点で、僕は自力で椅子にしがみつくことも出来ない。
どうやっても、父上も母上も僕より先に亡くなってしまう。
そうすれば、僕は簡単に欲に塗れた人間の傀儡にされるのがオチだと言われた。
ただ静かに事実だけを述べられて、最後に公爵夫人は言った。
「王族とか貴族とか、それ以前に、ひとりの男として、ちゃんと色んなことに向き合いなさい。そうして、そこまでして貴方の命を救いたいと思った父親の気持ちに報いなさい」
父上が母上を殺めたのは、母上がローゼンタール王国へ向かおうとしていたからだった。
アリスティアを無理矢理にでも連れ戻すために。連れ戻せないなら、殺めるために。
ローゼンタール王国の王太子の婚約者に手を出せば、連座として僕も父上も処刑される。
父上は、たとえ奴隷としてでも僕が生き残る道を選択したんだ。
僕がそれを心から理解できたのは、シュワルミット王国に連行され、仕事を拒否し、食事を与えられなくなって三日経ってからだ。
空腹に負け、荷物運びを朝から晩まで繰り返す。
そしてようやく食べれた雑穀粥と僅かなおかずの美味しさに、涙が出た。
牢に入れられた数日後に、貴族牢の部屋の前にローゼンタールの王太子とアリスティアが現れた。
騎士たちが牢内にはいり、僕とユリアを拘束した時点で話が始まる。
「二人の王籍と貴族籍の剥奪が決まった。二人には奴隷としてシュワルミット王国へ渡ってもらう」
は?何を言ってるんだ?王籍の剥奪?
僕はセオドア王国の唯一の王子だぞ?
ユリアはユリアで、アリスティアに謝罪をしたら許してくれるんじゃないのかと喚いている。
謝罪を受け入れるのと、許されるのが同一だと思っているのか?
嘘だろう?確かにユリアは男爵令嬢だけど、貴族令嬢として何も学んでないのか?
しばらく押し問答をしていると、イングリス公爵夫人がやって来た。
「母上と父上が亡くなった?」
その時頭に浮かんだのは、両親が亡くなったことで、僕が唯一の王族になった、ということだった。
今思えば、何故両親の死を悼めなかったのだろう。
あんなに好き勝手させてくれていたのに。
アリスティアが・・・イングリス公爵令嬢が僕を受け入れるなどと、何故思えたのだろう。
王族として、何の責任も負わずに、自分の欲にだけ向き合っていた僕が、どうして国王の椅子に座れると思ったんだろう。
母上が彼女にしていたのは、僕を国王の椅子に座らせるための『教育』だったのだと、公爵夫人から聞かされた。
アリスティアがいない時点で、僕は自力で椅子にしがみつくことも出来ない。
どうやっても、父上も母上も僕より先に亡くなってしまう。
そうすれば、僕は簡単に欲に塗れた人間の傀儡にされるのがオチだと言われた。
ただ静かに事実だけを述べられて、最後に公爵夫人は言った。
「王族とか貴族とか、それ以前に、ひとりの男として、ちゃんと色んなことに向き合いなさい。そうして、そこまでして貴方の命を救いたいと思った父親の気持ちに報いなさい」
父上が母上を殺めたのは、母上がローゼンタール王国へ向かおうとしていたからだった。
アリスティアを無理矢理にでも連れ戻すために。連れ戻せないなら、殺めるために。
ローゼンタール王国の王太子の婚約者に手を出せば、連座として僕も父上も処刑される。
父上は、たとえ奴隷としてでも僕が生き残る道を選択したんだ。
僕がそれを心から理解できたのは、シュワルミット王国に連行され、仕事を拒否し、食事を与えられなくなって三日経ってからだ。
空腹に負け、荷物運びを朝から晩まで繰り返す。
そしてようやく食べれた雑穀粥と僅かなおかずの美味しさに、涙が出た。
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