決めたのはあなたでしょう?

みおな

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婚約解消の先へ

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「アリス。サイードくんの有責なら、解消ではなくこちらから破棄することもできる。元々は、スペンサー侯爵家からの婚約申し入れだ。それをこのような形で裏切ったわけなのだから」

 お父様の言葉に、私は首を横に振りました。

 サイード様は、決して私を無下に扱ったわけではありません。
 婚約者として最低限ではありますが、交流はしてくださっていました。

 今回のことも、私との婚約を続けながら、恋人を愛することは出来たでしょう。

 私のためではなかったでしょうが、それでもサイード様が誠実であろうとした結果だと思います。

 私は。

 サイード様に、不幸になってもらいたいわけではありません。

「いいえ、お父様。できることなら解消でお願いします」

「そうか。アリスがそう望むのなら、そうしよう。侯爵家との話は私が行うから、アリスは共にいなくても構わない。アリスはスペンサー侯爵家への責は問いたくないんだね?」

「はい。援助をされていたお父様には申し訳ありませんが、援助を打ち切ることでスペンサー侯爵領は苦しい状況になると思われます。そこに、追い打ちをかけるようなことをしたくないのです。サイード様と私は縁がありませんでしたが、領民に罪はありません。それに、侯爵家の方々には良くしていただきましたから」

 私のことを、偽善だという方もいるかもしれません。

 このようなことをして、それを許すなど、貴族令嬢として相応しくないと言う方もいるかもしれません。

 でも、仕方ありません。
偽善で構いません。相応しくなくても構いません。

 私は、サイード様との時間を嫌なものにしたくないのです。

 確かに私は、サイード様に想いを寄せていました。

 あの時までは、本当に幸せだったのです。
 だから、その気持ちを・・・

 いいえ。違います。
私は、きっと嫌われたくないのです。

 サイード様に、好かれなくても嫌われたくはない・・・

「ごめんなさい、お父様」

「何も謝ることなどない」

「でも・・・私は、嫌われたくないというだけで・・・」

 それだけのことで、お父様に損害を与えてしまいます。
 それに、こんな判断は、貴族令嬢として正しくはないのです。

「人に嫌われたい人間などいない。アリスは間違ってはいない。それに、領民には罪はないのも事実だ。援助した分は、また違う形でアリスに助けてもらうさ」

「ふふっ・・・私にできることなら、何でもお手伝いしますわ。ありがとう、お父様」

 お父様の胸に寄り添います。
自分への情けなさで溢れた涙が、お父様のシャツを濡らしてしまいましたが、お父様は優しく私の髪を撫でて下さいました。

 泣くのはこれでおしまいです。
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